まるでマツコDX?!「他人なんてほいほい信じられない」韓非子に学ぶ、建前抜きのマネジメント術

2015/11/30
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マネジメントに役立つ中国の思想書といえば『論語』や『孫子』がメジャー。しかし、いざ読んでみても「なんだかきれいごとが多くない?」「立派すぎてピンと来ない」という感想を抱く方もいるでしょう。そんな人には、中国の戦国時代に書かれた『韓非子』がおすすめです。

著者である韓非子は、同僚の裏切りから命を落とした幸のうすい人物。「他人なんて、ほいほい信じられない」という考えを軸に、さながら古代中国のマツコのような、きれいごとの無い考えを説くことが特徴です。実際に、世間の荒波で生きるビジネスマンからは、「本質的な人間関係の対処法が学べる」と人気を集めているようです。

今回は、この『韓非子』のエッセンスを使って、世のマネージャーが抱える根本的な疑問にアプローチすることがテーマ。分かりやすい現代語訳で話題の『超訳 韓非子』(中島孝志氏)を参考にしているので、中国古典に馴染みのない方も必見です。

人望は才能ではなく、熱意から生まれる

疑問その1、人望のあるリーダーには何が備わっているのか。

“下の者が君主への忠誠を忘れて外交にばかり努め、自分の仲間を推挙するようになると、下は上のために働こうという気持ちが薄くなる。

下の者が交際を広げ、仲間を増やし、内外にグループができると、たとえ大きな過失があっても隠蔽されることが多くなる。”
出典:中島孝志著『超訳 韓非子 善をなすために、悪を知る』、52項。

人望の無いリーダーの元で家臣が好き勝手に振る舞えば、国は滅亡すると説く韓非子。では、何を持つリーダーに人望が集まるのでしょうか。中島氏曰く、まず認識しておかなければならないのは、人望=能力では無いということ。

特に、自分と同格か、自分以上の人間の中でリーダーシップを発揮するためには、能力よりも無私に近い「熱心さ」、これが最も重要だといいます。指導者が無私だからこそ、部下は「手柄を上げたい」「誉めてもらいたい」というエネルギーを仕事に投入することができるのです。

人望のあるリーダーたるためには、何が無くとも熱意は持っていなければなりません。

部下に債権を渡しすぎると、リーダーの人望が無くなる!?

疑問その2、接することの少ない部下の信頼を得るにはどうしたら良いのか。

“君主は『刑』と『徳』で、臣下をコントロールするものである。いま、君主がその刑と徳を捨て去って、それを臣下に使わせたらどうなるか。君主はかえって臣下にコントロールされることになる。”
出典:中島孝志著『超訳 韓非子 善をなすために、悪を知る』、62項。

韓非子は、裁量を持ちすぎた部下がその下の人間に恩賞を与えれば、下の人間はみなはその部下に対して恩義を感じてしまうと警笛を鳴らしています。社員の忠誠心が上司から部下に移行すれば、何が起こるかは目に見えているでしょう。

自分に、そして会社に忠義を感じてほしいと思うならば、リーダーはよりメンバーに近い場所で権威を発揮しなければなりません。

そのための一つのアプローチとして中島さんが挙げているのが、社長が自ら給料を手渡しするという方法。給料を渡すタイミングで、メンバーに感謝の気持ちと激励を述べることで、社長のモラルアップをはかれるといいます。

「俺に任せておけ」はダメ!?自分より能力の高い部下で武装せよ

疑問その3、スペシャリスト向きの自分がリーダーになった時、どこまで手を下して良いのか。

“物にはそれ相応の使い道があり、人材もそれと同じである。それぞれを適材適所に置けば、君主は特別なことをする必要がない。

【中略】君主に、「これは私の得意分野だ」というものがあると、物事はあまりうまくいかない。傲慢にそれを得意がると、かえって下のものに騙されやすくなる。”
出典:中島孝志著『超訳 韓非子 善をなすために、悪を知る』、80項。

「リーダーが専門家になりすぎると、部下がそれを利用するような組織になってしまう」というのが韓非子の持論です。ではどのようなリーダーが望ましいのか。

その例として、中島さんが列挙しているのが、豊臣秀吉や、徳川家康、アンドリュー・カーネギーなどのリーダーだち。彼らに共通して言えることは、皆、自分よりも能力のある部下で身辺を固めているということです。

自分が色々と指示を出さなくても、部下が自ら気づき、考え、結果を出す。そうさせてしまうリーダーと言えるでしょう。

よって、大切なことは優秀な人材を適材適所に置き、大局観を持って意思決定をするということなのです。

名誉が欲しい人には名誉を、お金が欲しい人にはお金を

疑問その4:人を上手く説得するには、何が大切なのか。

“説得の難しさは、自分がその内容を十分に理解することの難しさではない。【中略】説得の難しさは、説得相手の心を読んで、自分の説をそれに合わせることにある。”
出典:中島孝志著『超訳 韓非子 善をなすために、悪を知る』、112項。

人を説得する際に重要なのは、相手が本当に望んでいるものを把握することだと説く韓非子。例えば、名誉を求める人間に儲け話を持ちかけたところで響かないし、逆もまたしかりです。リーダーはこのことを肝に銘じて、相手の心を読み、自分の説をそれに引き寄せなければなりません。

また、説得においては、相手の理解度に合わせたコミュニケーションでアプローチをすることも重要だといいます。

例えば、理屈を重視する部下に対しては、フィードバックの際に、何がダメなのか「原因」と「結果」をしっかり説明し、逆に感覚的に理解する部下には、理論よりもイメージを伝えるのが有効でしょう。

誰かを説得するためには、相手の心や思考をきちんと理解することが大切なのです。

あえて、人を信じないことが善行につながる

終わり

「人間を動かしている動機は、愛情でも思いやりでも、義理・人情でもない。ただ一つ『利益』である」と説く『韓非子』。世の中の「悪」の部分を直視した建前抜きの教えは、机上の空論に収まらないという評判を得ています。

世の中はきれいごとでは成り立たないとは、社会に出れば誰しもが痛感すること。あえて「人を信じない」ことで人心掌握の術を抽出する『韓非子』から、学ぶことは多いはずです。

出典;中島孝志著『超訳 韓非子 善をなすために、悪を知る』、三笠書房、知的生き方文庫、2015年。



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