2017/08/29 公開

【後編】「無茶ぶりされたら、考える前にやってみる!」・木根尚登(TM NETWORK)

失敗ヒーロー!

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“ブレないプロデューサー”・小室哲哉が本領発揮!

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木根: そうそう、TMの結成よりもう少し前の話になっちゃいますけど、小室くんから「2人でやろう」って誘われていた話 をしたじゃないですか? 「外国人ボーカル」や「3人組」というスタイルを受け入れられず、のらりくらりと誘いをかわしていた僕も、彼の熱心さにだんだん心がほだされていったんですね。ある日、もともと合わなかったはずの“音楽性”の話になったので、改めて「どういう音楽がやりたいの?」って聞いたんです。そしたら彼は「YMOにボーカルを入れた感じ」と……! 当時の新しいスタイルに、自分たちなりのオリジナル要素を加えて昇華させる──そのイメージが、彼の頭の中にはすでにあったんですよ。

さらに続けて「これからはコンピュータの時代。ボクの友達にお金持ちがいるから、そいつに買ってもらおう」って言うんです。しかも実際に買ってくれる友達がいて、最新鋭のシンセサイザーとかがひととおり揃っちゃう! 当時も驚きましたが、10代のバンドキッズのエピソードとしては、なかなかブッ飛んでますよね。小室くんがすごいのは、楽器を買ってくれた友達も一緒に音楽をやりたがってたんですけど、そいつに向かって「う〜ん、このユニットは3人までなんだ♪」って。入れてあげないんですよ、アイツ(笑)。

――そこもブレなかったわけですね(笑)。
 
木根: 「“一番いいミュージシャン”に頼む」という発想と同じく、彼のプロデューサー感覚には驚かされることばかりですよ。なんてったって40年くらい前の話ですからね。実務的な話をしちゃうと、振り回されるまわりの人にとってはたまったもんじゃないんですけど、実務では代えがたい才能だと思います。「エイリアン」という設定も、いまとなってはいい思い出であり、笑い話ですし(笑)。

――たしかに「宇宙」という発想は、なかなか出てきません……! そんな状況は、いつ頃まで続くのでしょうか?
 
木根: 変化のキッカケになったのが、レギュラーでやらせていただいたラジオ番組。アドリブも含め、いろいろしゃべらないと番組が成立しないし、何より隠しきれなくなってくるわけですよ。例の「設定」がなくなったわけではありませんでしたが、番組を面白くするためにはずっとエイリアンではいられないし、それを口実に得られた解放感が心地よかったですね〜(笑)。

そんな感じでプライベートな部分も小出しにしていったら、ある日ファンからハガキが届いたんです。「TMって、こんなにしゃべるバンドじゃないと思ってました。木根さんは、サングラスが似合うクールな人だと思ってたのに……もうファンを辞めます」と……。「別に“辞めます”って表明しなくてもいーじゃん!」と思いましたけど、ラジオがキッカケで新たなファンが付いてくれることもありましたし「宇宙出身」からも解放されましたから、これもいい思い出です(笑)。

というか、もとを正すと『Get Wild』のヒットがあって、ラジオのレギュラーを持てたわけで……。やっぱり1曲でも“売れた”ことが大きかったんですよね。

大ヒット、武道館ライブ、紅白出場……からの、「プロジェクト終了」!

――『Get Wild』のヒットから、武道館ライブ、紅白出場 と、トントン拍子でトップアーティストへの階段を駆け上がっていかれました。これからどんな“TMワールド”が展開されていくのか期待が高まるなか、まさかの「プロジェクト終了」宣言……。単刀直入に伺いますが、なぜ「終了」されたのでしょうか?

