2017/03/02 公開

【前編】「“みうらじゅん”という誤解」・みうらじゅん

失敗ヒーロー! 第二回(前編)

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実は“マイブーム”っていう言葉は、僕の肩書きで考えたものだったんですよ。「自分のブームを広める」っていう職業名。広辞苑にまで載っちゃっているけど、そもそも公の言葉じゃなくてね、大いなる誤解ですよ

趣味とは、相手を引き留める「ネタ」である

――怪獣や仏像、エロに始まり、非常に多彩なご趣味をお持ちですよね。もはや“ゆるキャラ”においては、ご当地アピールに欠かせない存在です。

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みうらじゅん
1958年生まれ、京都府出身。武蔵野美術大学在学中の1980年に漫画家デビュー。その後イラストレーター、作家、ミュージシャンなどさまざまな分野で活躍。“マイブーム”や“ゆるキャラ”といった流行語を生み出し、サブカル界の代表的存在に。現在、映画『ザ・スライドショーがやって来る!「レジェンド仲良し」の秘密』が絶賛公開中。著書に『「ない仕事」の作り方 』『されど人生エロエロ』『マイ仏教』など多数。

みうらじゅん(以下、みうら) 僕がやってることは「趣味」って言えるもんじゃないですね。だって世間一般に言われる「趣味」では、仕事にならないでしょ。「趣味」にあるピュアな感情を突き抜けた結果、「ネタ」と呼ぶようになっちゃいました。すごく不純に聞こえるけど、小さいころから「ネタ」って意識でやってきましたから。

一人っ子だったもんで、友だちが家に遊びに来ると帰ってほしくないと思うんですね。だから相手が食いつきそうな話題をわざと話したり、なんなら自分じゃなく、友だちが好きそうなものを親に買ってもらったりしてたくらいですから。

で、夏休みともなると、できたら泊まってほしいわけで。だから引き留めるための「接待」みたいに趣味を使ってました。ついには「昨日、夢にお前が出てきたんだよ」なんて言ってね。自分が出てきた夢って、誰でも気になりますよね。「俺、夢の中ではどんな役だった?」って。でも実は、相手を喜ばせたいためのウソだったんですけど(笑)。

「僕は“盛り土”で行こう」

――でもそれって仕事に置き換えてみると、人を惹きつけるための企画立案として、もっとも根本的というか、あるべきスタンスですよね。 

みうら 若いころって誰でも自分には正直でしょ。つい自分のことばかり話しちゃったりして。僕にもそういう部分はあったけど、興味を持ってもらうには話を盛らないと、と思っていました。今の言葉で言うと「僕は“盛り土”で行こう」って。最近、やたらと話題になっていますけど、やっぱり盛らないと土もね、叱られますよ(笑)。

――なるほど(笑)。“盛り土”も、みうらさん流の話術なんですね。 

みうら だから昔の話は、もはや本当に自分が体験したことなのか、感じたことなのかすら分からなくなっているところもあって(笑)。だけど途中から「そんなこと、どうでもいいじゃないか」と思うんです。自分にとっての事実なんてね。

――それに気づくには、何かきっかけとなる出来事があったのでしょうか? 

みうら 出来事じゃなく、“積み重ね”ですよね。失敗の積み重ね。僕は昔から、周りから「寒いな」って思われることが本当に怖いんですよ。シーンとした状態が何より苦手だから、間髪入れずにしゃべる。だけどさっきも言ったように、自分が好きなものを熱く語っているようじゃ、ウザイだけだから。その点、他人の失敗にはものすごく食いつくでしょ、人って。

損も失敗談も、「他人には面白おかしい蜜の味」

――「人の不幸は蜜の味」的な? 

みうら 人の幸せ話って、本当はあまり聞きたくないでしょ? 基本、面白くないからですね。僕の場合、真っさらな状態で影響を受けられたのは、高校生くらいまでで終わってますから。あとは自分が「面白いな」「おかしいな」って思ったものを、いかに盛って聞いてもらうかだけです。

“ゴムヘビ”とか“いやげもの”とか、世間から「何の意味があるんだ?」って思われるようなものを収集するのも、そこは単なる糸口でね。「あんなものに金を注ぎ込んじゃって、あの人バカじゃないかしら」って思われるでしょ? すると人って、俄然、安心して食いついてくるものでね。ただ、これは僕が一人で仕事をしているから言える話で、企業になると失敗も損もできないですもんね。企業は損をしないために徹底的なマーケティングをするけれど、僕は逆だから。そこで失敗したことは、また「ネタ」につながるしね。結局、 失敗って、自分にとっては面白くないものだけど、人にとっては面白いんだから仕方ありませんよね。

――「損や失敗がウケる」ということ自体が、みうらさんが導き出したマーケティングの結果ということですよね。 

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みうら マーケティングって考えたこともないですけどね(笑)。それに人が得するアイデアって、もうすでに諸先輩方がやっていて、出尽くしているでしょ。今では体よく“サブカル”なんて呼びますけど、昔、それは“透き間産業”でしたから。世間の溝を掘って、無理矢理に何かを掘り出して、さも流行っているように話す。そこで「流行ってねぇよ!」ってツッ込まれる芸風にしたんです。僕には、その道しかなかったもんで。

「普通であることを拒絶する」という努力

みうら ただ、この“損ブーム”を受け入れてもらうには「そんな損して、何をやっているんだ」と思われて傷ついているようじゃ、修行が足りません。そう思われたらますます嬉しくなるくらい、自分を洗脳しないとね。「好きに違いない」と思い込むことから始まって、「こんなに金を注ぎ込んだんだから、やっぱり好きだ」と思えるところまで来れば、しめたものです。自分がすっかり騙されているものだから、その良さを説くことができるし、その様子がかなりトンチンカンのようで、世間の皆さんが笑ってくださる(笑)。

――みうらさんの著書やイベントは、その集大成の数々なんですね。 

みうら トンチンカンは何かに落とし込まないと、単なる馬鹿話になってしまいますので、最終的にフィックスさせないといけません。ただ、やっぱりそこは企業と違って、売れる確証なしにやっていますから、出版社の方やイベンターの方からしたら、迷惑千万な話でね(笑)。そこを「あの人なら仕方ないか」と許容してもらうにも修行が必要で、そこまでに三十何年も費やしていますから(笑)。

そもそも僕の場合は、普通であることを努力して拒絶しなくちゃならないですから。親戚の法事にも出ちゃいけないと思うんですよ。いくら親に言われても、親戚からの評判が悪くても「出てはいけない」と。けれどあるとき、「もういいだろ」と思って出たんですよ。爺さんの何十回忌で、魔が差したわけでもなく、わざとでもなく、アロハに短パン姿で。叱られる! 55のときでした。

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