震災後、スパリゾートハワイアンズ躍進の秘訣は福島ならではの「きづな」にアリ

福島で、〈仕事を作る〉ということ(第一回)

2017/10/25
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震災以後の福島の観光には「連携」がある

――現在、きづなリゾートだけでなく、様々な組織や企業が福島を観光地として盛り上げようと奮闘しておられます。震災以前と以後で、福島の観光は果たしてどのように変わったのでしょうか。
 
下山田 観光事業、レジャー産業は今、急速に発展してきています。その秘訣の一つには、震災以後の連携が挙げられると思います。例えば、ハワイアンズに一番近い観光地は湯本温泉なのですが、そこはまだ震災前のお客様の数には達していないんですよね。だからこそ、湯本の街と協力しながら、現在、2デーパスといって、ハワイアンズに2日間ご入場いただけるチケットを作ったりしています。身近な常磐湯本地区との協力、それから行政の力も借りて、それぞれと連携をとりながらお客様を呼び込む体制を整えています。それは湯本地区だけではありません、いわき市や県の様々な観光スポットやレジャー施設と手を組みながらお客様が行き来できる環境をどうにか作れないかと考えるようになりました。これが主に震災以後の福島の観光に起きた変化ですね。

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――それぞれの観光地が連携をとって観光客の動線を作る試みをされてるんですね。
 
下山田 はい。連携を深めることで、地域との相乗効果を生み出さなければ福島の観光は成り立たないと考えています。福島県ってかなり広い地域なんですよね。三つの区域に分かれてるんです。仙台まで行く浜通りと、新潟に近い会津、それから中央部の中通り。それぞれに特徴がありますから。会津はもちろん、歴史的な街として有名ですし、中通りは果物が有名なんですね。そういうところとのタイアップはとても大事なことです。

――県外との連携はどうされているのでしょうか?
 
下山田 被災を受けたのはもちろん福島だけでなく、宮城、岩手も大きな被災を受けました。福島にお越しいただいて、宮城や岩手にも足を運んでいただく、そのような動線も考えなければならないと思っています。修学旅行はいま、そのような動線ができつつあります。未来ある高校生が、こうして福島に来てくれて、福島の楽しさを知ってくれれば嬉しい限りです。そのためにも、我々が「ワクワクプロジェクト」で自分たちの技量を常に磨き続けて、きちっと受け入れなければならないと思っているんです。

――震災以後、お互い手を取り合って協力体制を築くようになったのですね。
 
下山田 そうです。ただ、まだ完全とは言えません。これからもっとその体制を強固にしていくべきだと思うんです。ハワイアンズも、今、「随分と調子いいんじゃないの?」って聞かれるんですが、我々は自分たちが良ければそれでいいとは思ってません。今でもやっぱり、風評被害は続いています。外国の方も福島と聞くだけで、怖がって足を運んでくれない。まだまだ、福島=原発=危ないっていう感覚が強いんですね。それを払拭するためにはお互いが連携しながら、福島全体の観光というレジャー産業を盛り上げていかなければならないと考えています。

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炭礦の時代から逆境を生き抜く力がDNAとして埋め込まれていた

――スパリゾートハワイアンズといえば映画「フラガール」が有名です。まさにあの映画を見ると、常磐ハワイアンセンターの頃から、逆境を生き抜く力をお持ちになられていたのだなと感心させられるばかりです。この地に生きる人の逆境を生き抜く力とはいったいなんなのでしょうか。
 
下山田 『フラガール』の映画のシーンで、山崎静代さんの演じた女の子のお父さんが炭礦で亡くなる場面がありますよね。遺された娘さんを、炭礦の長屋に住んでる人たちがみんなで助けるってストーリーがあったと思います。まさにあの通りで、炭礦の街に生きる人々は何かあった時に助け合う力を持ってるんですよね。炭礦は地中に入って石炭を掘る仕事ですよね。そうすると、掘ってる過程でいろんなものがでてくるんです。常磐炭礦はとくにお湯が出てきてしまう。それからガスも。そんな高温多湿で危険な職場環境ですから、時と場合によっては崩れ落ちることも多々あったわけです。非常事態が起きることが日常のようだった。なので、そういう危機に面した時にどのような行動をとればよいのかDNAレベルで身についているのが、この地域の方々なんです。それは今回の震災の時にも感じました。

