【前編】「『考える』ことが職場を変える」出口治明(立命館アジア太平洋大学(APU)学長)

逆境ヒーロー!

2019/03/19
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華々しい成功の裏には、失敗や挫折がある。その失敗エピソードから成功の秘訣をヒモ解く『失敗ヒーロー!』。そのスピンオフ企画として新たにスタートした新連載『逆境ヒーロー!』。さまざまなフィールドで活躍しながら“ビジネスパーソン”として注目を集める人物にフィーチャーしていきます。今回は、日本の大学では初めての公募で選ばれた立命館アジア太平洋大学(APU)学長の出口治明さんが登場。“歴史の達人”、そして“教養人”としても有名な出口さんですが、前編ではなぜ“教養”が人生に必要なのか、忙しいビジネスパーソンがどのように働き方を改革していくべきなのか、その秘訣をお伺いします。

教養があったほうが人生は楽しい

――早速ではございますが、出口さんはさまざまなご著書において教養を身につける重要性を提唱されています。まずは、なぜ教養というものが私たちに必要なのか改めて教えてください。

出口治明(でぐち・はるあき)
立命館アジア太平洋大学(APU)学長。1948年、三重県生まれ。京都大学法学部卒業。1972年に日本生命保険相互会社に入社し、企画部や財務企画部に所属。ロンドン現地法人社長、国際業務部長を経て、58歳で退職。同年ライフネット企画株式会社を設立し、代表取締役社長に就任。2008年、ライフネット生命保険株式会社を開業。2012年に上場、2013に会長に就任。2017年、取締役を退く。2018年、立命館アジア太平洋大学(APU)の4代目の学長として就任し現在大分県別府市在住。著書にベストセラーとなった『人生を面白くする 本物の教養』ほか、自分の頭で考え成長していくためのヒントが詰まった『知的生産術』が2019年2月15日に発売。歴史への造詣が深く、週刊誌などに多くの連載を持つ。

出口治明(以下、出口):ある若者が藤井七段の活躍に刺激されて、将棋に興味を持ちはじめたと話してくれました。「でも19歳の今から将棋をはじめても大して強くもなれないし、そもそも将棋を勉強したところで人生や仕事の役に立つのでしょうか?」と聞いてきたんです。僕がどう答えたかといえば、シンプルに「はじめたらええやんか」と。「例えば合コンに行って素敵な人に出会ったとする。その時に、その人が趣味は将棋ですって答えたら楽勝やんか。絶対興味持ってくれるやろ」と答えました。

ヨーロッパの街を歩けば、街角でチェスをさしている人たちがいます。もし自分がチェスのやり方を知っているなら、「一緒にさしてくれませんか?」と話しかけて、友達になれるかもしれません。でも、チェスができなければ写真を撮って終わり。インスタ映えはするかもしれませんが、単純にどっちが楽しいか考えてみたら?ということです。

ビジネスであろうとなかろうと、何かの知識を身につけるということは、人生の選択肢が増えるということです。将棋の話も合コンだけではなく、大事な営業先の人が将棋好きだったら、もう楽勝じゃないですか。なぜ教養を身につけたほうがいいかという質問の答えは、知っていることが増えれば選択肢も増えて、純粋にそちらのほうが人生が楽しいからです。

――人生や仕事に役立つかどうかを考える前に、純粋に教養があったほうが人生は楽しいということなのですね。

出口:そうです。それに教養は、人生や仕事の役に立つと思って義務感で学んだところで、身につかないものです。ある人が、「毎週3冊本を読んでいるけれど、全然頭に入りません。どうすればいいですか?」と僕に質問したのです。聞けば、上司が異常な本好きで毎週どさっと5冊渡されるけれど、3冊読むのが精一杯なんだと。自分で好きな本を選んで読めばいいのに、義務感で読んでしまう。それがすべての誤りですよね。そんなもの、BOOK OFFで売り払えばいいんです。

「好きこそものの上手なれ」というのは本当です。本を読んだからといって必ずその知識が人生に役立つというわけではないし、そもそも教養が人生や仕事の役に立つという考え方自体が間違っています。役に立つかどうかはわからないけれど、選択肢が広がるから知っといたほうが得やで、というだけなんですね。

「どんな本を読んだら仕事に役に立ちますか?」「仕事に役立つ本を10冊リストアップしてください」とかもよく聞かれるんですが、人生なめてんのかと(笑)。5冊や10冊本を読んだくらいで仕事ができるんやったら、人生ちょろいやろと(笑)。まずは、そういう風に教養を得ることで自分の能力を上げてやろうという考え方を捨てなければいけませんね。好きなものを読んでいれば純粋に楽しい。楽しんだその先で、ひょっとしたら将来の役に立つかもしれない。それくらいで十分なんです。ひとつ学べば、ひとつ選択肢が増える。学ぶことの重要性は、そこにつきます。

――現在、立命館アジア太平洋大学(APU)の学長として日々学生の方と交流されていらっしゃいます。あまり勉学に力を入れていないとされる、いわゆる“ゆとり世代”についてどのようにお考えでしょうか?

出口:“〇〇世代”というのは、みんなが喜ぶからとメディアが勝手につくっただけで、僕は世代間での違いはないと思っています。メディアが面白おかしく煽っていることを錯覚しているだけです。みんな人間でみんな同じ動物ですから、世代によっての違いなんてないんです。教育の方針が変わって授業数が減ったり増えたりする影響はあるでしょうが、それは知識を詰め込まれているか、そうでないかだけの違い。ゆとり世代はこうだと断定するのは、血液型の話と同じです。A型の男性はB型の奔放な女性に弱いとか、そういう話はわかりやすくて面白いですが、実際はまったく意味がないことだと思いますね。

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