【後編】「誰でも発信できる時代。だからこそ、借り物の言葉は使いたくない」堀潤(ジャーナリスト・8bitNews主宰)

逆境ヒーロー!

2019/03/13
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望む未来を伝え、同じ志を持つ人から力を借りる

――NHK時代は組織と戦っているエピソードも多く見受けられましたが、フリーランスになってそれぞれの得意を生かした協力体制を意識するようになったのですね。

堀:そうですね。NHKにいた頃は局内とも他局とも戦っていたし、新聞社もライバルだと思いながら働いていました。でも、それじゃダメだって気づいたんです。自由な立場になったいまは、みんなで協力すればいいと思っています。テレビには映像で伝える力があり、IT企業にはSNSやウェブでの発信力がある。文字や写真は新聞社や出版社が強い。戦うのではなく、それぞれの得意分野を持ち合わせてみんなで協力すればいい。

だから退職してすぐに『8bitNews』の仲間と企画書を持って、GoogleやYahoo!のようなネット事業者からテレビ、新聞、出版などいろいろなメディア企業を訪ねました。そうして、僕たちの考えに共感してくれた人が集まって今の仕事に繋がっています。僕たちがさまざまなスキルを持った人たちのハブのような存在になって、「僕らをゲートにしてもらえれば、いろんなメディアに発信できますよ」と伝えるんです。僕らと同じ志でつながっている人たちと仕事ができているので、忖度や我慢がない非常に働きやすい環境ですね。個人の発信がメディアの連携でマスに対して伝わる仕組みづくりをしてきたのがこの5年間でした。

――そもそも同じ志を持っている人たちと仕事をすれば、忖度や我慢は生まれないということですね。それはある意味、堀さん流の組織マネジメント術ですよね。

堀:とはいっても、僕にマネジメント力は皆無です(笑)。経理とかスケジュール管理とかとても苦手なんです。でも僕は「こんな未来が見たいですよね。やってみませんか?」と自分のやりたいことを伝えるのはできる。苦手なことは人に任せて適材適所でやっていく。僕の思い描く未来や考え方に共鳴してくれた人たちが、それぞれの現場で動いてくださることで『8bitNews』は運営できています。

あとは、常に新しいものをつくっていくということは意識していますね。有り難いことにNHKに入ってから今日に至るまで、関わっているのはほとんど新番組なんです。他の誰かが長い時間をかけてつくったものを「ぶっ壊せ!」と改革していくことも大事ではありますが、労力がかかりますし僕はあまり魅力を感じません。「あんなのダメだよね、だから自分たちで新しいものをつくろう」という風に気持ちを切り替えたほうが、知恵やアイデアを出しやすくなってよりいいものをつくっていけるんですよね。

他の誰かが取ってきた情報で、飯を食いたくない

――常に新しいものを創造していくために、どのような工夫をされていますか?

堀:数年前、式年遷宮の時期に伊勢神宮についてのドキュメンタリー映画の監督とイベントに登壇しました。1500年間、毎朝つづけられている神事があるんですが、ご飯を炊くための火を人間の手で起こしていたんです。それを見た時、火を起こすという人間が遥か昔からやっていたことさえ、僕はやらなくなってしまったんだなあと思ったんです。いつの間にか誰かがつくった、誰かが起こした火で生活しているなって。情報もそうです。情報を簡単に共有できる世の中ですが、誰かが取ってきた情報で飯を食いたくない。誰でも言葉が生み出せるけれど、借り物の言葉を使いたくないんです。

例えば北朝鮮のことについて情報発信をするにしても、「あなたは金正恩氏と直接会って話したのですか?」と僕はついつい思ってしまう。本来は「〜と分析される」「〜とみられる」という語尾が必要な情報。しかし、それらがいつの間にか「〜だ」と断定的に語られはじめてしまう。借り物の言葉を使った情報がいっぱいあって、その最果てでは誰かのデマで誰かが不幸になって、さらに最果てにはプロパガンダとなって戦争が起きてしまっているのでは、と感じてます。

ニュースではよく「韓国が〜」と報じるけれど、一体それは韓国の誰のことなのか。大きな主語ではなく、できるだけ小さい主語で語ることを大切にしています。そこを大切にしていれば、誰も見たことのない現場の誰も知らない人の話を救い上げて、借り物の言葉ではなく、僕らしか入手できない情報を届けることができるんです。

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