藤村忠寿 今に必死になれ。『水曜どうでしょう』が教えてくれたこと【後編】

失敗ヒーロー!

2020/03/11
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。前編に引き続き、人気テレビ番組『水曜どうでしょう』の名物ディレクター、“藤やん”こと藤村忠寿さんが登場。現在は番組のチーフディレクターのみならず、役者やエッセイスト、YouTuberとしても活躍する藤村さんですが、後編では、その自由な働き方にフォーカス。すると『水曜どうでしょう』が長く愛され続ける理由と共に、恐れず決断するための極意が明らかに!

レギュラー放送をやめても番組は終わらない

――前編では「視聴率20%を目指さないと決めたからこそ、今も『水曜どうでしょう』が続けられている」というお話がありましたが、あらためて番組最大の転機とは、どこにあったと振り返られますか?

藤村忠寿(ふじむら・ただひさ)
1965年生まれ、愛知県出身。北海道テレビ放送(HTB)所属、『水曜どうでしょう』のチーフディレクター。1990年に同社に入社し、東京支社の編成業務部を経て1995年に本社制作部へ異動。翌年の1996年、ディレクターの嬉野雅道さんと共に『水曜どうでしょう』を立ち上げる。現在は役者やエッセイスト、YouTuberとしても活躍するほか、北海道大学公共政策大学院のメディアフェローにも抜擢。近著は『笑ってる場合かヒゲ 水曜どうでしょう的思考 2』、嬉野雅道さんとの共著に『仕事論』などがある。YouTubeでも『藤やんうれしーの水曜どうでそうTV』を配信中。

藤村忠寿(以下、藤村):最大の転機といったら、番組のレギュラー放送をやめたことだと思いますよ。もちろん、番組を続けることが嫌になったわけじゃない。ただ、20代は我慢をしながらツラい仕事を続けて、30代は『水曜どうでしょう』を成功させるために必死で、40代を目前にしてようやく、仕事に対する別の欲求が出てきたというか。

レギュラー放送をやめたのは2002年。鈴井貴之は映画監督に挑戦していたいし、大泉洋は東京で売れ始めていたし、「俺にも何かできるはずだ」という欲求ですよね。でも、『水曜どうでしょう』を続けたままでは、別の欲求は満たせない。それに番組開始から10年を経て、番組を再編集したいという想いもあったんですよ。10年のあいだに俺自身のセンスだけじゃなく、編集機材も進化していたから。「この進化をもってすれば、もっと面白く仕上げられる」という。

――『水曜どうでしょう』のDVD化は、そうした経緯で始まったんですね。

藤村:そう。再編集をすることによって『水曜どうでしょう』をストップしない、続けることにもなるしね。さらには再編集の作業をすることで、HTB社員としての仕事ができたんですよ。「DVDとして利益を上げるから、番組を休止させてくれ」と、上層部に直訴して。それが叶ったことで俺と嬉野さんは、会社から自由を勝ち取ったんです。今の自分があるのは、あの時に自由を勝ち取れたおかげ。そう考えるとレギュラー放送をやめたことが、大きな転機だったと思う。

「何でもやります!」は二流を自称するのと一緒

――藤村さんを見ていて不思議なのが、まさに自由の部分です。HTBの社員でありながら多彩な活動をされていますが、藤村さんの肩書は何なのでしょう?

藤村:それね、いろんな人に不思議がられますよ(笑)。今は一応、クリエイティブフェローという肩書だけど、副部長だった時期もあってね。でも、部下の出勤簿をチェックするのが、どうしても耐えられなくて。だって、意味がないでしょう? 質のいい番組を作るのに出勤率なんて関係ないし、追い立てられればやるだろうし。それをいちいち確認するなんて、非効率ですよ。

そもそも俺は下っ端の編成業務部時代から、いち早く帰るために、上司に仕事の効率化を提案していたくらいだから。同じように出勤簿のチェックも無視していたら副部長の役職を外され、善処的な処遇としてエグゼクティブディレクターという肩書をもらい、今のクリエイティブフェローに至るという。本来の勤務体系にはない、グレーな立場だね(笑)。

――グレーですか(笑)。しかし、そうした働き方に憧れる人は多いはずです。プレイヤーとして功績を残すと管理職に昇進せざるを得ず、やりたい仕事と役職のあいだでジレンマを抱えてしまう。

藤村:いや、俺からしたらね、カッコつけ過ぎだと思うんですよ。カッコつけて、嫌な仕事をやっちゃう人が多過ぎる。俺なんて嫌な仕事に対しては、露骨に嫌な顔をするからね(笑)。野球中継の担当を振られたときにも嫌な顔をしたし、「俺にはできません。絶対に無理です」と。そもそも俺には野球のセンスがないし、『水曜どうでしょう』と並行しながら野球を担当しても、高いクオリティは約束できない。無理ですよ。

それなのに「上から命じられたのだから、やろう」と応じてしまうのは、むしろプロ意識の欠如じゃないですか。トップを目指していないというか。誤解を恐れず言えば、「何でもやります!」というのは、二流を自称するようなもの。万能選手って、広く浅く、何でもできる人のことですよ。俺は、そうはなりたくない。だから、カッコ悪くても、周りから低く見られたとしても、正々堂々と嫌な顔をするし、正々堂々と断ります。

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