記録上では残業をしていても、実態は…知っておくべき勤怠管理のトラブルを防ぐ方法|気になる疑問を専門家に聞いてみた Vol.2

2016/08/05
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残業代の未払いや長過ぎる勤務時間を理由に、企業を訴えようとする社員が増えている昨今。実際に、岡山県の農協では、多くの職員が残業代の支払いを求めて訴訟を起こした事例がありました。

そのような不満が発生する前に、人事担当者として対策を行うことは可能です。しかし、具体的な対策は何なのか。企業の規模などによって様々なケースが存在するため、自分で調べること、人に聞くことが難しい問題です。

そんな疑問を専門家の方にご協力いただいて解消するシリーズ、「気になる疑問を専門家に聞いてみた」。第2回は勤怠管理の問題編として、数多くの企業の相談に対応したご経験を持つ社会保険労務士の菅田芳恵氏にお伺いしました。

<プロフィール>
筆者:菅田 芳恵
13の資格を持ち、様々な知識を活かしてコンサルティング、研修やセミナーの講師、カウンセリング等幅広く行う。最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワークライフバランスの推進、女性の活躍推進事業等で活躍。

記録上では残業をしていても、実態は……勤務態度の把握が残業代未払いトラブルを防ぐ。

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??前回の「男女関係編」に引き続き、よろしくお願い致します。今回は勤怠管理に関わる問題についてお聞かせいただきたく思います。まず、「残業は上司の許可がなければできない」ということでよろしいでしょうか。

菅田: はい。一般的に残業は部下の判断で行うものではなく、上司から許可を得てから行うように決められています。

しかし上司から残業の許可を得るも、だらだらと働かずに会社にいた社員が「残業代が支払われていない」と主張するケースも発生しています。

残業代について社員とトラブルになることを避けるためには、残業が必要かどうかの判断を社員本人ではなく、上司にさせる。上司の許可を得てから残業ができるように徹底させることが大切です。

? 確かに、タイムカードやパソコンでの打刻記録を見るかぎりでは残業をしているように見えるのに、実際は……なんてケースもありますよね。

菅田: あまりにも残業が多い部下を不審に思った人事が確認したところ、勤務時間内である昼間に仕事をしていなかったと判明したこともありました。そのような事態を避けるため、上司は部下がきちんと仕事をしているかどうか、しっかりと管理する責任があります。

そもそも、管理職は社員の勤務態度を把握することが責務。勤務時間中、用も無く長々と席を外す社員もいますが、長時間席を外さざるを得ない場合、社員は上司に一言でも断りを入れるのが普通です。それでも無断で度々長時間にわたって席を外す場合、本人を呼び出して上司が指導するべきです。

また、体調不良だと申し出てお休みをもらったにも関わらず、勤務できる状態だということが社員本人のSNSの書き込みから分かった場合、これを理由に辞めさせることはできませんが、指導することは可能です。

その指導、パワハラになっていませんか?今こそ指導方法の見直し、指導記録書の作成を検討すべき。

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??指導といえば、言い方や言葉など、またここで難しい問題が出てくるように思います。上司が指導する際に、気をつけるべき点はありますか。

菅田: 上司は指導をしたらいつ・どんな指導をしたのか、「指導記録書」という形で残しておきましょう。反省文を逐一本人に書かせると「たいしたことでもないのに、細かいことをいちいち書かせた」とパワハラにあたる可能性もあります。そのため、上司が「指導記録書」として記録に残しておくのが望ましいですね。

セクハラと異なり、パワハラは本人が不快だと思ってもパワハラにはなりません。一般的な視点から見て多くの人が「その言動はパワハラだ」と思われればパワハラになります。ポイントとしては本人ではなく、上司の言動が一般的にどうとられるかが問題です。会社の場合、服務規程やハラスメント規程等でルールとして定められている場合は、就業規則が基準となります。

??新しく設立したばかりの企業であっても、就業規則はしっかりと作るべきなのでしょうか。

菅田: 就業規則はやはりあった方が良いですね。簡単であっても、書面で服務に関することはきちんと明文化しておくべきです。

??なるほど。「反省文を指導の度に書かせるとパワハラになる可能性がある」とのことでしたが、実際に部下に上司が指導をした際にトラブルとなった事例はありますか?

菅田: とある企業で、何回注意しても勤務態度が悪い部下に指導をする際、つい上司が怒鳴ってしまいました。その場で帰ってしまった部下は、翌日、「うつ状態」の診断書を持参しました。そして「このような病気になったのは、上司のパワハラのせいだ」と主張したのです。

??しかし、勤務態度が悪かったのは部下ですよね?この場合、上司の怒り方が悪かったということでしょうか。

菅田: この時は叱り方に問題がありました。たった一度でも怒鳴ったり、大きい声で叱るといったことをすれば、言った内容がなんであれパワハラとなる可能性が高いのです。また、普通のトーンであっても、人格を否定するような発言をすれば問題となります。

??指導の方法がまずかったのですね。この「パワハラのせいでうつ状態になった」と主張する部下が上司を訴えた場合、上司は問答無用で不利な立場に置かれるのでしょうか。

菅田: 訴えられて不利になるかは、上司の言い方や言った内容によって変わります。注意を受けた社員が悪かったと証明できれば問題ありませんが、会社が「本人の態度が悪いから指導した」と言っても、本人は「そんなことは言われていない。自分はしっかり勤務していた」と主張すれば意見の食い違いが起こります。

そうならないためにも、「このような問題行動を起こしたので、指導をした」という指導記録書を作り、本人に指導を受けたことについてサインを書かせましょう。サインを書くことで本人も自覚するはずです。

??なるほど。では、もしも本人がサインを拒否したら、どのように対応すれば良いのでしょうか。

菅田: サインを拒否したら、「サイン拒否」の旨を書いておけばいいのです。記録をためておけば、本人が「パワハラだ。自分は悪くない。」と言った時の証明になります。

??さすがに指導の記録を見れば、本人も「悪くない」と言えないですよね。裁判を起こそうとした社員が悪い場合、どのような処分が一般的なのでしょうか。

菅田: なるべく穏便に解決させたい場合は、裁判沙汰になるよりも会社で話し合い、お金を支払って辞めてもらうケースが最も多いですね。もし裁判が起こって企業名が新聞に載ると、企業そのもののイメージが悪くなる可能性もあるので。

??男女関係の問題編と同じく、人事担当として前もって対策をしておくことが大切なのですね。様々な疑問についてお聞かせいただき、ありがとうございました!

勤怠管理と職場コミュニケーションの方法を徹底し、トラブルの無い企業へ。

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今回は勤怠管理の面からパワハラに発展したケース、残業代をめぐる問題について、専門家に見識を伺いました。残業問題や上司の部下に対する指導方法など、職場コミュニケーションのトラブルを避けるために管理側が確認しておくべき事項が明らかになったかと思います。

企業を運営する際には、この他にも様々な問題が発生することが考えられます。今後もこのシリーズでは、人事の抱える疑問点を解決していきます!



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