マキタスポーツ/芸人・ミュージシャン 37歳アルバイト時代からの逆転【前編】

失敗ヒーロー!

2019/06/12
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どん底で立てた、年収6,000万円という目標

――仲間たちのビジネスマンぶりを見て、どのように感じましたか?

マキタスポーツ:遅ればせながら、まずはちゃんと事務所と仲良くしようと思いました(笑)。それまでは、マネージャーにつっけんどんで文句を言ったり、遅刻をしたり。担当マネージャーがどんどん辞めていって、僕は本当に不良債権化していました。ちょうど若いマネージャーに変わったタイミングで、今しかないと事務所に対する態度や行動を改めていきましたね。

その若手マネージャーは、「僕はマキタスポーツさんがやりたいことを実現できるよう動きます。ただ、赤字だけは出さない。いくら内容が良くても、赤字を出せば会社的に僕もマキタスポーツさんも失点になります。僕がいろいろ口を出すこともありますが、それは赤字を出さないためです」とはっきりと伝えてくれたんです。僕も「よしわかった」と答えました。マネージャー、事務所側としっかりと会話ができたのって、これが初めてだったと思いますね。

――やりたいことをやるだけではなくて、ビジネスマンとしての側面を身につけていく必要があったと。

マキタスポーツ:そうです。それまではやりたいことをやるのが最優先だったから、お金に執着するのが煩わしいと思っていたんです。でも、これからはお金のこともしっかり考える必要があるなと思って、自分が月いくら欲しいかも設定しました。それが「年収6,000万円」。当時の僕からしたら法外な年収ですよ。でもそこから逆算して、今何をすべきなのか戦略を考えました。例えば、年収6,000万くらいのレベルから、テレビCMの引き合いが来るようになるんですよね。日本のタレントのシステムでは、広告代理店の人たちが存在に気がつき、名前がひっかかってくるようになると、劇的にいい稼働ができるようになります。

――その他、活動内容で変えた点はありますか?

マキタスポーツ:あとは、自分のライブではオトネタ以外はやらないと決めましたね。自分は何をする人なのか一つに絞って看板を立てないと、何屋さんなのか気づいてもらえず、あまり信頼されないですから。オトネタのライブは一時期休んだこともありましたが、今も続けていて僕の活動の本拠地でもあります。

「多様化」は僕にとってストレス

――どん底の状態だったというマキタスポーツさんの30代。キャリアに行き詰まりを感じる方が多い年代かと思います。自身の経験も踏まえ、キャリアに迷う読者へアドバイスをお願いします。

マキタスポーツ:必要なのは「諦め力」ですかね。全て諦めろということではなくて、分相応・不相応を見極めた上で、不相応なことは諦めるということです。僕もオトネタを中心にしていこうと決意した時、他の可能性はいくつか捨てましたから。

今は昔と比べて、いろんな選択肢や可能性がありすぎて悩むという、高いレベルの悩みを抱えていますよね。「多様化」とか「無限の可能性」とか、啓発的な言葉が現在の世の中には溢れていますが、僕にとっては「多様化」も「無限の可能性」もストレスですね。そんなにたくさんは選べない。

――可能性の縛りがなさすぎることは、現代のストレスになりうると。。

マキタスポーツ:僕はこれを「スープカレーの苦しさ」と呼んでいます。スープカレーって、自分で決めることが多すぎる現代的な食べ物なんです。ベース、辛さ、トッピング…いや、全部自分で決めるのめんどくさい(笑)。カレーといえば一種類という考えが昔の終身雇用制度ならば、今はキャリアアップするために、自分で自分をマネジメントして、自分好みのスープカレーにしなきゃいけない。自分好みのキャリア、自分好みの人生。でも、そういうセルフマネジメントを完璧にできているてっぺんの人を目指しても苦労するだけです。自分の分相応・不相応を見極めて、こだわるところと諦めるところを選択するべきで、全部やろうとすると苦しいですよ。

でも、めんどくさいからやらない、負けたくないから関わらないみたいなのは、僕の言う「諦め力」の方向とは違うと思うんですよね。とりあえずいろんなことをトライしてみないと、自分の分相応・不相応も見えてこない。誰かに憧れていてもおいしいスープカレーは作れないけれど、自分なりの形が見えるまでは、いろいろトライすべきじゃないかな、と思っています。

後編では・・・

現在では芸人、ミュージシャン、役者、文筆家と幅広い活躍を見せているマキタスポーツさんですが、お仕事のスタンスを試行錯誤し、自身の「最悪な状況」としっかりと向き合った過去がありました。続く後編では、誰でも表現できるようになった「超自己表現時代」の現在で、表現者として生き残っていくための秘訣を詳しくお伺いします。

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