小島慶子/タレント・エッセイスト 女子アナはもう時代遅れ【前編】

2019/05/22
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コミュニケーションに正解はない

――受賞して仕事が楽しくなってからは、女子アナというものへの抵抗感は減ったのでしょうか?

小島:仕事は楽しくなったけど、それからもずっと怒ってましたよ。女子アナってなんだよって。でも、その一方で女子アナプレイがなぜ必要かも、歳を重ねるとわかっていきました。男尊女卑的な価値観を持っている相手にインタビューする時や話を聞き出す時は、悲しいかなそれが役に立つこともあるんです。相手の価値観を叩き直すのが目的ではなく、話を聞き出すのが目的の時には、それも一つの方便なんですよね。決して望ましいことではないですが。

お世辞と似ているところがありますね。お世辞を言われ慣れている人から話を聞き出すには、お世辞を言うことが「あなたの話を聞きますよ」という儀式になる。場合によっては、女子アナ的コミュニケーションも方便としては使えるよねと、全否定しなくていいんじゃないかという結論になりました。

――場合によっては女子アナプレイも役に立つと。

小島:はい。残念ながらそういうコミュニケーションでしか、人の話を聞けない人というのもいるんです。さっきも言いましたが、目的が相手の考えを変えさせることではなく、話を聞き出すことなら、女子アナ的態度のほうが聞きたい話が聞けるならやればいいんです。自分のひとつの顔として、身につければいいということですね。プレイだと思って割り切る。

でも、やってはいけない場面もありますよ。だって、話を聞き出すためには何でもアリとなってしまうと、突き詰めれば「おっぱいを触らせれば話を聞かせてもらえるなら、触らせればいいじゃん」とかって話になってしまいます。男性からすると「女を武器に使ってる」という非難も成り立つわけで、不毛な議論になりかねません。自分がプレイとしてやっている女子アナ話法なるものが、実はジェンダーの不平等をベースに成り立っているものだということ。そして、このようなコミュニケーションは性差別を助長しかねないことを十分に自覚した上で、コントロールして使うんです。そういう度合いは自分で判断しないといけない。何事も原理主義的になると、かえって人の理解を得るのが難しくなりますから、極端に考えないことが大事ですね。

30代になってジェンダー平等を実現することの大切さをより深く実感すると同時に、実際はまだ古い価値観が残る世の中をどのようにすれば変えていけるか、現実的に考えて出方をいろいろ変えられるようになりました。

未来の自分は恩知らず

――小島さんは28歳で結婚して、30歳で出産されています。仕事と育児が重なって多忙な時期、小島さんはどのように過ごしていましたか?

小島:私は1995年から働き始めたんですが、当時は出産しても働き続ける女性は少なかったです。男性と対等、またはそれ以上の給料をもらうような女性のロールモデルもいなかった。その状況で仕事を続けるのであれば、育児も仕事もカッコよくこなさないといけないと気負ってしまって苦しかったですね。

――「育児も仕事も完璧に」と苦しむ女性は多いかもしれないですね。

小島:別に、仕事でキラキラと輝かなくていいんですよ。働くって、生きていくためにすることなので。私も育児が大変だった時期は、給料分くらい働けばいいやと割り切っていました。レギュラー番組がなくてもいいし、人気がなくなったと言われてもよかったんです。

苦労した自分を振り返って思うのは、「未来の自分は恩知らず」ということです。セクハラやパワハラで会社を辞めたいけど、我慢しようかなどといろいろ悩んでいる方もいると思います。それって、将来の自分を心配しているからですよね。でも、後から昔の自分を振り返った時に「あのころって超青かった! 全然わかってなかった!」とかって平気で言うんです。未来の自分は大変恩知らずなんです(笑)。

だから、そんな恩知らずの将来の自分のために理不尽なことに耐えても無駄なので、今の自分を大切にして、健やかに生きられる場所に移ってください。そして、今おもしろいと思うことをやってください。それを繰り返していると、どこかにたどり着きます。人生というのは小説のように最初から筋書きを決めることはできませんが、後になって小説を読むように振り返ることはできるんです。どこにたどり着いたとしても、ここにストーリーがあったと思えるように、人間の脳はできています。だから、あらすじを書いてやろうと思わなくていい。一番やりたいこと、楽しいことをやって、振り返ると人生を語れるようになっている。それでいいんです。

後編では…

未来の自分も、周りの人間もいい意味でいい加減。だからこそ、今やっていて楽しいことをすればいい。「輝かなければならない」と苦しむ人たちへのメッセージをいただいた前編に続き、後編ではTBS時代に働く環境をどのように改善したのか、ハラスメント問題に私たちはどう向き合うべきなのか、詳しく伺っていきます。

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