2016/08/24 公開

話題のアニメ、「NEW GAME!」は社畜アニメじゃない。むしろ、視聴者に労働を改めて考えさせる作品だった

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ブラック企業という言葉は、すっかり一般的になりました。『知恵蔵2015』によると、ブラック企業の定義とは「労働者を酷使・選別し、使い捨てにする企業」とされています。納期厳守のために過酷な長時間労働を強いられる社員たちは、ときに過労死に至ることさえもあります。

今回取り上げる「NEW GAME!」は、そんなブラックな労働環境が発生しやすい職種の一つ・ゲーム制作会社を舞台にしたアニメです。高校を卒業し、あるゲーム会社へ入社した主人公の”涼風青葉”が成長していく姿を描いた原作漫画はSNSで話題となり大ヒット。一時は単行本が入手困難になるほどの人気を獲得し、アニメ化に至りました。

そして2016年7月より放送が開始されたアニメをきっかけに、さらに多くの人から注目されるようになったのです。その理由の一つは、作中で「ブラック企業」をイメージさせる詳細な描写が見られたことにあります。そのリアルな描写には、国内の視聴者はもちろん、海外の視聴者からも「日本人の労働環境は大丈夫なのか?」という声が上がりました。

今回は、そんな話題のアニメ「NEW GAME!」で描かれる労働環境について、視聴者の感想に注目しながら迫ります。

入社初日から21時に退社。第1話のラストシーンに驚く国内の視聴者。

newgame2

「NEW GAME!」第1話は、青葉が思い入れのあるゲームを制作した会社、「イーグルジャンプ」へと入社するところから幕を開けます。

自分のデスクへ案内された青葉が出会ったのは、会社に泊まることが日常茶飯事という上司“八神コウ”。彼女の机の上に並んだエナジードリンクの空き缶からは、日々の業務の苛酷さがうかがえます。

NEW GAME! 1話視聴完了。机の上の栄養ドリンクとか小物の配置がリアルでちょっと笑いましたw
引用:Twitter

指示された業務に取り組むうち、チームに打ち解けることができた青葉。先輩たちとお茶をしていた休憩時間、「うわさでは、そろそろ忙しい時期が来るんだって」「家に帰れなくなるよ」という言葉に青葉は唖然とします。さらに八神が「あの人は、会社に住んでるって言った方が正しいんじゃないかな」とネタにされたことに驚きます。

newgame、忙しい時期がくると帰れなくなるよとかこわい……こわい……
引用:Twitter

勤務初日から会社に住んでるという先輩を聞かされた青葉の感想を答えよ

引用:Twitter

最も物議を醸したのは、クライマックスのシーン。21時を表示したデジタル時計がアップになった後、青葉はチームのメンバーとともに退社します。

NEWGAME一話で一番印象に残ってるのが入社初日から21時退社とかいう最高のジョーク
引用:Twitter

入社初日であるにも関わらず、21時に退社している青葉の今後を案じる反応がTwitter上で見られました。さらに先輩の「これから“デスマーチ”が発生する」ことを匂わせる発言、会社で寝泊まりしている上司の存在について、実際にゲーム業界で働く視聴者から「あるあるネタばっかりだった」という声も寄せられていたようです。

New Game!1話見終わったんだけど、どうしよう、「お前もこれから社会の闇を知って苦しんでいくんだぞ覚悟しておけよ」って感想が初めに出てきて心の闇を見た
引用:Twitter

ゲーム会社で働いて5年ちょいだけど、NEW GAME!の出来事結構あるあるや!
引用:Twitter

一部では入社初日から21時に退社するのが「普通」とする日本人。海外サイトからは、「日本の状況は、信じられない」という驚きの声が上がっていました。

外国人から見た「NEW GAME!」と日本の労働環境

海外のアニメファンも、第一話を視聴していろいろと思うところがあったようです。海外サイトには、青葉の働き方に衝撃を受ける人も見られました。

夜の9時まで働いているなんて、さすが日本だな。俺は日本で生きていける気がしないよ。

日本の一般的な労働時間は朝9時から18時。21時まで会社に残る人も普通にいるけど、会社によっては残業代も貰えない。日本人の自殺率が高いのは働きづめだから。

父親が色々な国と関わるプロジェクトに参加してたけど、日本人の働き方は効率的じゃないって言ってたな。他の国の参加者と比べて1,5倍くらいの時間がかかるんだって。ということは、12時間働いても8時間分くらいにしかならないらしいぞ。

