【後編】「仕事は“手段”でも“目的”でもどちらでもいい。大切なのは自分を締め付けずに生きること」ジョン・カビラ

失敗ヒーロー!

2018/11/28
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。前編に引き続き、J-WAVE(81.3FM)ナビゲーターとして30年、その創成期から活躍しているジョン・カビラさんにお話を伺います。ナビゲーターとしての仕事との向き合い方、そしてカビラさんの考える仕事観、マネジメントとは何かに迫ります。

プロの仕事は、リソースをチームでどれだけ共有できるか

――J-WAVEで番組が始まった当初と比べて、ご自身でよくなったなと思う点があれば教えてください。

ジョン・カビラ
1958年11月1日、沖縄県那覇市出身。ICU(国際基督教大学)在学中にカリフォルニア大学バークレー校に留学。CBS・ソニーを経て、1988年J-WAVE開局と同時にナビゲーターに転身し、現在も金曜の「〜JK RADIO〜 TOKYO UNITED」を担当。以後、スポーツ番組MCや情報番組MCなど幅広く活躍中。

ジョン・カビラ:放送時には今でも「このマイクの向こうで、一体何人の方々が聴いてくれているのだろう」と緊張する気持ちは変わっていませんが、対応力は格段に上がっていると思います。例えば、マイケル・ジャクソンが亡くなったとき、生放送の朝に情報が飛び込んできました。「マイケルの功績を称えつつも、彼の活躍した社会的な背景までを5時間半のなかでどう掘り下げ、リスナーにどう提示できるか?」を問われるわけです。

一方で、問われている側の僕らは、どんなリソースや術を持っているか。できれば、リソースは一人に集約させず、共有できていたほうがいい。たまたまリソースを持っている人が、今日はいないから仕事ができないというのは、本来プロの仕事ではないと思うんです。職人さんの世界は別かもしれないですが、共有されない限り、総和として番組のクオリティは上がりません。マイケル・ジャクソンの訃報を伝える時にはチームとして共有しているリソースを駆使して、現地の公共放送のラジオ局のミュージックディレクターにお願いして、マイケルがポップミュージック界において果たした役割と意義、そして彼の光と影の両面をきちんとお伝えすることができたのではないかと思います。

――伝え方で気を使われていることはありますか?

ジョン・カビラ:人には光と影がありますが、影をどう伝えるかというのはひとつのテーマです。いろんなスキャンダルがあったとき、どうしてそうなったのか。マイケルに限らずプリンスの時もそうでしたが、彼らのようにシンボリックな存在にいつも励まされてきた一方、残念なことが起こると、彼らも人間なんだと思い知らされます。たまたま僕は情報源に近いだけで、僕よりマイケルやプリンスに詳しい人はいくらでもいらっしゃいます。だから、権威をもって語るということはないですし、たまたまマイクの前にいるという気持ちで話しています。伝え手として、気持ちを共有しているというのがこの仕事だと思いますね。

誰でもできる仕事。だから、「自分だからできること」を追求したい

――ゲストの方がたくさんいらっしゃいますが、事前にどの程度リサーチしたり、お話を伺ったりされているのでしょうか?

ジョン・カビラ:失礼があってはならないので、必要最低限のことはしますが、過去のインタビュー記事を熟読していくようなことはしません。その方に特化した5時間半なら必要ですが、5分しかない場合はテーマについての素直な疑問や質問をどうやって出すかの方が大事です。そしてゲストの方とはお互いの「前提」をあまり作らないようにしたいので、事前にお話はしないようにしています。ただし、ゲストの方にほとんどラジオの経験がなく、極度に緊張されている場合であれば、話は別です。和やかで朗らかなほうがいいですからね(笑)。

――これまでの経験のなかで失敗といえばどんなことが思い浮かびますか?

ジョン・カビラ:単純なミスですね。以前、アメリカでそろばんと電卓が一緒になったものを商品化した方がいて、ラジオでお話を聞いてみようということになりました。そこでお電話したところ、明らかにアルコールの影響下にあると思われる感じで「その話はいいんだけどさ、妻に逃げられてさ」と突然、切り出されまして。こちらも「お辛い状況かと思いますので、日を改めます」と電話を切りました。生放送でした。後日、一度電話してみたら「待っていたよ!」と別の方が出られまして……間違い電話だったんです(笑)。

――培われた対応力が発揮されましたね(笑)。

ジョン・カビラ:奇跡的な間違い電話でちょっとした語り草になりましたよ(笑)。こういう話をすると職業倫理的に憤慨される方もいらっしゃるかもしれませんが、「命」の現場で奮闘されている、例えば医療関係者や消防、警察関係者の方々とは違い、僕の仕事は人の「生き死に」には直接関わっていない「声」を使った仕事。もちろん日々、真剣勝負ですが、どこかで「どなたにでもきっとできる」と客観視しないと、自分が大層なことをやらせてもらっていると勘違いしてしまうかもしれない。だからこそ、この僕だから、このチームだからできることを、どこまで追求できるのかを俯瞰していないといけない。常に100パーセントの力で肩を怒らせながら困難を突破しようとしても頓挫しますし、仕事を成し遂げる前に自分が倒れてしまうと思うんですよね。

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