10歳で家を出され、57歳で原付日本一周の旅へ。激安ワンコイン食堂を切り盛りする「はっちゃん」の経営哲学とは?

「働く」を考える。

2017/12/07
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83歳の「はっちゃん」と呼ばれるおばあちゃんが、群馬県桐生市にて一人で切り盛りする激安食堂「はっちゃんショップ」。500円で好きなだけご飯やおかずをビュッフェ形式で食べられるという、その驚きのコストパフォーマンスから各メディアでも話題のお店ですが、どうしてこのようなお店を始めようと思ったのか? そしてどうしてこの値段で料理を提供できているのでしょうか? 今日も地元の皆さんや遠方からのお客さんがひっきりなしに訪れる店内で、はっちゃんにお話を伺いました。すると、そこには驚きのストーリーがありました。

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▲開店前の様子。500円払えばこれらはすべて食べ放題

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▲もちろんご飯や味噌汁も食べ放題。白いご飯だけでなく赤飯もある

いじめられていた子ども時代。57歳の日本一周で思い出した、あの頃の夢。

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――はっちゃんはどんな子どもでしたか?
 
生まれも育ちもここ群馬の桐生市なんだけど、貧乏な家に生まれてしまったから、10歳の時に奉公に出されたんだ。その奉公先では「学校にも行っていないバカ」と同い年くらいの連中にいじめられていたよ。だから将来は人に喜ばれることがしたいなーと思っていたんだ。

――その後、結婚されてからもお仕事をされていたそうですね。

専業主婦になるなんて余裕はなかったね。旦那が鉄工所で働いて、私は色んなところで働いてた。見よう見まねでミシンで色々縫ったり、魚屋さんで働いたり、パチンコの機械を作る会社でお茶出しの仕事なんかもしていたね。

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――いろんなお仕事をされる中、この「はっちゃんショップ」を始める直接的なきっかけは?

62歳の頃、お茶出しをしていたパチンコの会社が潰れてから、お惣菜を作ってここで売ってたんだ。そしたらお客さんに「これだけ美味しいお惣菜がいっぱいあるなら、ご飯と味噌汁も出せば食堂できちゃうんじゃない?」って言われて、やってみることにしたんだよ。

それと、57歳の時に、群馬から出発して日本一周旅行をしたんだ。その影響も大きかったかな。

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▲スーパーカブで日本一周したときに日本各地でもらったスタンプ

――どうして日本一周を?

みんな遠足とか修学旅行に行って楽しい思い出を作っていたのに、私は10歳から学校に行ってないからそういう経験がなかったんだ。だから、このままでは死にたくないなと思ってた。自分の子どもが全員無事に結婚したら、自分一人で修学旅行をしたいって思っていたんだよ。15年間かけて300万円貯めて、お父さんと子どもにそれぞれ100万円もらって、全部で500万円持って原付で出発したんだよ。

――えっ、原付で!?

そう。字が読めなくて、高速を走っちゃったこともあって危なかったね。自分は邪魔をしていないのに、トラックがクラクションを鳴らしているなと思ったら、料金所で注意されたよ。…うん、いろんなことがあった。福岡でホテルが見つからなくて困っていたら「うちに泊まりなさい」と言ってもらったこともあったね。そこで「人に喜んでもらえることがしたいな」と改めて思ったんだ。500万円持って出かけた旅だったけど、結局300万円余ったから雲仙普賢岳噴火の基金や、色んなところに寄付したよ。

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――寄付しちゃったんですか!? それはなかなかできることじゃないですね。

そうだね。たとえ10円でも寄付できない人はできないからね。

お店は一人で切り盛り。毎朝7時半から準備をして、夜に買い出しへ

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▲材料の買い出しから料理まですべて一人でこなす

――お店の準備は何時からしているのでしょうか?

毎朝7時半ごろから準備しているね。

――パートを雇うつもりはないんですか?

