「『自分がやる』は害悪だと思うんです」スナップマート株式会社・江藤美帆

2016/11/29
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ローンチ直後に1万ダウンロードを達成した「Snapmart」

―――江藤さんが手がけられた「Snapmart」について、開発に至るまでの経緯を改めてお伺いしてもよろしいでしょうか。

江藤 「kakeru」編集長時代に、InstagramやSnapchat、snowといったSNSを追いかけていました。そこで10代から20代後半くらいまでの若い世代の方々にインタビューをしたり、スマホの中を見せていただく機会があったんですね。その時にダウンロードされたアプリのほとんどがカメラアプリだったこと、そしてカメラロールにたくさんの写真があったという2つのことに衝撃を受けました。

一方で記事を制作する際にアイキャッチに使う写真や、記事内に挿入する写真を探している中で「自然な女子高生の写真が欲しいな」と思っても、Googleで検索すれば出てくるのに写真素材サイトで検索すると欲しいものが出てこないんですよね。

「Snapmart」は、そうした写真を撮るのが好きな若い子たちと、「写真が足りない、欲しい」と悩む人たちをマッチングするプラットフォームがあったらいいなぁという思いから企画したという感じですね。

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―――実際にローンチしてからの反響はいかがだったのでしょうか。

江藤 ローンチした直後は2、3日で1万人以上の方からダウンロードしていただきました。今までまったくプロモーション費用をかけないでやってきましたが、どこからともなく流入があり、順調にユーザー数は増えています。

―――そんなにもたくさんの方に利用されているのですね! ローンチされてから、思いがけない発見はありましたか。

江藤 ポジティブな発見としては、写真のクオリティが意外に高い点ですね。「こういう写真もあるんだな」と驚かされることも多く、そうした発見は新鮮なものでした。

それと、「スマホで見て写真を買いたい」というニーズもあることにも気づきました。最初、買うのはあくまでも企業やメディアで、彼らは当然PCで見て買うのだろうと思っていたのですが、実際にアプリを公開してみるとサイト流入もスマホからが多く、「スマホから写真が買えない」という苦情がたくさん来たことから、買うほうにも「スマホで完結させたい」というニーズがあるのだということがわかりました。これは意外でしたね。

ネットのコンテンツの著作権問題を解決に導きたい

―――どのような傾向の写真が特に売れているのでしょうか。

江藤 やはり人物ですね。人物は普通の写真素材サイトだとどうしても被ってしまいますが、「Snapmart」は普通に友達や家族を撮っているので、モデルのバリエーションがとても豊富。基本的にスマホに入っている写真なので、みんなのスマホのカメラロールを覗き見している感覚です。人物は老若男女関係なく売れますが、20代女子のインスタグラムに上がっていそうな感じの写真はよく売れます。

―――確かに、女の子の写真も多いですね。

江藤 あとは季節物も頻繁に売れます。それと、最初はよくわからない神社や道路の写真がよく売れているなと思っていましたが、よく見たら「君の名は。」「聖地巡礼」といったタグが付いていました。メディアなどが使っているのでしょうね。

―――どうやったら写真は売れますか?

江藤 大事なのはタグ付けですね。タグ付けがすべてと言っていいくらい。写真がすごい売れてる人たちが何をしているのかというと、タグの付け方がうまいんですよ。

―――なるほど、タグの付け方がポイントなのですね!

江藤 売れているということは、さっきの「君の名は。」「聖地巡礼」じゃないですけれど、そのタグで検索する人がいるんですね。場所やお店の名前など具体的なキーワードをちゃんと入れておけば、今すぐ売れなくてもいつか需要がある。なので結構ニッチなロングテールのタグを登録したものを出品しておくのも、売れるコツだと思います。

―――例えば誰も行かないような場所の名前などですね。

江藤 本当にその通りだと思います。例えば東京タワーの写真となると競合が多くてなかなか勝てないと思うんですけれど、誰も行ったことのないような、ニッチな場所のタグを検索したら、そのタグだけのページが生成されるんですよ。なので、それがSEOに引っかかるようになっています。そのタグがニッチワードであればあるほど、競争相手がいないので。

