「私の年収、低すぎ…?」の原因はデフレ経済?『キミ金』の作者・井上純一さんに聞きました

「働く」を考える。

2019/08/29
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インフレ経済の中国でいま起こっていること

――デフレ経済の日本と、インフレ経済の中国では、お金の流れはどのように違いますか?

日本では、よく「企業が内部留保ばかりして労働者に還元しない」という不満が聞かれますよね。デフレ社会ではモノの価格、つまり価値は下がり続けます。つまり、わざわざ資本を投下して価値の下がりかねないモノを生産したり、買ったりするよりも、今はお金をお金のまま持っていた方がリスクは少ないわけです。

――逆にインフレ社会であれば?

モノの価格が高まるので、相対的にお金の価値は下がり続けるということです。だから積極的に生産したり、投資したりしてお金をモノに変えていくことが有利になります。

――『中国嫁日記』でもおなじみ、月(ユエ)さん(井上さんの奥様)の出身国・中国ではまさにインフレが続いていますよね。

いまの中国は、まさにインフレ社会の典型例ですね。実は僕、『キミ金』は増刷かかって現在5万部、『中国嫁日記』シリーズは累計98万部売れていて、掲載元のブログからの収入もあるのですが、それでも月さんの親族の中で僕がもっとも年収が低いんです。

1番上のお姉さんは石材関連のビジネスを、2番目のお姉さんは農家を営んでいますが、二人とも設備投資がすごい。巨大な脱穀機や、巨大な農機、トラクターなどを購入し、それを貸し出すことで利益を高めています。3番目のお姉さんはタクシー会社を営みながら、お金があるとすぐ不動産を買うので不動産業が本職のようになっています。それもこれも、中国がインフレ経済だからです。

――インフレ経済だからこそ、モノへの投資が利益につながりやすいのですね。そのうえで、ビジネスの才覚に優れているのだとも思いますが。

才覚以上に、いまの中国ではモノへの投資が社会常識になっていると思います。例えば以前、僕が住んでいた中国のマンションは、たった1年で価値が2倍になりました。そんな環境にいたら、「お金があるのにマンション投資しないのはバカだ」という考えに当然なります。とにかく、いまの中国では、お金をお金として持っていることが不利だから、儲けるためにみんな同じようにしている。特別なことではないんです。

「経済学において、消費は正義」

――個人の生活基盤の発展や事業成功のために、いかに国の経済が重要かわかりました。

そうなんですよ。皆さんの会社が大きくならないのも、給料が上がらないのも、皆さんの努力不足ではありません。日本のデフレ経済のせいであり、根本的には政策のせいです。というのも、生産性向上のためには社員の賃金を高めないとならない。でも、デフレ社会ではモノの価値が下がるから、企業は投資せずお金をお金のまま置いておきたいのだから、企業のアクションで状況を打開するのは難しいですよね。ならば、国が消費意欲を刺激するような政策を打っていかないといけない。そのために日銀が量的緩和を行なって市場にお金を流したのに、消費税増税という逆行する政策を打っているがために景気回復がストップしているのです。

――ただ、そういった環境にあっても成功する人はいて、SNSなどでの精神性高い発言を眩しく感じます。

社会環境に関係なく成功できる人間は確かにいますが、そんな数少ない成功者と自分を比較しても疲れるだけだと思います。「苦しい状況でも成功している人はいる。自分は努力不足だ」と。確かに、僕も月さんの親族以上に稼ぎたかったら『ONE PIECE』や『NARUTO』みたいな大ヒット作を描けばいい。でも、そんなの無理じゃないですか(笑)。

――無理がありますね(笑)。

僕自身も、『キミ金』の仕事を通じて経済を知ったことで、そんな理由でいまのデフレ社会を肯定するのは間違っていると考えるようになりました。2、3年ならともかく、20年以上もデフレを脱却できないのは世界でも稀です。逆に、日本という財政基盤の確かな国でなかったらとっくに潰れるような異常事態なんです。さすがに国民の努力や責任を問うのもおかしいでしょう。

――「政策のせいだ」といって何かが解決するわけではないですが、「努力不足」などの自己責任のストレスからは解放される気がします。

それでいいと思いますよ。経済を知ることは、働く私たち自身の心の安寧につながります。例えば、国が借金をして市場にお金を流すことで経済は活性化しますが、それは私たちの借金も同じです。借金をすることで疑似的に市場のお金は増え、使うことで経済を促進するのです。経済学において、消費は正義です。高い支出があっても、社会の役に立っていると思えば少し救われます。社会福祉を受けている方も同じく、支えられることで社会に貢献しています。学ぶことで、お金にまつわる怖さや罪悪感がなくなり、人生を豊かにしてくれる学問だと思いますね。


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