――なるほど。災害の規模は違いますが、日常のなかで急に非常事態が起きることへの対処法、心構えが感覚としてあったのですね。
 
下山田 常にそういうことが起きうる。それが日常というものなんだという感覚はみなさん持っていたと思います。私も、そのような話を年上の方から聞かされて育ちましたから。炭礦の用語で「一山一家」というのがあるんですね。炭礦の山は一つの家族なんだ、と。何かあった時には協力するんだ、と。「一山一家」の伝統が語り継がれているのが、逆境に強い大きな要因だと思います。

――ところで福島の面白さってどこにあるんでしょうか。
 
下山田 福島は東北なので、東北人っていうのは人がいいんですよね。困っている人を見かけたら何かできないかお声をかける。過剰に優しくて、親切な人がとても多い県だと思います。そういう人間的な特徴が、まず福島の面白さに繋がっていると思います。ですから県外の人は、福島の土地に来ると安心する、福島の人と話すとホッとする、とよく話されます。我々はその風土を意識したおもてなしサービスを提供することにしてるんです。「ワクワクプロジェクト」はその一環ですね。

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――まさに観光レジャーに適した人間性が根付いてる地域だってことなんですね。
 
下山田 そう思います。あと、綺麗なところが多いというのも福島の誇りです。県のキャッチフレーズは「うつくしま、ふくしま」となっているんです。海も山も、大きな湖も、見所はたくさんある。美味しい食べ物だって飽きないくらいに豊富。それでいて、人が良い。これが福島の面白さを作ってる全てなんじゃないでしょうか。

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▲取材当日も宿泊施設はすべて満室だった。

――今後さらに「きづなリゾート」が盛り上がるためのステップとはなんでしょうか?
 
下山田 まず、忘れてはいけないのは、我々がここまでやって来れたのはたくさんの方々のご支援を頂くことができたから、ということです。感謝の気持ちを忘れずに、ずっと同じ気持ちでお客様に接する。震災以後のハワイアンズの根本に根付いている考えですね。その上で、今後の計画については、ハワイアンズ未来化構想「アロハプロジェクト」というのがあります。その第一弾で今年の7月に日本一長く、日本一高いボディスライダーを作りました。正直言って、とても良くできています(笑)。スリル感が満点。ですが、お客様には好評で、待ち時間が非常に長いアトラクションの一つです。これをベースに付加価値を付けていきたいなと考えています。

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――付加価値というのは、エリアをもっと拡大していくということですか?
 
下山田 その通りです。エリアをどんどん拡大していって、プールのドームエリアと一体化し、食のエリア、休憩エリア、キッズゾーン、そういったものをここに追加していければなと考えています。

――震災から見事に再生を遂げ、次のステップに向かっていく際に必要なマネジメント力とはなんでしょうか。
 
下山田 ハワイアンズには52年の歴史があります。それは言葉を変えれば、実績でもあります。そのおかげで、ハワイアンズに行って楽しかった、もう一回行きたいと思って頂けるわけです。そのような過去に培った経験は受け継いでいき、継続すべきところは引き続き、とにかくやり続けるという根気が必要だと思っています。
ですが、今、世の中は急速に変化を遂げていますよね。情報化社会は世界を変えていっています。そうした新しさに対応できる能力も持たなければならない。チャレンジは恐れず、していくべきだと思っています。
変えるべきところは変える。継続すべき部分はきちっと守る。何を変え、何を守るのか見極めながら、融合させていく。その眼が必要になってくると思うわけです。それに加えて、人の育成もしなければならない。将来の進むべき方向性や、今やるべきことを、中心となって舵取りできるマネージャーやグループリーダーを育成していくことが長い目で見たときの課題だと、私は感じております。

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