パソコンの指導中に偶然、手がぶつかった……これもセクハラ?|気になる疑問を専門家に聞いてみた Vol.1

パソコンの指導中に偶然、手がぶつかった……これもセクハラ?|気になる疑問を専門家に聞いてみた Vol.1

2016/08/03
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普段企業で働いていて、起こりうるかもしれない男女関係の問題。セクハラや不倫など、いざ発生した場合人事担当者はどのような処分をするべきなのか、対象となる基準は何なのか……様々なケースが存在するため、自分で調べること、人に聞くことが難しい問題です。

セクハラの基準が分からず、Q&Aサイトでは実例を挙げたうえで「これはセクハラなのでしょうか?」と聞く相談者も数多くいます。

そんな些細かもしれないけれど、気になる疑問を専門家の方にご協力いただいて解消するシリーズ、「気になる疑問を専門家に聞いてみた」。第1回は女性関係の問題編として、数多くのハラスメント問題の相談に対応したご経験を持つ社会保険労務士の菅田芳恵氏にお伺いしました。

<プロフィール>
筆者:菅田 芳恵
13の資格を持ち、様々な知識を活かしてコンサルティング、研修やセミナーの講師、カウンセリング等幅広く行う。最近では企業のハラスメントやメンタルヘルスの研修、ワークライフバランスの推進、女性の活躍推進事業等で活躍。

そのつもりが無くても、受け取る側が不快に感じればセクハラに。

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???本日はよろしくお願い致します。まず、セクハラの定義について改めて確認させていただきたいと思います。どんな行動や発言であっても、女性社員がセクハラだと思えばセクハラになる可能性があるということでお間違いないでしょうか。

菅田:はい。もしも双方の間でコミュニケーションが十分に取れており、女性が不快に感じなければ問題ありません。しかし、不快に感じればセクハラとなる可能性がありますね。

???では、セクハラに関して、実際にあった相談事例を教えてください。

菅田:とある企業で、女性の新入社員に対し、男性社員がパソコンの指導を行いました。男性社員は特に意識していませんでしたが、うっかり手が触れてしまうことがあったそうです。男性社員にその意識は無かったとしても、女性社員がセクハラだと感じれば、セクハラになります。

???「偶然だろう」と気にしない人もいるかもしれませんが、その女性社員はセクハラだと感じたのですね。

菅田:このケースでは女性社員が「あの先輩はいつもパソコンを教える時に触ってくる。セクハラだ。」と感じたことで、問題となりました。ただ、女性社員からそのように訴えられた上司が男性社員に話を聞くと、「そんなつもりはない」、「触った気もない」ということが分かりました。上司はその旨をきちんと女性社員に話した結果、大きなトラブルには発展しませんでした。

???社内で揉めたものの、結果としては解決することができたと……その他、大きな問題になった事例はありますか?

菅田:会社のパソコンでアダルトサイトを見ていた男性社員がおり、それを女性社員が偶然目にしてしまったという事例があります。

???え、それは衝撃的ですね……。

菅田:女性社員はその男性社員に嫌悪感を抱き、出社拒否にまでなったそうです。その結果、男性社員は異動になりました。このように直接体に触れたり、何かしらの実害が無かったとしても女性社員が不快に思ったらセクハラになるのです。

???不快に思ったかどうかのほかに、セクハラに相当する基準となるものはありますか。

菅田:女性社員の「嫌だ」という意思を無視し、強要させるのは法律的に問題となります。例えばお酒の席で女性社員が男性社員の隣に座ること、二次会に行くよう強要するといったことですね。「お茶出しは女性がやるべきだ」という意見について女性が嫌だと主張した際、「男性もやるように」とすれば大丈夫ですが、それでもなお「女性がやるべきだ」となったらセクハラになります。

???交際をめぐってセクハラに発展してしまった事例もあるように思うのですが、人事担当がコンプライアンスの面から注意するべきポイントについて教えて下さい。

菅田:不倫と違い、当事者の2人がどちらも独身であればコンプライアンスに反しません。ただ、断られたにも関わらず、何度も交際を迫ることはありますよね。そういった場合はコンプライアンス研修として触れておくのが良いと思います。

??社内でのハラスメント防止のために規定を決めるなど、人事担当ができることはありますか?

菅田:どのような行為がハラスメントにあたるのか、きちんと規定として定めておくことですね。一般的にハラスメントだと分かっても、具体的な例まで定められていないと厳密な判断が難しいので。

??だからこそ、具体的な例を規定に書いて明確にしておくのが良いということですね。

菅田:同時にハラスメントとなる問題を起こした際の処罰のため、懲戒規定も定めておいた方が良いかと。それだけでなく、相談窓口を設けておくことも抑止力になります。

???相談窓口については、どのような人を置くのが望ましいのでしょうか。

菅田:最低でも、男女1名ずつを担当者としてください。被害者が相談できる窓口があれば、「うちの会社には相談窓口がありますよ」というアピールにもなります。更に可能なら、様々な年代の方を置いて欲しいですね。若い方は同年代の人がいれば相談しやすいということもあるので。

