2017/08/23 公開

緻密なエクセルアート職人、堀内辰男。モチベーションの鍵は「3年刻みの10年計画」

「働く」を考える。

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ビジネスシーンに欠かせない表計算ソフトとして知られる「Excel」。そのExcelを使って緻密な絵画を描く、Excelアートの第一人者が堀内辰男さんです。なんと絵画未経験にして60歳の定年を機にExcelで絵を描き始めて、現在77歳。とてもExcelを使って描かれたとは思えない緻密な描写は現在も進化中。飽くなき挑戦を続ける堀内さんにそのモチベーションの維持方法について伺いました。

技術の発明と、絵の上達それ自体がモチベーションだった初期。

――Excelで絵を描くということだけでも驚きなのに、堀内さんの絵は緻密で美しい作風が特徴です。ここまで上達するには相当量の練習をしたと思われるのですが、いかがでしょうか?
 
堀内辰夫(以下、堀内) いや、練習をしたという意識はないですね。というのも、Excelアートというものは私が世界で初めて描き始めたものだから、毎日が試行錯誤。「次はどんなことができるだろうか?」と色んな技術を試していく。毎日新しいテクニックを開発して、できることが増えていくというのは、それ自体がモチベーションなんだよ。

――毎日の試行錯誤それ自体がモチベーションになるというのは理想的ですね。
 
堀内 そしてExcelで絵を描くテクニックを見つけたら、次は絵それ自体をグレードアップしていくフェーズになるんだ。そうすると毎日の上達が一つの目標でありモチベーションになってくる。でも、ただ漠然とやっていてもしょうがないから、10年で鑑賞に耐えうる絵にするという目標を最初立てたんだ。

最初に立てたのは、3つのフェーズに分けた「10年計画」。

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――その10年間はどのように使ったのでしょうか?
 
堀内 最初の3年間はExcelに馴染みながら、絵にも馴染むフェーズにした。もともと絵を描いていたわけじゃないからね。毎日手当たり次第にその辺に咲いている花や、家の庭にある花なんかを描いていた。それと同時にExcelでできることも増えてきて、最初は線しか引けなかったのが、色を塗れるようになり、グラデーションを使ったり透過性を駆使したりするようになっていった。最初の3年は実に充実していたね。

――なるほど。
 
堀内 そして次の3年間は、最初の3年で描き貯めた絵を組み合わせて、風景などのもっと「絵」らしいものを作ろうという時期。でもチューリップやひまわりなんかを組み合わせてもなかなか良い絵にならなくて、ずっとトライアンドエラーの繰り返しだったな。

――どこかでブレイクスルーがあったのでしょうか?

堀内 トータル5~6年目くらいの頃。エクセルで描いた絵のコンテストがあることを息子から聞いて、応募するにあたってそれらしい絵を描かないといけないと思って描いたんだ。やっぱりなかなかいい絵にならなかったんだけど、私の故郷のである信州上田の原風景である城のお堀と桜を描いて応募したら。なんと最優秀賞になっちゃった。描き始めて5、6年かかったけど、そこで一気に元気になっちゃった(笑)自分の絵の方向性が定まってきたのがその時。

――外部の評価というきっかけがあったんですね。
 
堀内 うん。そして次の3年間は、絵のクオリティーをブラッシュアップする期間で、残りの1年間は予備期間として使ったよ。

有名になった後も人生は続く。絵画の名作と向き合い、モチベーションを高める。

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――その10年計画の後はいかがでしたか?
 
堀内 脇目も振らずというわけでもないけど、ひたすら絵を描いたね。今はもう始めてから17年目くらいか。ありがたいことにExcelで絵を描くじいさんとして、いろんなネットの記事や雑誌、テレビで紹介してもらって、有名になったんだけど、その後がちょっと大変なんだよ。

――大変というと?
 
堀内 賑やかなのは有名になって最初の3年。その間はいい気になっているわけだから、モチベーションなんて考えずに絵を描いてりゃいいやという時期。それが終わったのが今。最初の頃は表計算ソフトで描いた絵というもの自体が珍しいけど、もうそんなに新鮮に見られることも無くなっちゃった。あとは「本当に良い絵かどうか」ということが問われるようになってくるんだ。

――なるほど。そこで堀内さんはどのように絵と向き合ったのでしょうか?
 
堀内 美術大学を出たわけでもなく、60歳になって突然絵を描くようになったわけだから「良い絵」というものがどんなものなのか分からない。だから「これは良い絵である」と言われてる作品のマネをして模索しているのが今なんだ。若冲(じゃくちゅう)はマネできないと思ったけど、旅行先で観た平山郁夫(ひらやまいくお)の巨大な絵に触発されて「パソコンでどれだけデカい絵を描けるだろうか?」と挑戦してみたよ。鞆の浦(とものうら)の風景を描いたんだ。

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▲エクセルで描いた鞆の浦の風景。A3の用紙を35枚つなぎ合わせて作成した

持っているもので工夫する楽しさ。そして新しい挑戦は続く

新緑の山の絵を描こうとしてるんだけど、描けないんだ。絵が緻密になっていくと、ファイルサイズが800メガバイトにもなっちゃって、まともに動かなくなる。保存しても読み込みでExcelが落ちちゃうからもう開けなくなってしまう。どうにか200メガくらいに収めないといけないんだけど、それでも緻密な絵を描きたいから、ファイルサイズを増やさずに描く新しいテクニックを編み出してるよ。

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▲浴衣を着た女性の映る絵はだいたい150MBほど。テクニックを駆使して容量を抑えたそう

――まだまだ挑戦は続くんですね。
 
堀内 もちろん高性能なパソコンを買えば問題なくできちゃうことなんだけど、定年後の第二の人生の楽しみとしてやってることだから。できる範囲で工夫してどこまでやるかだね。鞆の浦の風景だって、3万円のA3プリンターで印刷したものを張り合わせて作ったんだから。私はExcelで絵を描く教室をやっているんだけど、そこに来る人たちは孫のお下がりのすごく古いパソコンを持ってきたりするんだ。でも、そのパソコンで十分できるよって言って教えてる。それで実際に「こんな良い絵が描けたよ」ってみんな言って喜んでるんだ。結局、私がやろうとしているのは、そういうことなんだと思う。

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