2017/02/02 公開

クロサカタツヤの「インターネットの歩き方2017」

思い出す言葉

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時間は、前に前に行く。遡ることはない。そうやって、未来に何かをパスしていけたらと思います

恩送り(Pay it forward)

――クロサカさんに馴染みのない方もいらっしゃると思います、改めて自己紹介をお願いできますでしょうか。
 
クロサカタツヤ(以下、クロサカ) クロサカタツヤと申します。企(くわだて)という会社の代表で、情報通信分野をメインに扱う経営コンサルタントをしています。2016年から慶應義塾大学特任准教授、総務省・情報通信政策研究所にてコンサルティング・フェローを務めています。フォーカスしている領域は人工知能(AI)、プライバシー、パーソナルデータ、セキュリティのほか、5G等の次世代通信規格や情報メディアの産業動向など、いろいろやっています。

――まさに情報通信分野におけるプロフェッショナルであり、非常にホットな分野でご活躍されていらっしゃるのですね。そんなクロサカさんの思い出す言葉は「Pay it forward」。これは、どういう意味でしょうか。 

クロサカ 日本語では、まだこなれていない言葉ですね。訳をあてるなら「恩送り」でしょうか。アメリカでよく見られる概念で、僕が好きな心持ちです。自分が受けた恩を、その人に直接返すのではなく、誰か他の人に渡していこうという言葉です。
 
例えば、目上の人からご馳走になったとしますよね。その人に対して、「次は僕がおごりますよ」と言うでしょうか? お互いの立場、関係性からしてちょっと不自然ですよね。でも、その恩を受けて、「自分も同じことをしよう」と思い、若い世代に対しておごってあげたりということは誰もがするでしょう。これも「恩送り」の一つの形です。
 
もちろん「10,000円おごってもらったから、あいつにも10,000円分」という話でもない。若い人からすれば、尊敬する先輩と一緒に飲めるなら、高級レストランではなく安い居酒屋で一晩中話せる方が幸せかもしれないですよね。
 
仕事にせよ何にせよ、われわれは誰かに引き立ててもらい、価値を受け取って生きています。誰かから評価を受けないと、「オレはそれをやれるんだ」と言っても成り立ちません。そういう風に社会はできている、だからあなたも誰かを引き立てましょうね、それも『恩送り』という概念に含まれています。

――なるほど、実生活に引き寄せるとよく理解できます。 

クロサカ ただ、この概念は自覚的でないと自分のところで容易に止めてしまえます。誰かに恩を渡さないでいることは、とても簡単ですしラクです。でも、実はそうしているうちに、自分の価値はどんどん下がっていくのだと思ったほうがいいです。
 
そのためには、恩に関することだけでなく、誰から恩を受け、誰に返すか、という「特定の誰か」を意識するのが、大事だと思います。これは万人が不特定多数にアクセスできるネット時代だからこそ、むしろとても大事になっている。

不特定多数って、よほど自覚しないと、無責任な態度に陥りかねないんです。というのは、不特定多数を意識しているとき、実体として存在しているのは、実は自分ただ一人だから。特定できない多くの人って、つまりバーチャルな存在で、想像上の産物でしかないんですよ。

にもかかわらず、自分ではない誰かの利益を代弁するようなものの言い方って、そもそもアンフェアだし、自分以外の誰に対しても責任を引き受けていないですよね。だから安易に「みんなのために」みたいな言い方で、自分の都合のいいように正義を振りかざすのは、ものすごく危険だと思います。

実体のある人たちの中で価値を送り合うというのは、いわば『情けは人のためならず』と似た概念かもしれません。誰かのためにやったことが、回り回って自分のためになる。恩を、情けを受け取って誰かに渡していくことで、世の中は広がっていく。これは、最近僕がとても意識していることです。もちろん、僕自身それを100パーセントできているとは思いません。ただ、そこを雑にしたまま過ごしてはいけない、とは思っています。

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クロサカタツヤ
株式会社企(くわだて)代表。経営コンサルタント(情報通信分野)。慶應義塾大学・大学院(政策・メディア研究科)修士課程修了。学生時代からネットビジネスの企画設計を手がけ、卒業後は三菱総合研究所にて情報通信事業のコンサルティング、IPv6やRFIDなど次世代技術の推進、国内外の政策調査・推進プロジェクトに従事する。2016年から慶應義塾大学特任准教授、総務省・情報通信政策研究所にてコンサルティング・フェロー。フォーカスしている領域は人工知能(AI)、プライバシー、パーソナルデータ、セキュリティのほか、5G等の次世代通信規格や情報メディアの産業動向など。
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