???担当者に同世代の女性がいれば、困った時でも相談しやすいですよね。

菅田:そうですね。「生理休暇」を制度として設けている企業も、女性社員は申告をためらってしまう、セクハラだと取られてしまうために男性社員も対応が難しい、といったこともありましたが、相談窓口があればそのような問題を解決できます。

???コンプライアンスの基準からハラスメントを考えた時に、配慮するポイントはありますでしょうか。

菅田:上司が注意を払い、違和感に気付いたらきちんと話を聞くことです。派遣社員やアルバイト、パートの方がハラスメントを理由にすぐに辞めてしまう……このような事例は本当に多いです。そこで企業は辞めた方の事情を把握するため、話を聞いておくべきですね。

「くん付け」なのか「さん付け」なのか……社員の呼び方も実はセクハラに大きく関わっている。

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???先程はパソコンの指導の事例をお話ししていただきましたが、その他、男性側の意図とは関係なくセクハラに該当した事例はありますか。

菅田:とある企業では新入社員を性別に関係無く、「くん付け」で呼んでいました。それまでは特に問題は起きていなかったのですが、とある女性社員が「くん付けは嫌です」と苦言を呈しました。

これは「呼称の問題」として、女性社員が不快に感じればセクハラにあたります。この女性社員の発言をきっかけに、この企業は社員の呼称を「くん」から「さん」に変えました。

???なるほど、社員をどう呼ぶかでもセクハラに大きく関わるのですね。

菅田:はい。その女性社員は「くん付け」で呼ばれることで不快な気持ちになっているので、セクハラになってしまいます。こういったこともあり、多くの企業では「さん付け」で呼ぶようになっています。また、年上の部下を年下の上司が呼び捨てにしているケースも時折見られますが、倫理的な面から考えて年上は敬うのが普通です。

???もし親しみを込めて女性社員を「ちゃん付け」で呼んだとしても、女性社員本人が不快に思ったらセクハラになるということでしょうか。

菅田:そうですね。ただ、苗字に「さん」を付けて呼ぶのは一般的なのでセクハラではありません。女性社員の呼び方としてセクハラにあたらないようにするためには苗字に「さん」を付けて呼ぶのが無難ですね。

女性社員同士で名前に「ちゃん」を付けて呼び合うことに関して、呼んだ本人、呼ばれた本人はいずれも不快に思っていなかったのですが、同じ職場にいる他の人が不快に思い、改めさせたという事例もあります

もしも社内で不倫が発生していたら。

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???第三者が会社に問題の発生を報告するケースはありますか。

菅田:ある会社が目安箱を設置しました。目安箱で最も多かったのは、「不倫」についての報告でした。「◯◯さんと××さんが不倫をしている」といったものですね。当事者たちはバレていないと思っていましたが、その事実を知っていた周りからは「職場の雰囲気を乱している」という不満が起こっていたのです。

???確かに同じ職場に不倫関係にある人がいたら嫌ですね……。不倫の問題はケースによって様々ですが、一般的に人事担当はどのような処分をすることが多いのでしょうか。

菅田:職場環境が悪くなるということから、会社はきちんと別れてもらう、どちらかが退職する、部署が違っても同じ営業所であれば顔を合わせるので、違う支店や営業所に異動させる……といった処分を行いますね。とはいえ、辞めさせる場合はよほどのことが無い限り、ありません。

???異動する人を決めるのは、お互いの話を聞いたうえで判断するということでしょうか。

菅田:はい。お互いから話を聞き、判断します。被害者が異動したくないといえばそのままですし、被害者が異動したいといえば被害者が異動します。被害者が異動する場合は稀ですね。

被害者とは声をかけられた側、関係を持つよう迫られた側にあたります。会社はお互いの話から現状を把握してどちらかを異動させますが、加害者、つまり誘った側が異動することが大半です。

???加害者と被害者で証言が食い違うことがあった場合の状況判断はどのようにするのでしょうか。

菅田:「本当は嫌だったけど、無理矢理関係を持つよう迫られた」、「昇給させないと脅してきたから仕方なかった」と被害者が主張するケースもあります。そうなると当事者たちの話から判断するのも難しいため、会社で立ち上げた「委員会」という客観的な視点から、その後の対応を考えます。

???当事者だけでなく、周囲の社員の話をもとにすることもあるのですね。セクハラや不倫など、普段聞けない質問にお答えいただき、ありがとうございました!

いつ起こってもおかしくない、男女関係の問題。

今回は男女の間に起こる様々な問題について、様々な事例を含めお聞きしました。このような問題は今後、自分の企業でも起こりうるかもしれません。もしも問題が発生した場合、今回分かった物事を知っていると知らないとでは、対応が大きく変わります。

次回の「気になる質問を専門家に聞いてみた」では勤怠管理について、引き続き社会保険労務士の菅田芳恵氏にお話を伺います。社内の勤怠管理の制度がパワハラ問題に発展したケース、「勤務指導記録は取るべき?」など、人事の抱える疑問点を解決していきます!

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