【後編】有栖川有栖、恩田陸ら大絶賛! ミステリ界の超新星・逸木裕が大切にしている言葉とは?

思い出す言葉

2016/12/07
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最初はつまらなくてもいいから、とにかく最後まで書ききるのが大事ではないか

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『虹を待つ彼女』は人生3作目のミステリ作品

――逸木さんの経歴について伺います。学習院大学の法学部卒とのことですが、理系的なバックグラウンドはなかったのですか?

逸木 なかったですね。数学は好きだったので勉強はしていましたが、いわゆる理系ではありません。大学卒業後、5年ほど独立系のSIerにプログラマーとして勤め、その後に独立し現在に至るまでフリーランスでやっています。会社員時代は顧客の社内システム開発を主に担当し、人事システムやブラウザで使える出退勤管理システムなどを構築していました。
 
小説を書き始めたのは、中学生ぐらいからです。趣味で書き始め、高校卒業までの6年間ずっと書いていました。初めて書いたのは、当時あった「ファミコン探偵倶楽部」というゲームソフトの勝手なノベライズ版です(笑)。中学校~高校までトータルで6本、うち書き上げたのは2、3本でしょうか。

――それでも、書ききって形にしておられるのが素晴らしいですね。「小説家になりたい」と思う人は多いと思いますが、実際に作品を書き上げる人は限られると思います。自分を律する能力は、以前から高かったのでしょうか。

逸木 いえ、そういうことではないですね。単純に、賞に応募し続けたんですよ。間に合わないと応募できないので、無理やり書いていだけ。賞の締め切りという絶対的な期限があったのが大きいですね。

――なるほど(笑)。当時書いておられたテーマはどんなものですか?

逸木 完全にバラバラです。SFあり、一般小説あり、統一性はないです。ミステリに限ると、『虹を待つ彼女』は3作目になります。

――人生3作目のミステリでこれほどのクオリティのものを書ける……インプットの量はどのぐらいだったのでしょう?

逸木 ミステリ系の本は好きで、中学生の頃から読んできました。あとは、年末に『このミステリーがすごい!』というムック本が宝島社から出るので、毎回買ってはその中のミステリ本を手当たり次第に読んでいました。

あのムック本は、読書ガイドとしてかなり優れていますね。その年の話題作を、幅広いジャンルでカバーできますから。すべての本のトータルだと、人生で計3,000冊ぐらいでしょうか。本好きの人からすれば、決して多くない数字だと思います。

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インターネットの発達によって “書けなくなった” 15年

――中学・高校と順調に書き進んでおられたとのことですが、1999年に大学に進学されてから2014年まで実に15年ものブランクがあると伺いました。理由はどんなところに?

逸木 やはりインターネットの発達ですね。当時は小説を書いても他人に発信するすべがあまりなかったのですが、インターネット環境ができて自分の文章を読んでもらえるようになり、そこで満足してしまいました。。ただ、それでもずっと「小説を書きたい」という思いは持ち続けていましたよ。

――なるほど。2014年に執筆を再開できた理由は、プログラマーという仕事とも関わりがあるのでしょうか。

逸木 あると思います。プログラミングと小説の執筆に共通するのは、「手元にある間は終わらない」「とりあえず納品すること」だと思います。作り始めると、幾らでも改善・改稿作業ができてしまうんです。フリーランサーは期日までに製品を納品することが最も大事で、それが出来ない人は消えていきます。なので期日までに必ず納品する癖がつきました。

そうしているうちに「小説も同じじゃないか?」と思うようになりました。最初はつまらなくてもいいから、とにかく最後まで書ききるのが大事ではないかと。そういうスタンスを取って久しぶりに書き始めたら、1本書き上げることができました。階段を登った感覚がありましたね。その作品は、一次選考にも残らないで落ちちゃいましたが。

――15年ものブランクがあって1本書き上げるのも、賞にしっかり出すのも、一次選考落ちしてもメゲないのも、素晴らしいメンタルタフネスですね。

逸木 それこそ、前編でも触れましたが松下幸之助さんの言葉ですね(笑)。「失敗したところでやめてしまうから失敗になる。成功するところまで続ければ、成功になる」ということです。勝つまでじゃんけんをする、ということですね。1回でも勝てば、それは成功なわけですから。

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