【後編】「君がいいんだよ、君じゃなきゃダメなんだよ」・片桐 仁

失敗ヒーロー!

2017/04/27
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芝居の舵取り役である演出家に「僕はかなり委ねます」

――会社でもそうですね。チームで仕事をしているときのトラブルって、克服さえできれば、飲み会のテッパンネタですから(笑)。片桐さんで言えば、そのチームが演劇であり、エレキコミックのお二人と組まれている「エレ片」。こうしたチームのパートナーには、どんなことを求めますか? 

片桐 いやいや、求めるなんて。演劇にしてもお笑いにしても、台本を書いて、演出してもらえるだけで有難いですよ。だって、道筋をつくってくれるんですから。ただ、とくに演劇ってみんなでやるものだから、つくってもらった道筋に対してはみ出しすぎてもダメだし、出なさすぎてもダメだし。その塩梅は、演出家さんによって違ってくるんですけど。

――チームプレイでは、道筋と塩梅を左右する演出家さんの影響が大きいと。 

片桐 僕はかなり委ねます。委ねられないような状況だと、現場に対してあまりポジティブでなくなってしまう。すると空気が硬直するというか、あんまりよくないんです。たまにあるんですけどね、「これ、演出家だけじゃなく、もう一人頭がいるな」って。そうなってしまうと、よくないですね。

――演出家さんが現場の舵取り役なんですね。 

片桐 舵取り役ですね。僕は絶対にやりたくないですけど(笑)。だって演出家って、本当に大変な仕事ですよ。自分の美学なり、好きな世界観が確立されていないといけないし、それを役者に見せて伝える立場だから、孤独でもあります。

「お互いを信頼して挑むこと」=演劇界のルール?

片桐 役者全員に「こうしろ、こうしろ」と毎回同じように指導して、100点満点を出し続けることを目指す演出家もいるし、「このシーン、片桐さんはどう思います?」と役者に委ねて、その日の感じ方や空気感で、お客さんとの一体感を目指す演出家もいますし。いろいろな演出家さんがいますけど、極端な話、超優柔不断な演出家さんは困りますね。すべてを「自由にやってください」と言われても、役者は戸惑ってしまいますから。

――「自由に」と言われると、「任せきってもらえているんだ」という自信にもつながりそうですが。

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片桐 「任せられている」という嬉しさや自信以上に、「何も考えていないのかな?」って、思ってしまいますね。完全に任せきられたほうが上手くいく役者さんもいるから、一概には言えないけど、僕の場合、疑いが出ちゃうというか。だから、何よりも信頼が大事だと思います。

細かな演技指導をしない演出家もそうだし、逆に細かく何度も、同じ演技を繰り返させる演出家も同じです。「何回、やらせるんだよ」って思うこともありますけど、そこはやっぱり信頼感が欠かせないんです。なぜなら舞台って、一度幕が上がってしまったら、演出家は何も言えませんから。幕が上がった以上、演出家は役者に委ねるしかない。お互いを信頼して挑まないと、そこはルール違反というか。

若い人に「君じゃなきゃダメだ」と伝えたい

――演出家と役者の関係は、会社の上司と部下に似ていますね。そして、どう舵取りをするかは、マジメントに通じる気がします。 

片桐 いや、本当にそうですよね。とくに中間管理職になると、マネジメントが欠かせません。僕も今年で44歳。次に出る芝居では9人の役者がいる中で、ちょうど真ん中の年齢なんです。若い役者に対して兄貴になろうなんて気はさらさらないけど、「やり甲斐を与えてあげられたら」とは思っていて。

なんだか本当に会社の話みたいだけど、若手に対して「君がいいんだよ、君じゃなきゃダメなんだよ」ってことを伝える、お手伝いができたらいいなと思います。僕も「あの役は片桐さんにしかできませんから」なんて言われると、最高に嬉しいですから。以前、とある役者さんに「あそこまで本気で怒った演技をしても、そこからスッと笑いに持って行けるのが、片桐さんならではですよね」って言われたとき、嬉しかったなぁ。

――「必要な存在だと伝える」。会社に置き換えると、すごく理想の上司ですね。 

片桐 「コメディだけど急にシリアスになるシーンで、重くなりすぎないのが僕の強みなのかな?」って、思えましたね。そういうことを気づかせてくれる存在はとても有難いですし、「これまでの経験が、どこで何にリンクしていくか分からない」ってことにも気づけた気がします。

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片桐 これはチームプレイというか、複数の人とつくり上げる演劇だから気づけたことです。昔は僕自身、周囲に対してめちゃくちゃ閉じていたけど、今では人と関わることの大切さを痛感しています。この閉じていた僕が、最近では、息子の学校のパパ友たちと飲んだりしますからね(笑)

そこでは「嫁さんと付き合って、どのくらいで結婚したか」なんて、他では絶対にしないような会話をしますけど、これがベタに面白い。若いころの僕からしたら信じられないけれど、そういう当たり前の会話を面白いと感じて、それを仕事にもリンクさせられるくらい、柔軟になれたということでしょうか(笑)。


【前編】「絵もお笑いも、『またここから!?』の繰り返しだった」・片桐 仁
【後編】「君がいいんだよ、君じゃなきゃダメなんだよ」・片桐 仁


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