2017/04/27 公開

【後編】「君がいいんだよ、君じゃなきゃダメなんだよ」・片桐 仁

失敗ヒーロー!

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若手に対して「君がいいんだよ、君じゃなきゃダメなんだよ」ってことを伝える、お手伝いができたらいいなと思います

締め切りに間に合わず誌面で土下座!

――役者として精力的に活動される一方、雑誌で粘土彫刻を発表され、現在はその作品展「不条理アート粘土作品展『ギリ展』」全国ツアーの真っ最中ですね 

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片桐 仁(かたぎり じん)
1973年生まれ。埼玉県出身。多摩美術大学在学時に、相方の小林賢太郎(こばやしけんたろう)とラーメンズを結成。お笑い芸人だけでなく、俳優業やコメンテーター、そして粘土彫刻など様々な分野で活躍。現在、粘土彫刻の作品展「ギリ展」が日本全国で絶賛開催中。

片桐 仁(以下、片桐) 最初に漫画雑誌での連載が始まったのが、26歳のときでしたね。若さもあって、「現代芸術家として注目を集めるに違いない!」なんて思っていたけど、当時はまったく注目されなくて(苦笑)。気がつけば初掲載から18年。連載ものだから、とにかく締め切りに間に合わせなきゃいけないのに、ついに間に合わず、誌面に土下座写真が載ったこともありましたね(笑)。

――その回、拝見しました(笑)。制作途中で壊れてしまって……。 

片桐 つくり直そうにも間に合わず、苦肉の策です(笑)。あのころは結婚もしていなかったし、一人暮らしだったから、ぜんぶ自分の時間として使えたのに、制作を始めるのが遅すぎたんですね。3週間はかけないといけない作品だったのに、1週間でつくろうとしていましたから。

――それも一つの失敗でしょうか……? 

片桐 締め切りに間に合わなかったことからして、完全なる失敗です(笑)。ただ粘土って、こねて合体させて、またこねてと、制作過程そのものにやり直しが入り込んでいるというか。だから大きな意味では、失敗なんてないんです。それでも図工とか美術とか、とくに絵を描くとなると、多くの人が「とにかく失敗するのが嫌」と言いますよね。『kodomoe』という育児雑誌で粘土づくりを教える連載を持っていますが、そこに参加してくれる子どもたちもそうだし、大人になるとなおさら。

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「失敗のリカバリー」がアートになる

片桐 だけど「私、絵が下手だから」と言う人って、単に量を描いていないだけだと思うんです。「失敗するのが嫌だから」とか、「失敗しちゃったから、もう描きたくない」とか言うけど、失敗したときのリカバリーって、アートの中では実は大きなポイントになると思います。ミスから成功が生まれるというか……。ただ、リカバリーには技術が必要で、技術に裏打ちされたものが、徐々にアートになっていくんですね。

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――失敗のリカバリーから作品が生まれるのに、失敗を恐れるがゆえに、リカバリーの技術が伴う前に制作をやめてしまう? 

片桐 そうです、そうです。その反面、ある程度の技術が身についてくると「この段階でこうだな」とか、いろいろと見えてきてしまって、つまらなくなったりもするんですけどね(笑)。だけど「失敗だ! しかし締め切りまでに、どうにか形にしなくては!」という状況になると、頭の回転の仕方が普段と違ってくるんです。時間もないし、めちゃくちゃ焦るんだけど、「来た来たーーー!!!!!!」みたいな瞬間がやって来るというか。

失敗は「作品にストーリーが生まれる」瞬間

――いわゆる“火事場の馬鹿力”のような? 

片桐 そうそう。美大時代にも版画を刷ろうとしたら版木がローラーに巻き込まれて、バキバキッと折れてしまったことがあって。でも、翌日には締め切りなんですよ。だから、「もっと割っちまうか!」って、思いつきで何カ所か版木を割って刷ってみたら、割ったところにインクが染み込んで、構図の一部になった。一つの失敗から、作品にストーリーが生まれたんです。

――なるほど、作品に深みが生まれたんですね。 

片桐 演劇でもそうです。出演者の誰かがケガをしただとか、本がないだとか。すると、いつもは思いつきもしないようなことをみんなが言い始めて、完成度は多少下がったとしても、面白いことになるんですね。逆境に燃えるというか。

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片桐 滞りなく進むに越したことはないけど、のっぴきならないような状況だと、結束力も高まりますし、それに笑い話にできるじゃないですか。「こんな酷い目にあった!」って、あとから笑えますよね。僕なんて、「これはラジオで話せるな、ネタになるな」って思ったりしますから。それこそ、粘土彫刻の連載で土下座写真が載ったときも同じですよ(笑)。

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