【後編】「人が夢を叶えるのは、自分のことのように嬉しい」トキワ荘プロジェクト・福間夕香

「働く女性」の未来像

2016/12/13
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あなたが漫画家になりたいことを私たちはよーく知っている。それを否定するなんて絶対しない

「夢には締め切りが必要」に込められた意味。

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――入居期限を3年間と定めているのは、何か理由があるのでしょうか。

福間夕香(以下、福間) 目標を達成するには期限を決めることが重要だと考えています。「漫画は1,000ページ描いたらプロになれる」という話があるのですが、例えば毎月1本30ページの原稿を描いていたとしたら、3年でおよそ1,000ページですよね。あくまでもひとつの目安ですが、だらけてしまうのを防ぐためにも、「夢には締め切りが必要」だと考えています。

――確かに、期限があることで夢の実現に向けてのスケジューリングができますよね。入居された方に対して定期的に面談をされるそうですが、どのような点を重視してお話をされているのでしょうか。

福間 例えば入居して1年経った方には「1年間過ごしてみてどうだった?」と聞いています。もちろん3年間の入居期限いっぱいまでいていただくことを前提にしていますが、入居者のなかには「漫画家になる」という目標を抱いて上京してきたものの、「やっぱり無理かもしれない」と早々に諦める人もいます。

――「本当にこのままでいいのかな」と悩みながら、残りの期間を過ごすのもその人にとっては辛いですよね。

福間 本人の人生を考えると、残りの入居期間がたとえ2年であってももったいないですよね。「反対する親を説得して漫画家になる」と家を出た以上、やめられないと感じている人とか。でも正直、それってどうなのかとも思っています。

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福間夕香(ふくまゆか)
1985年千葉県生まれ。女子美術大学卒業後、カナダへ留学。帰国後、アート・デザイン関連の仕事を経て2013年3月よりNEWVERYスタッフ。トキワ荘プロジェクト入居者サポート、メンター付きトキワ荘の立ち上げを担当し、漫画家デビュー者数を約2倍に引き上げる。現在、NPO法人NEWVERYクリエイティブ事業部の副ディレクター、トキワ荘プロジェクトのコーディネーターを担当。

漫画家になりたい人たちが漫画家になってくれることが1番嬉しいですし、私たちはその夢が叶うことを願っています。だからこそMANZEMIプロ講座というマンガ講習会をはじめ、入居者向けの交流会にプロ漫画家の先生や編集者の方をお呼びするといったサポートをする一方で、自分のことを見つめ直すきっかけを与えることも私たちの役割だと考えているのです。だから「本当にやりたかったことは漫画じゃないかもしれない」と、考え直すこともアリなんですね。

相手の言葉を加工せず、そのまま受け入れる。

――漫画家を目指す方々のマネジメントやサポートを行なう際に意識されていることはありますか。

福間 人を相手にする限り、「絶対に正しい答えはないこと」を忘れないようにしています。当たり前のことですが、入居者はそれぞれ性格や考え方は違います。似ているところがたくさんあっても、みんな同じ対応がそのまま通用することはないですし、一律に「こうすれば解決できる」という方法もありません。

――誰一人として同じでない以上、誰にも当てはまる完璧な方法なんてないということですね。

福間 そもそも何かを思考するとき、自分が持っている言葉でしか思考というのはできないですよね。私が相手の思いを推測して考えても、私の持っている言語フィルターをかけた状態で考えてしまう場合があります。でも相手が本当に伝えたかったことは、違うことかもしれない。
 
そうしたすれ違いを生まないためにも、答えを決めつけないこと、そして相手の言葉を自分のなかで加工せずに、できる限りそのまま受け止めることを常に意識しています。

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2016年7月に開催されたトキワ荘プロジェクト10周年記念フォーラムの様子。

――相手の立場に立って物事を考えることが大切だと。

福間 そうですね。入居者に対しては、いつも味方でいたいと思っています。だって、漫画家を目指すことはとても勇気のいる行動じゃないですか。反対されている人や、周りの友達が普通に働いているなかで漫画家を目指すことに後ろめたさを感じている人もいるかもしれません。

私自身、大学を卒業してからカナダのモントリオールに留学しましたが、世間の新卒一括採用という敷かれたレールから外れる行動ではあったので、ある種の勢いとか不安とか色々な気持ちが混じっていた時期があって。そのときの気持ちと重なって、共感するところは大きいです。だからこそ私たちは絶対に味方でいようと決めています。

――そういう意思があるから「漫画家を本当に目指すべきなのか」という本質的なことも含めて、本音を語り合う面談を大切にしているわけですね。

福間 はい。漫画家になるためには、実力が必要なことは言うまでもありません。それに加え運も求められます。だから「トキワ荘プロジェクトに入ったから必ず漫画家になれる」とは言いません。ただ、「あなたが漫画家になりたいことを私たちはよーく知っている。それを否定するなんて絶対しない」という気持ちに嘘はありません。

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