【後編】「人が夢を叶えるのは、自分のことのように嬉しい」トキワ荘プロジェクト・福間夕香

「働く女性」の未来像

2016/12/13
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漫画家になるために必要なステップとは?

――入居者の方のマイルストーン設定はどのように決定されているのでしょうか。

福間 本人に「次はどうする?」と聞いて決めていますね。「次はこの賞に応募します」など本人のなかでは決まっていることが多いので、こちらから「こうしてみたら?」と提案することは少ないです。ただ、「ちゃんと考えて行動しないと3年なんてすぐに終わってしまうよ」と声をかけることはしますね。トキワ荘プロジェクトに入居前や入居間もない人ほど、「それはどう考えても無茶だよ」という目標を立てる傾向にありますね。

――例えば「今年デビューする」といったものでしょうか。 

福間 デビューもありますけれど、今までに描いてきたペースと比較して1年間で描こうとしている目標ページ数があまりにも膨大だったり。これまでの成長曲線を無視して一気に高い目標を目指してしまいがちなんですよ。

――「早く一人前にならなきゃ」と焦る気持ちがあるのかもしれませんね。

福間 焦りはあると思いますよ。「漫画家です」って胸を張るのと「漫画家志望者です」って胸を張るのには大きな差があります。何かしなきゃ、早くやらなきゃって。でもそれで浮き足立っても空回りしてしまうので、冷静な目標設定が大事ですよね。

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トキワ荘プロジェクト主催のマンガ講習会『MANZEMIプロ講座』は「数十年、マンガでメシを食っていくために」を一貫したテーマにしている。

――入居してから目標の立て方が変わるのでしょうか。

福間 入居者の中には「トキワ荘プロジェクトに参加したことで、考え方が変わった」というお話をされる方が多いのですが、背伸びせずに目標を設定し、着実にそれに向かうようになるのも変化の1つだと思います。

入居審査時には、まだ十分に力が伴っていないと感じる人から「今年中に連載を検討してもらいます」という目標を聞くと、「まずは賞の受賞を目指すところから始めたほうがいいのではないか」と伝えます。しかし、その人の周りに漫画を描いている人がいなかったりすると、漫画家になるまでの具体的なステップがわからないんです。「高い目標を持てばいい」ということではなく、目標達成のために着実なプロセスを積み重ねていかなければいけない。そのためには、客観的な視点や情報を得る必要があります。

――それまでひとりで漫画を描いていた状況では、どうしても主観的な視点しか持てませんよね。

福間 そうですね。しかし、トキワ荘プロジェクトには同じように漫画家を目指しているけれどその時点での実力も技術も全然違う人がたくさんいます。そういった人たちと交流することで、冷静に自分のするべきことがはっきりとわかってくるんです。

――入居者の方同士の交流はどのように行なわれているのでしょうか。

福間 毎月第3木曜の夜に「木3会」と呼ばれる交流会をプロジェクトの事務所で行っています。1つの荘には5、6人の入居者がいるのですが、他の荘との交流の場がないと自分と似た悩みを持っている人との出会いの確率は多少下がりますよね。それはデビューした後の悩みであったり、担当編集の方がまだいないことへの悩みかもしれません。

そこで横のつながりを広く得られる機会が必要だと考えて、この「木3会」を設けました。自由参加なので、来たい人たちは来て、一人一品持ち寄りで気軽に立ち寄れるという形式をとっています

――福間さんと本音で話し合い、また同じ境遇の仲間の話を聞いたりすることで、より現実的な目標の立て方ができていくわけですね。

福間 例えば「一刻も早くデビューしたいです」と話していた人は入居後、「何かの賞を受賞したり、読み切り作品が何本か掲載されたうえで、はじめて編集部の方々が連載すべきかどうか検討してくれるんだな。まずは賞に向けて投稿する作品を描こう」というように、目標の立て方が自然と修正されますね。

ポジティブな力によって感化し合える関係をつくりたい。

――このお仕事をされていて幸せを実感する瞬間はいつですか。

福間 やはり、入居者の方のデビューを知った瞬間ですね。その人の夢が叶うのは自分のことのように嬉しいです。「こうなりたい」という願いが現実になるのはやはり喜ばしいですし、やりたいことや達成したい目標がある人を突き動かす熱量ってすごいなと思います。

私は誰かが目標に向かって一生懸命になっている、そしてその目標や夢を達成することを後押しすることが好きなんです。

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――では最後に、今後の福間さんの目標をお聞かせください。

福間 誰かが自分のやりたいことを叶えていく、そしてそれがどんどん広がっていく……そんなプラスエネルギーがどんどん周りに伝染していくと、関りを持つ人同士の間で「負けてられない!」という良い流れが生まれていきます。それは、トキワ荘の誰かが夢を叶えた時に入居者の方々が「自分もやるぞ、続くぞ」と感化される姿を見ているとすごく感じます。そんなプラスエネルギーの連鎖を、漫画だけではなくて、アートや舞台芸術など他の分野にも広げていきたいですね。

――人が夢を叶える瞬間を見ていることが好き。そんな福間さんだからこそ、トキワ荘プロジェクトで生き生きと働いていらっしゃるという印象を持ちました。本日は様々なお話をありがとうございました!

<了>


【前編】「評価されるべき人をどうにかしたかった」トキワ荘プロジェクト・福間夕香
【後編】「人が夢を叶えるのは、自分のことのように嬉しい」トキワ荘プロジェクト・福間夕香


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