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木根: 結論から言ってしまうと“やりきった感”じゃないでしょうか。

TMは1年目のステージから、気鋭のスタッフや斬新な舞台演出、最新の機材を取り入れて、常に“新しいこと”にチャレンジしてきました。例えば、いまでは当たり前になったムービングライト(=照明機材とコンピュータをリンクさせて、多数のライトを自由に遠隔操作できるシステム)を初めて導入したのも、たぶんウチらだったんじゃないかなぁ。実際、ほかのアーティストがライブを見に来てくれることも多かったですし、以降の日本のライブ演出に少なからず影響を与えたという話を有名な舞台監督さんから聞くこともありました。

そうそう、ユニークなところだと、ミュージシャン本人がライブでパントマイムまでやりましたからね。リンゼイ・ケンプっていう、イギリス人の有名なパントマイミストの舞台を見に行ったら、10メートルくらいの竹馬をはいていて、そのインパクトがすごくて! それを見た小室くんが、いつもの調子で「アレ、木根がやるんだよ〜」って(笑)。公園で1人、練習したなぁ……。当然のように近所の子どもがたくさん集まってきて、「オジサンすげ〜!」って感じで、もう公園のヒーローですよ。「いいからアッチ行ってなさい!」なんて言いながらね(笑)。

自分たちでハードルをガンガン上げて、ありとあらゆるパフォーマンスを取り入れて、表現の最終形として『CAROL』というミュージカル仕立てのライブまで完成させました。その時点で、いまの自分たちにできることは、これ以上ないなと。

無知ぶりされてもとりあえず“やってみる”木根尚登のマネジメント術とは?

――これまで誰もやっていなかったことをやり尽くしたら、たしかにそうなりますね! 以降はソロ活動が中心になりますが、3人ではできなかったことを、木根さん個人として実現できたのでしょうか?

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木根尚登氏オフィシャルサイト

木根: 恥ずかしながら、トレンディドラマなんかに出ちゃったりもしましたよ(笑)。そして、若かりし頃に憧れた吉田拓郎さんがやられていたトーク&ライブ! 1993年から始めて、いまはなき新宿のシアターアプルで1週間連続の公演をやることもありました。T.M.Revolutionの西川貴教くんとか、X-JAPANのToshiとかをゲストに呼んで、半分以上はトーク(笑)。あと、TMとしてもやっていたラジオはずっと好きだったので、番組の看板は変わりながらも継続してソロでやらせてもらいましたね。

――それまでは“TMの木根尚登”として、小室さんの無茶ぶりに見事に対応しながらセルフマネジメントされていました。ソロ活動においての、ご自身のキャラクター作りなどで、何か気をつけられていたことはありましたか?
 
木根: う〜ん……でも、特に最初のうちは、新たにキャラを作るというより“TMの木根尚登”というキャラを守ろうと意識していたかもしれません。小室くんの無茶ぶりも、結果的に“いちミュージシャン・木根尚登”を育ててくれた部分が大いにありましたし。

――今日は本当にたくさんのエピソードを伺いましたが……木根さん、無茶ぶりキッカケとはいえ、新しいことに挑戦するのは嫌いじゃないようにお見受けしました!
 
木根: そうですね、いま考えると嫌いじゃないみたい(笑)。「役者やる?」って言われながら、ずーっと断っていたんですけど、結局、ドラマや舞台で演技にも挑戦しましたし。演技もパントマイムも、やってみてすごく勉強になったし、何より楽しかったですね。

――今日お伺いした限りでも、結果的にトライして良かったことのほうが多かったですもんね。

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木根: 小室くんにひとつ文句を言いたいのは、言うのがあまりに突然なんですよ!