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―――過去に江藤さんは画像「パクリ」「盗用」の暴き方で記事を書かれていらっしゃいますが、「Snapmart」ではそういった問題を解決に導くような印象を受けました。

江藤 確かに、以前から、ブロガーさんが写真を盗用されるのが問題になっていますよね。写真の無断盗用をはじめ、どこに使われているのかわからないのが気持ち悪いと思うので、そういったところの経緯を明らかにしたいという想いは以前よりありました。こうした問題は大半が不毛な争いで、裁判するにもお金がかかります。だったら、写真を「Snapmart」にあげてもらって「あげてもらった写真は『Snapmart』で買えますよ」と伝えたほうがいいなと思いました。今後は、大手メディアと提携して写真のプロモーション用に素材を提供し、その収益を還元できるしくみを実装したいと考えています。

―――それが実現されたらネットの写真盗用問題はかなり浄化できますね。

江藤 これまでも、他人のブログの写真を使いたいとか、インスタの写真を使わせてほしいというニーズはあったと思うのですが、決済が課題でした。写真1点1点は比較的少額なのですが、購入するには口座を聞かないといけないし、そもそもどうやって払っていいかわからないし、なにより面倒。そこで簡単に少額のお金やAmazonギフトをあげられるとか……マイクロペイメントではないですけれど、小さいお金がぐるぐる循環する仕組みを作っていけたらと考えています。

―――マイクロペイメントは様々な企業が着手しているものの、なかなかうまくいっていないところではありますよね。

江藤 やはりまだ、オンラインでコンテンツを買うということ自体に馴染みがない人が多いんだと思います。例えば私は最近noteを買ったんですけれど、あれは1回買うと続けて買うようになります。ということは、課金のきっかけがあれば、その後もサービスに対してお金を払う可能性が高いんですね。今はまだnoteにお金を払うことに心理的な抵抗があると思うんですけれど、頻繁に買うようになると無意識のうちにお金を払っています。そういう新しい体験が当たり前の体験になってくると、結構わーっとスケールするじゃないかと。それをマネタイズするのは結構しんどい気がしますが、日頃のちょっとした活動がお小遣いやランチ代くらいになるような、ちっちゃなお金の循環はもうちょっとあってもいいかなとは思うんです。

マネジメント=忍耐だと思います

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―――江藤さんがこれまで経験されたマネジメントはどのようなものでしたか。

江藤 私はずっとフリーランスで働いていましたが、30歳くらいの時に自分の会社を起業しました。社員は正規と非正規、業務委託の人も含めて最大で20人くらい。それが最初のマネジメント経験です。ただ、正直に言うとマネジメントは今もそんなに得意ではないですね。自分でやってるほうが楽しいと思ってしまうので。

―――プレーヤーとして優秀な人は、往々にしてそうですね。

江藤 どうしても「ここは自分でやりたい!」と思ってしまうんですよね(笑)。でもそれが「マネージャーとして最悪だ」ということは、“今は”わかっています。ただ、以前社長をやっていたときはそれを理解していなくて、そういうマネジメントとして最悪のことを全部やってしまったんですよ。「任せた」と言いながら、横から口を出したり、後でこっそり手直ししちゃったり。でもそれって、当事者としたら傷つきますよね。「もっといいものにしたい」っていう気持ちが強すぎて、そこまで相手のことを考えられなかったんですよ、当時は。

―――難しいところですよね。

江藤 だから本当に、マネジメントって忍耐だなと思っていました。「明らかにそれは違うのでは」と思うところがあっても、任された本人が経験して、自分で気づいて直して成長していく、というのを見守ってあげる。そこで致命的なことをやりそうになった時だけ手を貸す、というのが本来のマネジメントなんだろうって。

