2016/08/12 公開

ついつい仕事を頼みがちな休憩時間。でも実はこれって違法?|気になる疑問を専門家に聞いてみた Vol.3

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ブラック企業という言葉もあって、コンプライアンスの意識が高まっている昨今。「働きがいは欲しいけど、24時間働くなんて時代は古くさい。自分自身の時間が大事なのは当たり前。」という、そんな価値観を理解したうえで、人事担当者は何に気を付けるべきなのでしょうか。

そんな疑問を専門家にご協力いただき解消するシリーズ、「気になる疑問を専門家に聞いてみた」。

第3回は休憩時間の問題編として、実際に厚生労働省で企業を指導し、現在は数多くの企業から人事労務管理に関する相談に対応している社会保険労務士の安部敏志氏にお伺いしました。

<プロフィール>
安部敏志
大学卒業後、13年間、国家公務員I種として厚生労働省、外交官として在シンガポール日本国大使館に勤務し、長野労働局監督課長を最後に退職、労働基準法・労働安全衛生法等の政策立案、企業を指導する立場にいた経験を武器に、現在は会社(事業)を守る立場として、地元の福岡で社労士事務所を経営。

適切な長さの休憩時間を与えられているか。休憩時間は労働時間の長さがポイント。

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— まずは休憩時間の定義について、改めて確認させていただきたいと思います。労働時間の長さによって休憩時間の長さも定められているということでお間違いないでしょうか。

安部:はい。休憩時間は法律によって長さが決まっています。労働基準法34条1項では、労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分、8時間を超える場合は少なくとも1時間の休憩時間を労働時間の途中に与えなければならないという義務を使用者は負っています。なお、これに違反したとき、使用者は6か月以下の懲役または30万円以下の罰金という罰則が定められています。

— では、休憩時間についてはどういった相談が多いのでしょうか。

安部:休憩時間については、先程のご質問にも関係しますが、休憩時間の長さの問題、休憩時間の利用方法に関するご相談を多くいただきます。

先程、労働時間が6時間を超え8時間以内の場合は少なくとも45分と説明しましたが、ポイントは「超える」という表現です。

例えば、労働時間が6時間きっかりの場合は「超える」に当たりませんので、休憩時間はなしでも構わないことになります。そして、労働時間が8時間きっかりの場合は45分で構いません。

— ご丁寧な説明をありがとうございます。しかし、残業はどうしても発生してしまうものだと思います。その際はどうなるのでしょうか。

安部:そうですね。現実的に考えて、絶対に時間外労働……いわゆる残業ですが、残業がない会社というのは稀です。そのため、会社が定める労働時間(所定労働時間)を8時間とし、休憩時間を45分と就業規則に定めていた場合、残業が生じれば8時間を超えることになり、休憩時間を15分追加して1時間としなければなりません。

なお、就業規則に、この休憩時間の追加に関する規定を入れ忘れているケースは意外と多いためご注意ください。

— なるほど。ちなみに会社の規模にもよりますが、休憩できる場所があるところと無いところとありますよね。会社にそのような場所を置くことについては法律で決められているのでしょうか。

安部:あまり知られていないのですが、労働安全衛生規則613条及び事務所衛生基準規則19条に「事業者は、労働者が有効に利用することができる休憩の設備を設けるように努めなければならない。」という努力義務があります。簡単に言えば、休憩所を置くように努力しましょう、ということです。

なお、労働安全衛生規則618条及び事務所衛生基準規則21条には「事業者は、常時50人以上又は常時女性30人以上の労働者を使用するときは、労働者が臥床(がしょう)することのできる休養室又は休養所を、男性用と女性用に区別して設けなければならない。」と規定されています。この「臥床」というのは横になることです。これは体調が悪くなった人などを休養させるために設けられている規定ですが、こちらは義務となっています。

—「休憩時間を業務時間最後にまとめて取り、その分早く帰宅したい」という社員がいた場合、許可はできるのでしょうか。

安部:まず、休憩時間がいる・いらないについての判断は労働者にはないことを理解してもらう必要があります。

労働基準法34条1項は「使用者は・・・休憩時間を労働時間の途中に与えなければならない」と規定しています。つまり、出社直後、退社直前は休憩時間に当たりませんし、休憩時間を与えなければ使用者が法違反となってしまいます。例えば「育児などの関係で早く帰宅せざるを得ない」という事情があるのであれば、所定労働時間を短縮する短時間勤務制度の導入などを検討した方が良いでしょう。

「休憩時間にこれ、やっといて」、「電話対応よろしく」……ついうっかり時間外労働させていませんか?

