マキタスポーツ/芸人・ミュージシャン 「超自己表現時代」は、ホンモノしか生き残れない【後編】

失敗ヒーロー!

2019/06/13
Pocket

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。前編に引き続きミュージシャンであり芸人、文筆家、役者としても活躍中のマキタスポーツさんが登場。お笑いに目覚めたきっかけに遡り、お話を伺います。

問題児だった幼少期

――現在では、芸人としてだけでなく、役者や文筆家としてもご活躍されていらっしゃいます。幼少期から器用なお子さんでしたか?

マキタスポーツ
1970年1月25日、山梨県出身。大学卒業後、地元のハンバーガーチェーン店で勤務するが半年で退社。その後フリーター生活を経て、28歳の時、浅草キッドが主催するライブ「浅草お兄さん会」でデビューし、第5代チャンピオンに。音楽と笑いを融合させた“オトネタ”を提唱、作詞・作曲・モノマネを得意としレパートリーも多岐にわたる。俳優業では映画『苦役列車』でブルーリボン賞新人賞、東京スポーツ映画大賞新人賞を受賞するなど以後も活躍の場を広げている。著書に『越境芸人』『一億総ツッコミ時代』『すべてのJ-POPはパクリである』など。

マキタスポーツ:器用と思ったことはなく、いわゆる問題児でしたよ。言葉を覚えるのも遅かったし、大人の言っていることを理解できなかった。僕が調子に乗って、気づいたら誰かが泣いているような、度を超えたふざけ方をする子だった。だから、僕は自分が器用で成功してきたといった感覚はなくて、結婚してやっと社会性を身に着けていったくらいなんです。それまでは、インタビューでは載せられないようなことをして生きてきた(笑)。家族などの人間関係も、点検しなければ壊れてしまうことを知ったのも結婚してからですね。

――マキタスポーツさんが人を笑わせることに興味を持ったきっかけはありますか?

マキタスポーツ:小さな頃から下品なことばかりしていて、女子には嫌われていたと思うんですが、僕にはコミュニケーションの窓みたいなものが笑いしかなかったんです。小学1年生の時にふざけていたら、クラスのみんながわっと笑ったんですよ。ビリビリビリ!と、ものすごい快感でした。でもその後に、先生にめちゃくちゃ怒られて、みんなの雰囲気が冷ややかなものに一転した。怒られたこともしつこく覚えているけど、ウケた時の感覚はそれ以上に覚えている。それはある意味、才能かなと思っています。

――マキタスポーツさんの文章を読んでいると、ものごとを俯瞰して見られる方という印象がありますね。

マキタスポーツ:でも僕自体は、すごく視野が狭い人間で、決して俯瞰しているタイプじゃないんです。学校の勉強もできなかったし、僕と一緒に生活すると主観的な男だとわかると思う。ただ二重人格的なところはあるのかもしれません。どうしても人と世界と関わるときに、一枚フィルターがかかるような感じがあるんです。

――フィルターがかかっている感じとは、どのような感覚ですか?

マキタスポーツ:例えば、音楽の授業で、先生が音楽の素晴らしさやシューベルトのすごさをパワフルに語っている。でも僕はそれを見ながら、「先生の肩にすごいフケが溜まってるな」とか全然違うところに目が行くんです。これを俯瞰的・客観的目線と言えば聞こえはいいですが、大人からしたらふざけんなって話ですよ(笑)。

言葉を覚えるのも遅かったし、人の言うことが聞けない分、その人を観察しているところはあるかもしれないです。人間って口では嘘をついたりするけど、ガワだけ見てると嘘もわかるし本人が気づかれたくない部分も感じますよね。それがモノマネとか文章とかに生かせているとは思います。

消費されるおじさんとして、ニーズに応えていく

――そういった特殊な視点が、逆にコンプレックスになるようなことはありませんでしたか?

マキタスポーツ:ありますね。妻にも「私たちは20年の付き合いだけど、未だに仲良くなれている気がしない」とか、子どもにも「パパは人に心を開かない」とか言われます。そんなつもりじゃないんですけどね。僕としては、もっと賢くスマートに生きたかったですよ。でも、年取ってきて筋力も弱まってくると、自分の性格を変えようとか、そういうの面倒くさいんですよ。

――年齢を重ねて、考え方にも変化が起こるわけですね。

マキタスポーツ:はい。最近は、シンプルに好きなことを最後までやり切れる人生にしようと思っていて。まずスケジュールをシンプルにしたい。年取ってから仕事に恵まれ出したので、体力や気力を度外視してやってきたんです。でも僕は決して仕事がしたいわけじゃなくて、好きなことをやりたいだけなんです。

あとは、まさか自分が「おじさん」としてこんなに需要があると思っていなかった。役者としての僕は、「おじさん」という商品棚に置かれています。つまり、消費されるおじさんです。

――求められるニーズに合わせて、おじさんを演じている部分もあるのでしょうか?

マキタスポーツ:いや、おじさんらしくしなくても、僕は360度どこを切り取ってもまんべんなくおじさんですよ(笑)。でも、仕事が増えてからは、アイドルの苦悩のようなことは僕も感じます。「マキタスポーツさんはおじさんだし、苦労したってWikipediaに書いてあったからこういう感じの人でしょ」と、答えありきでインタビューされたりする。売れない苦労より、仕事が増えてからのほうが気苦労が多いです。世間からの需要など、いろいろ気にしなくちゃいけないことが増えたという意味で。

マネたまご マネたまをフォローすれば最新記事をお届けします!