うん、本当はもう歳だから、一人くらいパートがいてもいいと思うんだけど、前に雇ってた人が泥棒しているところを見てしまってから人を信頼できなくてね…。「もうイヤだ」と思っちゃったんだ。今は、忙しい時に友達が手伝ってくれたりするけどね。

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▲お客さんからよく食べ物を与えられている野良猫。後ろのバイクは日本を一周したときに乗っていたスーパーカブ

――買い出しも一人で?

はっちゃん 買い出しは夜中に自分でバイクを走らせてスーパーまで行ってるよ。この辺の八百屋さんはみんなお店をやめちゃったからね。

――なるほど。夜に行くんですね。

お客が夕方の5時くらいまでいるからね。食後はお茶飲み場になってるからさ。

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▲はっちゃんを慕って集まる常連さん。みんなのコミュニケーションの場にもなっている

――じゃあメニューは毎日スーパーの仕入れ次第で変わるのでしょうか?

そうだね。毎日来てくれる人が多いから、2つか3つは変えるようにしているね。スーパーに行って安い食材があれば、それを使うようにしてるよ。

――人気メニューは?

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煮卵かな。みんなお土産として買っていくんだ。

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常連のお客さん「赤飯も人気だね。それと、はっちゃんはもともと魚屋で働いていたから、煮魚も美味しいよ」

お客さんが来れば来るほど赤字。それでもお店を続ける理由とは?

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▲食べ物に集まるお客さん。たまに北海道や九州などの遠いところからくるお客さんもいるのだそう

――毎日どれくらいのお客さんが来るのでしょうか?

一日にくる客は30人くらい。客が来れば来るほど赤字だから、そんなに来ない方がいいんだ(笑)。自分の健康のために働いてるようなもんだからさ。動かないとダメだから。

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▲500円は直接はっちゃんに手渡すスタイル

――お客さんが来れば来るほど赤字なんですか?

そうだよ。500円じゃこんだけのものは食べられないよ。毎月7万円くらい赤字で、それは年金から出して補填してるんだ。それで17年くらいお店をやっている。65歳からやっていて、今もう83歳だからね。お金はもういらないと思っているからさ。貯めるつもりがないからやっていけるんだ。

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▲開店してからもお茶をついでまわったり、食器を片付けたり休みなく動き続けるはっちゃん

――健康のためも兼ねているとはいえ、赤字でやっていくのは大変じゃないですか? どうして値上げしないんですか?

いいことをして死んでいければいい。みんなに幸せを与えて、何分の一かは自分に戻ればいいなと思っているんだ。

――なるほど。お休みが欲しいと思ったことはないのでしょうか?

ここがいいね。ここでみんなと話してる方が、旅行より楽しいよ。「お店をやるお金で旅行した方がいいんじゃないか?」と言われることもあるけど、実際に旅をする以上にいいことがあるからね。このお店をやっていると。お客さんが来て「うまいな~、500円で安いな~」と喜んで帰ってくれる。その喜んでる姿を見るのが大好きなんだ。

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▲12:30くらいに料理はなくなってしまうが、毎日くる常連さんには食べる分を残してあげているという

自分は子どもの頃に奉公先で散々バカにされて、泣かされてきた。その時に「今に見てろ、俺は俺で学校に行ってなくても、誰にもできないことをやってやるぞ」と思っていたんだ。それで今こうしてやれている。やるぞと思っていれば、できるものなんだよ。

――そうなんですね。ちなみに現在83歳で現役でお店に立ち続けているわけですが、健康を維持するためにやっていることはありますか?

毎晩マグロの刺身を食べているね。魚屋さんにいたせいかマグロが大好きなんだ。どんなに雨降っていてもマグロだけは買いに行くよ。

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――ありがとうございます。最後に伺いたいのですが、お店をやってて一番大変だった時はどんな時でしたか?

お客さんが魚の骨を喉に引っ掛けた時だね(笑)

――シリアスな話になるかと思いきや(笑)

いやあ、みんなで慌てたんだけど、どうにもならないから医者に行ってもらったよ(笑)

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