【後編】「無茶ぶりされたら、考える前にやってみる!」・木根尚登(TM NETWORK)
失敗ヒーロー!

華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く「失敗ヒーロー! 」。前編では、TM NETWORK結成までの裏話と結成後の歩みから、個々のキャラクターを生かした「組織における“役割分担”」へと話が展開していきました。
後編は、小室哲哉さんからの“無茶ぶり”から身に付いた、木根さんの思わぬ特技(!?)のお話。ネガティブに捉えられがちな無茶ぶりにもメリットがあり、それをうまく生かせたからこそ、これまでの音楽活動・表現活動がより豊かなものになっていたのだとか。上司からの無茶ぶりに対応しきれず困っている人に、金言ならぬ“金体験”が満載です!
出身地は「宇宙」!?
――前編で、TM NETWORK(以下、TM)を結成されてから数年は苦難の時期が続いたとおっしゃられていました。その頃のエピソードを、もう少し伺えますか?
木根尚登(きね なおと)
1957年生まれ。東京都出身。1983年に、小室哲哉氏・宇都宮隆氏とともに音楽ユニット・TM NETWORKを結成。1984年、アルバム『RAINBOW RAINBOW』でEPIC・ソニーよりメジャーデビュー。シングル『Self Control(方舟に曳かれて)』や『Get Wild』などのヒットにより、一躍人気バンドとなる。ソロとしても、執筆活動やトーク&ライブの開催などを精力的にこなしながら、2016年には音楽演劇ユニット『劇団こどもみかん』を結成。2017年2月に旗揚げ公演を成功させるなど、多方面で活躍中。
木根尚登(以下、木根): バンドやグループには、ファンからの“見え方”を意識した設定とかコンセプトってあるじゃないですか? 初期からのファンの間では語り草になっていますが、最初は「宇宙から視察に来たエイリアン」という設定でしたからね(笑)。
この話を始めたら朝までかかっちゃいそうですが……デビューが決まってすぐ、レコード会社で会議が行われて、「どんな髪型・衣装・コンセプトでいくか?」などを話し合いました。いろいろなアイデアが出たし、実際に何百万円もかけて撮影まで行うこともありましたが、なかなか定まらないし浸透もしない……。でも、メンバー内での“プロデューサー役”である小室くんが、いろいろなコンセプトやストーリーを作るのが好きだったんですよね。そして最終的にエイリアンに!
――外国人ボーカルどころか、地球を出ちゃいましたね(笑)。
木根: そのおかげで、レコード会社から口を酸っぱくして言われていたのが「生活感を出すな」ということ。生まれ育った場所や好きな食べ物はもちろん、家族の話もすべてNGだったので、本当に取材が苦痛というか……申し訳なかったですね。「兄弟はいるんですか?」って聞かれても、「まぁ、いなくはないですけど……でも……」みたいなどっち付かずの答え方しかできないので、相手も現場で困っちゃって。もともとは「フォークソング大好き、吉田拓郎さんのトーク&ライブ大好き!」な少年だったのに(笑)。
ただ、当時から小室くんが繰り返し言っていたのが「差別化」という言葉。いまみたいに、音楽やアーティストが多様化している時代なら当たり前のことかもしれませんが、その頃はまだ「海外ミュージシャンに追いつけ、追い越せ!」の時代です。先人たちのカッコイイところを盗むだけでも精一杯なのに、ほかの人たちと違うことをやって自分たちの“ポジション”を作る、さらにはトップランナーになろうとしていたわけですからね。

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