2016/10/18 公開

【前編】朝日新聞メディアラボ室長・堀江隆さんが「決断」の時に思い出す言葉とは?

思い出す言葉

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「変える勇気 変えない冷静さ 見分ける英知」。ラインホルド・ニーバーというアメリカの神学者の言葉で、『ニーバーの祈り』として知られているものです

朝日新聞社を変えていく決意

――色紙に、力強い言葉を書いていただきました。

堀江隆(以下、堀江) 「変える勇気 変えない冷静さ 見分ける英知」。ラインホルド・ニーバーというアメリカの神学者の言葉で、『ニーバーの祈り』として知られているものですね。原文はもっと長いのですが、そのエッセンスです。

政治部の記者だったころ、国会の審議を聞く機会が多くありました。ある議員が審議のなかで引用した言葉だったと思います。その方の発言内容よりも、この言葉そのものに強い印象を受けました。

――いい言葉ですね……どのような時にこのフレーズを思い出されますか?

堀江 新規事業に取り組む部署にいることもあり、節目で思い出しますね。新規事業をやるということは、ある意味で朝日新聞社を変えていくこと。場合によっては事業を廃止したりしながら、新しい領域に踏み出していかなければなりません。

一方で、朝日新聞社というブランドが多くの方に受け入れられているのは、長い歴史があるからです。長年続いてきた新聞への信頼感も支えです。そういう意味で、変えてはいけない部分は当然あります。新聞をとりまく環境が厳しくなるなか、メディアとして成長するには「どこを変え、どこを残すべきなのか」をしっかり見極める必要があります。

――その見極めは、難しいですね。

堀江 難しいです。そう感じる瞬間はたくさんあります。新しい挑戦にためらうことも、自分たちの強みを見失いそうになることもあります。そんなとき、この『ニーバーの祈り』を思い出しています。

――逆に、堀江さん自身の言葉が誰かに影響を与えた、という経験はおありですか?

堀江 そう聞かれると難しいですね(笑)。そうですね、「恐れずやろう」ということはよく言っていますが、メディアラボのメンバーは言われずとも皆やっていますからね。

――とはいえ、例えば2016年4月に朝日新聞社はコンテンツマーケティングのサムライトを買収しました。その際は、かなり大きな決断が求められたのではないでしょうか。

堀江 いえ、それも特に私が号令したわけではありません。すごく自然な形で、お互いのメンバーが話し合った結果ですね。サムライトの経営陣と話し合っていくうちに『これは一緒になった方が成長できるな』と、双方ともに気がついたわけです。こんな出会いって滅多にないですよ。むしろ、私の号令だけで動いていたなら、うまくいかなかったでしょう。

――メディアラボ立ち上げの前に、リスクをとることでうまくいったことはありますか。

堀江 随分昔になりますが、入社2年目で横浜支局にいた頃、『リクルート事件』がありました。私のいた支局が、この事件について最初に書いたんです。

――えっ、あの事件を取材されたんですね!

堀江 はい。当時、私は取材チームの末席にいましたが、記事を出すときは相当に緊張しました。もちろん記事を書くときには真剣に取材し、点検しますが、どんな反応を招くのか、正直紙面に載るまでわからない部分があります。当初は「グレーな汚職事件」ぐらいに思っていたのですが、やがて政界に広がり、最終的には政権が倒れるくらいの一大事件になりました。最初の一歩を踏み出すとき、当時のデスクや支局長が「よし、これで行こう!」と言ってくれたのは大きかったですね。

――現場時代、それも若い頃からとんでもないリスクを取っておられたんですね。いまの立場におられるのも納得です。

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堀江隆(ほりえ・たかし)
朝日新聞メディアラボ室長。1987年朝日新聞社入社、横浜・甲府支局を経て東京経済部・政治部などで首相官邸、自民党、外務省、金融、財務省、自動車、流通などの担当記者。経済・政治両部でデスクを経験。2012年に東京編成局長補佐(朝刊編集長)、2013年東京経済部長。2015年から現職。
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マネたま編集部
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