ある日、スタッフさんから「木根さん、小室さんから伝言を預かってます」って言われたんです。詳しく聞いてみると、「あの曲の間奏で“素になる”(=音がなくなる)んだけど、きっと木根がギターソロをやるから」って言われたらしく……もちろん僕は聞いてないんですよ。「何のための時間なの?」って聞いたら「小室さんの衣装チェンジです」って(笑)。

「もともとエレキのギタリストじゃないのにソロって……」と思いながら悩んだ結果、「アコギでやろう!」と決めました。舞台の縁に座り込んで、すり鉢状の客席に向かって、TMの曲をギター1本で、マイクも通さずに歌ったんです。そしたら、そのコーナーが人気出ちゃったんですよ。その話を聞いた小室くんは「ボク、着替えるのやめようかな」って言いやがって(笑)。 舞台監督も、さすがにそれは却下してくれましたけど(笑)。

――新しいことに挑戦すると、思わぬ発見に出合えるってことですよね。
 
木根: いわゆる“火事場の馬鹿力”は身に付きましたよ。おかげで、無茶ぶりされても百戦錬磨! ライブのアンコール中に突然「はい、ここで木根さんが即興で作曲します」って言われても何とかなりましたし、それどころかレギュラー化しましたから(笑)。

でもこれって、ミュージシャンに限った話ではないと思います。会社で上司に無茶ぶりされても、考える前にやってみる! 1人で考え込んでも、たいてい何も生まれないですから。そういう意味では、小室くんの無茶ぶりに感謝しないといけないかな。

“自分のため”から“誰かのため”に

 
木根: あとは、最初の頃は“自分だけのため”に音楽をやっていたのが、“誰かのため”にやり始めたときに大きく変わりましたね。アマチュアの頃から「人のために」と思って音楽を始める人なんて滅多にいないし、「カッコよくなりたい」「歌が好き、楽器が好き」でいいんです。そして当然、僕もそうでした。

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木根: でも、TMを結成してすぐの頃に「少年院を出たり入ったりしていたけど、TMに出会って自分を変えようと思った」という手紙をもらったんです。そのときに、「自分がやっていることって、もう“自分だけのため”じゃないんだ」って実感しました。それはお客さんに対してだけではなく、スタッフさんに対しても同じ。自分は体ひとつでスタジオに行けば、楽器が準備されていてリハーサルができる。終わったら、そのままご飯を食べに帰れる。その状況を作ってくれている人が、どこかにいるんですよ。

そして、そういうところを意識できるようになったら、また自分にいろいろ返ってくるんですよね。だからTMの“通訳”も喜んでやったし、無茶ぶりにもポジティブにチャレンジできました。それを理解するには時間がかかりましたけどね。

まずは自分のためでいい。それが少しでも実現できてきたら、少し引いて、まわりを見渡してみる。そこにいる人たちを意識して、感謝の気持ちを忘れずにいる。あとはガムシャラにやるだけです! 

――木根さんに言われると説得力が違います! いろいろなお話を伺って、またTMとしての3人の絡みも見てみたくなってしまいました(笑)。いま改めて考えてみて、「やっぱりやり残したな〜」と思うことって何かないですか?

木根: たしかに、いまの年齢なら、そしていまのテクノロジーがあれば、昔はできなかったことができますからね。でも……個人的には、3人が司会の音楽番組くらいかな。まぁ、僕のポジションはもう見えてますけど(笑)。

インフォメーション

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今年の年末にコンサート開催!
木根尚登25周年記念コンサート『キネバラ』
会場:(東京)品川インターシティホール
日時:2017年12月2日(土)
開場・開演時間:16:00/17:00
チケット価格 :7,500円(税込)ドリンク代別
木根尚登オフィシャルサイト
http://www.kinenaoto.com/

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絵本も絶賛発売中!
絵本『「おに」と名づけられた、ぼく』
作:木根尚登/原案:寺井広樹/絵:もずねこ 
ISBN:978-4-86472-590-3 
仕様:AB判・上製・フルカラー 
価格:1,500円+税 ご購入はこちら!


【前編】「担当パートや肩書きとは違う、組織の中での“役割”を見つける」・木根尚登(TM NETWORK)
【後編】「無茶ぶりされたら、考える前にやってみる!」・木根尚登(TM NETWORK)


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