ビジネスモデルと採用がカギ。「管理ゼロ」でうまくいく組織とは

「働く」を考える。

2020/05/12
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ウェブアプリケーションの受託開発やオリジナルのソフトウェアの開発・提供、コンサルティングを行い、創業以来、増収増益を続けている株式会社ソニックガーデン。社員のほとんどがプログラマの同社では、出勤なし、売上目標なし、管理職体制なし、評価制度なし、各種申請なしの「管理ゼロ」のマネジメントを実践。さらには、フルリモートワークを導入しているため、社員は海外や日本各地での自由な暮らしを実現しています。どのように管理ゼロやリモートワークを上手く機能させているのか、代表取締役社長の倉貫義人さんに伺いました。

月額定額制のビジネスモデルで売上と品質を確保

――倉貫さんが代表を務めるソニックガーデンでは、ソフトウェア業界では珍しいビジネスモデルをとっているそうですね。

ソニックガーデンでは、「納品のない受託開発」をビジネスモデルとしています。月額定額の決まった金額の中でソフトウェアの開発、運用、コンサルティングを行い、お客さまの課題や悩みを解決することが、僕たちが提供する価値です。月額メニューが複数あり、担当者がお客さまと毎週打ち合わせをして成果を出し、月ごとに契約を更新していただく形をとっています。

なので、一般的な制作会社のように人日や人月で見積もりをつくらないんです。時間換算で見積もると、時間がかかるほどに費用が高くなり、生産性を上げるモチベーションがなくなってしまう。それはおかしいですよね。また納期があると、最初の要件定義通りに進めることを最優先に考えてしまい、その結果、品質に十分納得がいかない場合であっても納品せざるを得ない、ということが起こってしまいます。これでは誰も幸せにならない。こういったことを防ぐためのビジネスモデルでもあるんです。

納期がある制作会社よりも、顧問弁護士や顧問税理士のような働き方をイメージしてもらうとわかりやすいでしょうか。

――御社では、「管理ゼロ」を実践されているとか。どういうものか教えていただけますか?

弊社では売上管理、売上以外の目標管理、勤怠管理といった管理業務をしていません。そもそも、管理職というポジションを置いていないんです。なので指示や命令はありませんし、ノルマもありません。会社としての売上目標を置かず、僕と役員が数字を見るだけで成り立っているのは、月額定額制で安定的な売上を確保できるからです。会社の売上などは全社員が閲覧できるようにオープンにしていて、社員は案件をどれくらい担当すればいいかだいたいわかってくれています。

売上目標がないので、生産性や成果物を評価する面談もありません。つまり昇給がなく、給与は一律金額で、賞与は山分けです。勤怠は、パソコンのログを自動で記録できるツールを開発して使うことで、打刻・申請・承認作業をなくしました。

ちなみに、経費も承認なしで使い放題です。会社の売上と同じで、使用金額や用途をオープンにしています。そうすれば誰も悪さができないし、しようとも思わないんですよ。みんなに見られるとわかっていながら、使途不明のあやしい領収書をアップロードするような人はいませんから(笑)。

――なるほど。このビジネスモデルだからこそ、売上や目標の管理ゼロが実現できるんですね。そして、管理をなくすためにツールの開発まで。経費使い放題も羨ましいです……。仕事の進捗はどう確認しているんですか?

案件ごとに7、8人程度のチームをつくっていて、仕事の進捗はツールで見える化しています。お客さまとの打ち合わせには必ず2人以上で参加するようにしているので、誰かに何かあってもリスクヘッジができる体制にしているんです。仕事さえ進んでいれば、休暇もとり放題です。

――休暇もとり放題ですか……。ただ仕事の管理を一切しないと聞くと、サボる人が出てこないか気になるところですが、そのあたりはどうですか?

仕事をサボる人はいませんね。そういうタイプの人は弊社に来ませんし、来たとしても採用面接に受かることはありません。しっかりセルフマネジメントができる人しか通らない採用プロセスを敷いているので。

倉貫義人
1974年5月1日生まれ、京都府出身。小学生からプログラミングを始め、立命館大学大学院を卒業した後、大手システム会社に入社。2009年に社内ベンチャー「SonicGarden」を立ち上げる。2011年に経営者による買収であるMBO(マネジメント・バイ・アウト)を行い、株式会社ソニックガーデンを創業。月額定額・成果契約による受託開発のビジネスモデルを確立し、船井財団「グレートカンパニーアワード」にてユニークビジネスモデル賞を受賞。管理をしない会社経営や全社員リモートワークなどの取り組みが評価され、2018年に「働きがいのある会社ランキング」に入賞し、「第3回ホワイト企業アワード」でも受賞した。「心はプログラマ、仕事は経営者」がモットー。

1年以上かけて選考を行い優秀な人材を採用

――確かに「管理ゼロ」の経営を継続するためには人材採用がカギになる気がします。ソニックガーデンの採用プロセスを他社と比較した際、特徴的な点は何でしょうか?

