【前編】ナイジェリア・サッカー五輪代表を支援した男は”決戦の地・リオ”で何を食べたのか?

これが、勝負メシ。

2016/10/26
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「裏取引をバラすぞ」と、協会は監督を脅していた?

――ナイジェリア五輪代表チームはうまくいっていなかったんですね。
 
加藤 はい。それは中心選手のミケルと、シアシア監督の話し方を聞いていたらすぐにわかりました。互いにリスペクトを払っていないように感じました。監督と選手って、絶対的に上下関係があるものじゃないですか。それが、2人の会話を聞いていると今ひとつ感じられなかった。直感的に「あ、このチームはうまくいっていないな」と思いました。
 
だから、お金の渡し方についてはこういう提案をしました。高須さんから4,000万円の小切手を渡すので、それを2,000万円ずつ分割する。シアシア監督に2,000万円、ミケル選手に2,000万円。これを、ナイジェリアサッカー協会の人たちの目の前で渡すということ。

そもそも今回高須さんが支援した39万ドルの内訳は、19万ドルが銅メダルボーナスで、選手18名+シアシア監督1名の19名に1人1万ドルずつという計算になります。残りの20万ドルは未払いに対する支援金です。未払い分の内訳はというと、スポーツ省が払うべきオリンピック期間のチームの宿泊・滞在費とサッカー連盟が払うべきシアシア監督とチームスタッフへの5か月分の未払い給与です。もちろん、協会やスポーツ省サイドからは「ちゃんとわれわれを通してから出してほしい」と要望が出ていたのですが、中抜きリスクも含めて高須さんには選手に直接小切手で渡したいという意思がありました。なので、未払い分20万ドルの小切手をシアシア監督宛に、19万ドルのボーナスをミケル宛に渡すということでサッカー連盟を説得しました。

この提案に対して連盟は、ミケル選手へはOKを出しましたが、シアシア監督へはNGと返されてしまいました。最終的には協会を説得して、2人に小切手を渡すことになったのですが……。
 
――それはどういう理由だったんですか?
 
加藤 もともとシアシア監督はナイジェリアサッカー連盟と揉めていたようなのです。小切手を渡す際にも「これは未払い金の保障だから、連盟にもスポーツ省にも二重請求はしてはダメだよ」と伝えて了承してもらっていたのですが、支援金を渡した後に連盟に未払い給与を請求しました。それに、連盟が拒否すると「自分の奥さんが連盟にクルマを取られた」とかなんとか言ってごねてましたね。その話も「車は歴代監督に貸与してきたものであって、シアシア監督個人に提供したわけではない。彼との契約は今大会で終わりだから、返却してもらっただけ」ということが真相だったようです。
 
それなのに、シアシアはそのクルマを勝手に奥さんにあげていたんです(苦笑)。にも関わらず、シアシアはさらに連盟に文句を言い続けている。連盟側も「そんなに文句ばかりいうなら、あなたが不適切な選手選考をしてきていた疑いをオープンにする」みたいなことを言い出して。

 
――不適切な選手選考ですか。

加藤 ナイジェリアに限らずアフリカの選手たちにとって、「世界大会で活躍してヨーロッパに高額で移籍する」ということは大きな目標です。五輪は、まさにその登竜門なんですよ。23歳を過ぎて国内に残っている選手は、売れ残り扱いです。そういう事情があるので、昔はなんとしても選手を年代別代表に入れたいエージェントが監督に対してワイロを送る、ということが横行していたようです。連盟は「シアシアの懐にも、そういうお金が入ってるぞ」ってことを匂わせたのだと思います。
 
――まったく一筋縄ではいかない状況ですね……。日本でも、あるのかもしれませんが、少なくとも横行するというレベルではないはずですよね。

加藤 これは、現在進行系で揉めています。ミケルとシアシアの関係が良くなかったのも、こういう部分があったからかもなぁと思っています。

――なるほど……この支援活動で学んだことは、どういうことですか?
 
加藤 一言でいえば、「突き抜ける人はいろいろ我が強い」ということですかね(笑)。高須さんもすごくいいお爺ちゃんなんですけど、いろいろ大変でした。ただ、信念と哲学を持っている人で、すごく勉強になりましたよ。

支援自体がうまくいったのは、やっぱり高須さんがお金を持っていたってことがすべてですけどね。それ以外にないですよ、高須さんのお金がないと何も始まらなかったので。実は、高須さんとやり取りしたのもFacebookメッセンジャーでたった3回ぐらいなんですよ。
 
――えっ、たった3回? そんなやり取りで、これだけの金額を動かしたんですか!
 
加藤 そうなんです、すごいでしょ、高須さん(笑)。金額についても、とにかく時間がなかったので一発でフィックスする額として「おおよそこの程度必要だろうな」という金額の1.5倍を提示し、ボイコットをとにかく回避させる方向にしました。その上でちゃんと渡せたのは、和田さんという大使館や記者ルートから来た方のご協力もありまして。そのあたりの調整がうまくいったことだと思います。

とはいえ、ボイコット自体はホントにやるかというと9割はやらないだろうという見通しは持っていましたけどね。これも日常茶飯事なので、未払いにしてもボイコット云々にしても。ただ、それでも可能性があるとすればリオ五輪で勝ち上がって、世界的な注目を集めた段階でのボイコット。ここで途中棄権すると、スポーツ省がお金を払わなくてはいけなくなります。その可能性は万一あるかもなと思ったので、スピード勝負で動きました。
 
――日本にいると、なかなか実感できないようなことが日常茶飯事なんですね……。
 
加藤 もう一つは、ナイジェリアという国について。汚職を始め、危険なことは山ほどあるなと体感できました。なにしろ国庫支出のうち、3分の2が使途不明金で消えた、という話もあるほどなんです(苦笑)。元駐日ナイジェリア大使が、メイドさん2人雇ってそのうちの半分のサラリーをピンハネして、6年間も軟禁状態にしていたとか。

――もう想像を絶します(苦笑)。そんなことが駐日大使でありえるんですね……。

加藤 本当に、この国でビジネスをしていくのは並大抵のことではないなと思いました。
 
後編へ続く

インタビュー・テキスト:田中千晴 撮影:澤山大輔 編集:マネたま編集部

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