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— 続いて、休憩時間にされることが多いであろう、上司からの指示を中心にご質問させてください。休憩時間に「電話対応をお願いします」と言われた場合、これは勤務時間外の労働にあたるのでしょうか。

安部:ご質問にある通り、これは時間外労働に当たります。

休憩時間というのは、労働者の権利として労働から離れることを保障されている時間であり、いわゆる手待ち時間は含みません。電話対応くらい良いだろう、と会社側としてはつい考えてしまいますが、電話対応を業務として求めた場合、労働時間として扱う必要があります。電話対応が必要な場合は休憩の交替制を検討すべきです。

なお、最高裁の判例では、仮眠時間についても、労働からの解放が保障されていない限り、休憩時間には該当しないとされています。

— なるほど。ということは、「休憩時間の間にこの業務をやっておいてください」と指示された場合、勤務時間外の労働にあたるのでしょうか。

安部:これは完全に労働時間に当たります(笑)

— やはりそうでしたか。ちなみに、営業の方が外回りで出かけた際、すぐに会社に戻らず外で休憩をとることは問題になるのでしょうか。

安部:休憩は社内だけでなく外出先で取っても構いませんので、それは問題ありません。むしろ、真面目な人が外回りをしていると、ついつい仕事ばかりしてしまいがちになるので、きちんと休憩を取るように上司が指示するなど社員の健康を気遣っていることを示すような職場環境は望ましいですね。

「非喫煙は不公平」とも言い切れない。社内で話し合って対応を考えるべき。

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— 喫煙のために席を外す社員と、喫煙をしない社員では労働時間の長さに差が生まれているのではないかと思います。喫煙に関して時間や頻度など、規定で制限することはできるのでしょうか。

安部:私自身も以前は喫煙者だったので、これは耳の痛いご質問です(笑)さて……真面目に回答しますが、規定による制限は可能です。

労働者には労働時間中の職務専念義務というのがあります。これは仮に就業規則などに規定がなくても、雇用契約に基づく当然の義務として考えられているものです。そのため、喫煙のために頻繁に離席する、離席の時間が長いなどの問題で非喫煙者から不満が聞こえるようなときには、人事労務管理上対処が必要であり、規定で制限するという方法はありえます。

— 制限という対応はできるのですね。

ただ、実務的な点から注意しておきたいのは、離席の時間が長いなどの問題は喫煙の問題に限らないということです。例えば、飲み物を買いに行く、トイレに行く、同僚と立ち話をする、こういったことも基本的には同じです。もちろん、だからこそ程度の問題ということになりますが、私語ばかりする人、夢中になって長時間話し込む人って周りにいませんか?

— 私もついおしゃべりが長くなってしまうので気をつけようと思います……しかしそう考えると、一方的に「喫煙者ばっかり」とも言えませんね。

安部:最近は、職場内のコミュニケーションをどのように円滑化すればよいかとお悩みの会社も多く、例えば、10時頃、15時頃にカフェタイムを設ける一方で、午後の2時間は業務集中時間として離席はもちろん電話もしないなどの環境づくりに励んでいる会社もあります。

いずれにしても頻度や程度の問題ですし、喫煙時間や頻度を規定で制限したとして、それをチェックすることが必要になりますし、ギスギスした雰囲気になってしまう恐れもあるので、押さえつけるようなやり方でなく、喫煙者を交えて社内で話し合って対応を考えるやり方が良いでしょう。

— 確かに、喫煙者と非喫煙者の話し合いの場は必要だと感じました。

安部:ちなみに、賛否両論があり話題となったのが星野リゾートグループさんの「喫煙者は採用しません」という採用方針です。この方針自体は法的にも構いませんし、私の知っている範囲でも同じ方針を掲げている会社はあります。今ある問題解決というよりも、今後問題を増やさない対策となりますが、このような採用方針を掲げるのも一つの手です。

— 今後も喫煙をめぐって様々な方法が考えられそうですね。

昼休みの過ごし方はそれぞれの自由。ただ、規律を保つための制限はできる。

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— ゲームや昼寝など、社員の休憩時間の過ごし方について指導、管理することはできるのでしょうか。

安部:原則としてはできません。労働基準法34条3項は「使用者は休憩時間を自由に利用させなければならない。」と規定しています。ただ、自由といっても、職場の規律を保つ上で必要な制限というのは認められています。例えば、ヘッドフォンを付けずにゲームをすれば周りに迷惑を掛けますし、お客様が入ってくるような場所で昼寝をしていれば、指導しても構いません。そんな人はいないと思いますが(笑)

— さすがに度が過ぎる場合は注意できるということですね。先ほどのお話に「お客様が入ってくるような場所」とありましたが、来客があった場合、見た目が悪いという理由からデスクで食事することを禁止することはできるのでしょうか。

安部:禁止することは可能です。ただし、他に食事ができる場所として会議室の利用を許可するなどの配慮を行うべきでしょう。

最後にお伝えしたいのですが、会社という場所は様々な価値観を持った人たちが集まる場所です。人が集まる以上、一定のルールというのは必要ですが、押さえつけるだけでは反発が起こります。問題点を明確にし、どうすればみんなが気持ちよく働くことができるのかを一緒に考えるという姿勢が実務を行う人事担当者には求められます。

— 働くために必要な休憩時間について、労働基準法の面から解説いただき、ありがとうございました!社員同士が気持ち良く働ける要素の1つである休憩時間について、今一度考えていきたいと思います。

社員が気持ち良く働けるよう、休憩時間の制度を今一度見直す。

毎日勤務するうえで大切な休憩時間。最後のお話にもあるように、人事担当は社員が気持ち良く働けることを目指していきましょう。その際には「こうするべき」と一方的に押し付ける、注意するのではなく、お互いに納得できるよう要望を聞きながら進めていくことが望ましいといえます。

会社を運営するにあたり、様々な疑問が尽きない人事の取り組み。引き続きこの連載では、人事の抱える疑問を解消していきます。

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マネたま編集部
「現場視点から考えると、マネジメントがもっとオモシロクなる」をコンセプトに、マネジメントに関する情報を発信していきます。