新卒と中途採用をしていて、新卒はポテンシャルがあるかどうかを見るので他社の採用プロセスと大きな違いはないと思います。中途の採用は明確に違うでしょうね。まず1人の採用に平均して1年以上かけます。

――1年というと、かなり長い期間ですね。

フルタイムで長く一緒に仕事をするためにはこのぐらいの期間は必要だと考えています。入社してから信頼関係を築くよりも、入社前に築き上げて、双方納得したうえでジョインしてもらったほうがトータルで考えると効率的なんですよ。あとは少し前までは、私が一次面接から出ていました。

――約40人も社員がいる規模で、社長が一次面接から出る会社は初めて聞きました。

これも効率化を考えてのことでした。一次、二次、三次と選考を進んでもらっても、最終の四次面接で私が落としてしまうとそれまでの時間が水の泡になってしまう。それならいっそ、最初から私が出てしまったほうが早いですよね。私も経営者としてそれなりに人を見てきて、15分も話せば応募者がどういった方かというのはおおよそ判断できるので。

ただ最近は権限委譲していて、私以外のメンバーでも同じ基準で面接官ができるように採用チームをつくりました。

「TIPS」と副業でカルチャーマッチする人材か判断

――1年かけて採用に臨む際、応募者のどういったところを、どのようなプロセスで見ていますか?

中途採用の基準は、一定の社会人経験があり、即戦力となる人材であることです。そのうえで、ソニックガーデンのカルチャーにフィットしているかを見ます。

採用の際は「TIPS」という4つの観点を用いて見極めます。TIPSとは、テクニック、インテリジェンス、パーソナリティ、スピードの英語の頭文字を合わせたものです。

テクニックは、技術力があるかどうか。実際にプログラムを書いてもらい、ソースコードのレビューをすることで筋がいいかどうかを見ます。インテリジェンスは、地頭がいいかどうか。面接で弊社のビジネスモデルを分析してもらう他、雑談の受け答えをもとにアドリブ力を見ます。パーソナリティは、チームに貢献でき、一緒に働ける人格を備えているか。ここを見るために、こちらでタイトルを指定して作文を書いてもらいます。語彙力や言葉尻からその人の人となりを判断します。スピードは、生産性が高いかどうか。採用の最終段階に入った時点で、副業としてソニックガーデンの仕事をしてもらいます。実際に現場のメンバーと働くことで、仕事の進め方やレスポンスの速度をはかります。

以上の4つの観点をクリアするまでにかかる期間がだいたい1年間です。この中でも入社前に一緒に仕事をする、というのはかなり高い効果を感じています。結局のところ、応募者の力量や信頼性を入社前に確認する方法はこれしかないですから。

そしてここまで時間をかけることで、双方のミスマッチが防げます。採用側の「実際に働いてもらったら思っていたよりスキルがなかった」という採用ミスや、応募者側からの「いざ入社してみたらカルチャーが合わなかった」という食い違いも起きません。

――ソニックガーデンでは、全面的にリモートワークを実施されていますが、採用面接もリモートですか?

はい。ご想像の通りリモートで、すべての面接をテレビ電話で行っています。

これは時間効率化だけでなく、応募者の方のオンライン上でのコミュニケーションスキルを確認したいという意図があります。採用後は基本的にリモートで仕事をすることになるので、「直接会って面接してほしい」という方は、残念ながらその時点で不合格です。熱意はテレビ電話や文面でも伝えられるはずなので。

――冒頭で経費使い放題、休暇とり放題のお話を聞いたときは、倉貫さんは性善説に基づいて経営をする方なのかなと感じたのですが、実際はすべてにおいて効率的な方法を採用し続けている、ということでしょうか。

おそらくそうですね。すべてはパフォーマンスが出るかどうかを基準に判断しています。たとえば経費の話に戻ると、キーボードが必要なら上長の承認なんていらないじゃないですか。本人が仕事で必要だと感じているなら、買えばいいんです。中にはズルをしようとする人もいるかもしれませんが、世の中、真面目に生きている人のほうが大半で、特にソニックガーデンにはセルフマネジメントがしっかりできる人材が集まっている。それならそっちに基準を合わせたほうが効率的だよね、という考えなんです。

取材・文 観音クリエイション

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