ヨーロッパじゃ週5日、8時間労働が普通。この状況でも結構働いてる方。仕事に殺されちゃかなわないよ。

「過労死」が「karoushi」として英単語になるほど、日本の労働時間の長さは問題となっています。そんな状況にありながら、「労働時間ばかり長くて効率が悪い」と指摘されている日本。働くときはしっかり働き、休む時はしっかり休む諸外国としては、「NEW GAME!」に見られる日本の労働環境は信じられないものなのでしょう。

「NEW GAME!」を”社畜アニメ”と馬鹿にするのは、自称”社畜”の人たちだった。

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「NEW GAME!」原作コミック1巻のあとがきで、作者の得能正太郎氏はゲーム会社で3年ほど勤務していた経験をもとに描いたことを述べています。苛酷な労働環境についてリアリティのある作品ではあるものの、「ほのぼの社畜漫画」という表現から悲壮感はさほど感じられません。

NEWGAMEの社畜、なんで悲壮感がないんだろう…?
引用:Twitter

この作品が支持を集める理由の1つは、登場人物たちから強い悲壮感が漂わない点にあると考えられています。彼女たちは「本当に自分の好きな仕事、やりたい仕事」をしているだけであり、一部の視聴者が「社畜アニメ」と揶揄するのは労働環境だけを見ているからにほかなりません。

主人公・青葉が初めて任された仕事は、ゲームに登場する村人のグラフィックを制作することでした。3Dのソフトを使った経験がない青葉は、キャラクター1人を制作するのにも四苦八苦し、入社直後から終電間際の遅い時間まで残業をすることとなります。そこで八神がグラフィックを何度も修正させるのは、自分への期待からだと知った青葉は、より一層仕事に打ち込むようになります。

そして八神が自分と同じ年齢でキャラクターデザインを務めたことを知った青葉は、「悔しいというか、妬ましい気持ちが少しあって……」とこぼします。その青葉に対し、八神は「私もきっと同じことを思うよ。だって、この仕事が好きなんだもん」と返します。

2人以外のキャラクターも「モノを作ってお金をもらう」ことにプライドを持ち、妥協することなく業務に取り組んでいます。作中でもお互いに不幸自慢をしないどころか、「社畜」や「ブラック企業」といった言葉さえ使っていません。

実際にブラック企業で働く人は、「寝ていない」、「こんなに遅い時間まで働かされた」と自虐的に言うケースが多く見られます。いざ入社してみたら自分の理想と違っていたことを会社のせいにし、そんな企業で働く自分は報われるべきだと主張する……そんな人がこの作品を見て、「もっとひどい環境で働く自分はなんてかわいそうなんだろう。」と悲劇のヒーロ−、ヒロインのように振る舞うのです。

何がつらいって、NEWGAME!に擬えてツイの社畜たちが各々の劣悪な労働環境を暴露するところなんだよな
引用:Twitter

「自分の方がもっと長い時間働いている」、「泊まることなんて普通」と鼻で笑っている人たちは、無意識のうちに好きな仕事をしている登場人物たちに嫉妬しているとも考えられます。

「NEW GAME!」は、働くことの意味を問いかけるアニメ。

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登場人物たちが「働くこと」に対して前向きだからこそ、多くの支持を得られた「NEW GAME!」。「はたらくって青春だ。」というキャッチコピーが語るように、この作品は仕事を辛く苦しいこととしてではなく、むしろ「青春」として描いています。

NEWGAME視聴完了。
青葉ちゃんの前向きさを分けてもらえて、また明日から頑張ろうと思ったり。
引用:Twitter

精神的にボロボロだった時、「周りの人間はちゃんとやってるのに、自分ばかりこんなことでおかしくなってるから自分はダメなのだ」と思って頑張ろうとしてたけど、あれでますますドツボにはまってった気がするので焦らないのが一番だと、そんなことをNEW GAME第一話を視終えて思いました。
引用:Twitter

たかがアニメと侮るなかれ。「NEW GAME!」は、観た人に改めて働くことの意味や目的を見つめ直すほどの力を持った作品なのです。

冒頭で“ブラック企業”について触れましたが、「NEW GAME!」のキャラクターたちは、仕事が決して楽しいことだけではない、思い通りにいくことばかりではないと知りつつも、希望を失っていないように見えます。そこには、やりがいや目標が明確に存在しているからに他なりません。

現在、過酷な労働環境に置かれ、苦しんでいる方はきっと多いでしょう。自分の置かれている環境に疑問をもったときは、「NEW GAME!」を見てみることをお勧めします。今すぐその環境から離れるべきか、もう少し頑張ってみるべきか、答えのヒントが見えてくるかもしれません。

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