【前編】「ラジオはテレビへのカウンター。他では聞けない番組にするための工夫」荻上チキ(評論家)

失敗ヒーロー!

2019/02/19
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。今回はTBSラジオ『荻上チキ・Session-22』でメインパーソナリティを務める評論家の荻上チキさんが登場。本番前の時間にTBSラジオにお邪魔して、気鋭の評論家の仕事論、マネジメント論について伺っていきます。

情報源に辿り着くために、生の情報をインプットする

――本日は本番前のお忙しい時間にありがとうございます。荻上さんは週に5日間ラジオに出演されていらっしゃいます。そんなお忙しい生活の中で、常に新しい情報をインプットし続けていくのは大変かと思いますが、荻上さんはどのように情報を整理していらっしゃるのでしょうか?

荻上チキ(おぎうえ・ちき)
1981年、兵庫県生まれ。評論家。ニュースサイト『シノドス』元編集長。著書に『日本の大問題 残酷な日本の未来を変える22の方法』(ダイヤモンド社)、『彼女たちの売春(ワリキリ)』(新潮文庫)ほか多数。ラジオ番組『荻上チキ・Session-22』(TBSラジオ)メインパーソナリティを2013年より務め、2015・2016年度のギャラクシー賞を受賞。

荻上チキ(以下、荻上):ラジオの番組内では本の著者の方にインタビューすることもあれば、ニュースを取り上げて、渦中の出来事に触れたり、世間では知られていない新たな概念を提起するなど、さまざまな事柄を取り扱っています。原則として、どんな時でも川上(かわかみ)の情報に辿り着くということを重視しています。研究論文や統計、当事者会の発表などがあれば、直接情報源に当たることができますし、国会での失言問題などでは、前後の文脈も含めてできるだけ生の情報に目を通します。一方、メディアに関しては6紙の新聞とその他にTwitterやWebなどをランダムに見つつ、時々雑誌を見るという感じでしょうか。あとはBBCのラジオを聴いたりもしています。

――現在、荻上さんはさまざまな著書の執筆やラジオ・パーソナリティとしてご活躍されていますが、「評論家」として活動を始められたきっかけを教えてください。

荻上:今では個人のニュースサイトはほとんどなくなりましたが、昔はブログにニュースをまとめることが流行った時代がありました。僕もmixiがギリギリ世に出たぐらいの2003年に、個人ブロガーとして人文社会科学系のニュースをWeb上にまとめていました。ネットに広がるデマに関心があって、しばしばそれらについて書いていたところ、そのブログを見た出版社の方に「1冊の本にしませんか?」と声を掛けていただいたことが、評論家としてのスタートになるかと思います。

その後も「別のテーマで本を作りたいので、手伝ってくれません?」というお誘いをいただき、本を編集し原稿を書くということをひと通り経験させてもらいました。1冊目を出版した時はまだ会社員でしたね。

――その後、独立されたんですよね。その決意はいつごろされたのですか?

荻上:2007年の12月です。1冊目を出版した後、2つの版元から「本を出しませんか?」と新たに声をかけられた際、他の原稿のお仕事もいただいていました。大変勉強になる職場ではあったんですが、次の本を書き上げるためには、平日に取材をしなければならない。平日動けないとなると、書けるものに制約が出てしまうというジレンマがあり、会社を辞めることにしました。モノ書きとして一定の収入を得ることが難しければ、IT広告業界に戻ろうかなとも思っていました。独立することへの不安はありませんでしたね。

テレビで言えないことをラジオが言う。コアなファンが集まってくる

――2008年1月には『シノドス』でオピニオンサイトを作り、2013年からはラジオ・パーソナリティとしてご活躍されています。荻上さん自身、ラジオとはどんな媒体だと考えていらっしゃいますか?

荻上:雑誌と似たような感覚です。雑誌とラジオは同じ箱、テレビと新聞は同じ箱と捉えています。テレビと新聞に対するカウンターとして雑誌とラジオが機能していて、新聞では書けないことを雑誌が、テレビでは言えないことをラジオが担っていると考えています。ラジオはコアな人たちにファンになってもらいやすいので、より深くコミュニケーションができる、話す事柄の範囲を設計しやすいメディアであると思います。

――長年、ラジオを続けていらっしゃる荻上さんですが、チームとして、スタッフさんとの関わり方で気をつけていることはありますか?

荻上:曜日ごとにディレクターが異なるので、LINEなどで常に情報共有するようにしています。「人材バンク」や「テーマバンク」などのフォルダを作って、お互いがどんどん情報を入れていく形をとっています。

また、プロデューサーと僕とではそれぞれ得意分野が違いますが、一定の社会観や「土地勘」を共有しているので「あの人は出せないよね」だとか、「この問題は簡単に敵味方が分かれてしまうから整理しておこう」というように、以心伝心し合える関係です。異なる2つのエンジンがシャカリキに動ける形になるように心がけています。全員で10人くらいからなるチームですが、クラウドのように頭脳がシェアされてゆるやかに意思決定しているんです。

――ゲストの方を迎える際に心がけていることはありますか?

荻上:人は電球色や明度を下げるとリラックスしていきますよね。テレビは画面映えの関係もあり、バッチリ白い照明なので、緊張感を保ちながら話す時に向いています。ですが、ラジオのスタジオは白とオレンジがミックスされた照明になっていて、真面目な話もできるけれど、リラックスした環境もつくれるようになっています。リラックスしながらトークを展開できる環境がやっぱり大事ですね。

とはいえ、ゲストの方を迎えるにあたっては、実は打ち合わせもせず一発勝負なんです(笑)。例えるなら、バーで隣の人と何となく打ち解けて「お仕事は何をされているんですか?」と話すくらいの感覚で臨んでくださいといつもお願いしています。

ただそれは、カルチャー系の分野の方がいらっしゃった時の崩し方であって、ニュース分野に強い方には、緊張度を低くするわけにはいかないので、そういった挨拶はせずにはじめています。談笑してしまった後だと、「あの問題は許せないですよね」という緊張感のある空気に持っていくのは難しいので。

――コミュニケーションをとる時のある種のマネジメント術ですね。

荻上:そうですね。進行表がなければトークが成立しないという場合もありますが、「台本通りにはやらない」「台本はあくまでヒントだ」という認識が8割くらい頭のなかにあるんですよね。

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