―――その課題に向け、どのように解決・改善をされたのでしょうか。

江藤 その時はぜんぜん気がつかなくて、周りの人たちに「あなたにはついていけません」と愛想を尽かされてしまったんですよね。私も私で、「そんなに私が気に入らないんなら、自分たちだけでやってみれば?」という感じで自分で作った会社を辞めてしまったんですけど、しばらく経ってからある人に「今まで1回も人の下で働いたことないでしょう。ちょっと1回、経験だと思って働いてみたら」って言われて。「じゃあ勤めてみます」と37歳くらいの時に初めて会社員になりました。その時に初めて人の下で働く立場になって、「こういう感じなんだ」ということが、パズルが合ったようにわかったんですよ。「ああ、部下は上司の言葉をこういうふうに受け取るんだ。そりゃ愛想つかされてもしょうがないわ(笑)」って。

―――実際にマネジメントされる側になって、初めて気づいたのですね。

江藤 どういうことを言われたらやる気になるのか、どういうことを言われたらやる気が削がれるのか。一つ言えるのは、人は「頼られたほうがパワーを発揮する」ということですね。かつての私は人に頼ることがほとんどなかったですし、なんでも自分でやるのがいいことだと思っていましたが、いまはその考えは完全に捨てました。自分がやらなくてもいいことは、なるべく人に頼ることにしています。たぶんそのほうが、みんな幸せになれるんですよ。

「私は、この人と『弱さ』で繋がったんだな」

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―――noteに「リーダーはすごく優秀でなければいけないというふうに思い込んでいたところを救われた」のが家入一真さんの本だと書かれていたことが印象的でした。これは、どういうタイミングで読まれたのでしょうか。

江藤 「Snapmart」の開発担当者から突然外されてしまった後、しばらく家で休んでいたんですよ。会社を辞めるわけでもなく、宙ぶらりんな感じで。有給休暇をとって。その時に家ですることもなくて、人の本でも読もうかなと、いろんな本を読んでいました。

最初はホリエモンの『我が闘争』という本を読んでいたのですが、あれはすごく暗い、大変な話で。いい本なんですが、その時の自分の精神状態的にはものすごくヘビーで、暗い気持ちになってしまいました。そんな時にKindleのおすすめで『我が逃走』という表記違いの家入さんの本が出てきて。こっちを読んでみようかなとなんとなく買って、Kindleで読み始めたんですけれど、衝撃的でしたね。

本当に駄目なエピソードが書いてあって、「ここで終わりかな」と思ったらさらにひどい話がある、追い打ちをかけるように想像を絶するようなひどい話が出てきて。赤裸々に綴っていらっしゃるのがすごいなと思いました。その本の中で「弱さで繋がるコミュニティがある」というところを読んだ時に「なるほどな。私は今この人と弱さで繋がっているんだな」と感じました。

―――「リーダーは強いもの」というイメージが一般的ですが、家入さんの言葉はそれとは逆のこと。それは衝撃的ですね。

江藤 「リーダーが弱かったら嫌だ」という人もいると思うんですけれど、弱みを見せることで「この人も人間なんだな」というところでシンパシーを覚える。「この人についていこう」じゃないですけれど、「この人と一緒に何かやりたい」「この人を支えてあげたい」「自分ならこの人の力になってあげられるだろう」と思う、そんなつながり方もあるんだなと。違うマネジメントの方法なんだろうなって。

この前、女性実業家の経沢香保子さんのnoteを読んでいることを自分のnoteに書いたんですけれど、経沢さんは真逆で、強い人なんです。これでもかっていうくらいに努力をする。99パーセント完成していて、普通の人だったらもういいだろうと妥協するところでも、1パーセントの隙間を埋めにいこうとする人なんですよね。でも、じゃあ自分はこういう人になれるのかといったらなれない。どちらかって考えたら、私は家入さんタイプを目指したほうがよさそうだなと思いました。

今まで経沢さんのような優秀さが際立つタイプのリーダーばかりを見てきましたし、自分の尊敬する人はそういう人ばかりだったので、「強くないとダメなんだ、1パーセントの隙間を埋めに行くようなストイックさがないとダメなんだ」と思い込んでいたんですけれど、自分に足りない部分があったら他の人にそこを埋めてもらうスタイルもありなんだなと気づかされたのが、家入さんの言葉だったということです。

―――本日は貴重なお話をたくさんお聞かせいただきありがとうございました!

<了>

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