2016/07/13 公開

「その人事配置、本当に最適ですか?」元リクルート人事部GM 曽和利光が語る日本の人事部が抱える問題とは?

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筆者:曽和利光
京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。

この度、本コラムを連載させていただくことになりました株式会社人材研究所で代表をしています曽和利光(そわとしみつ)と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

自分自身の(たかだがですが)20数年の人事実務経験や、現在、様々な業界での多くの会社の人事のお手伝いをしていることを踏まえて、「あえて」(もちろん自戒も込めてですが)、もう少し人事の皆さんの仕事のやり方などがこうなればいいのに、と思うことを書き連ねていきたいと思っています。僭越な内容もあるかと思いますが、何卒ご容赦いただけますと幸いです。

さて、今回は1回目ということで、今後の各コラムのテーマになっていくような、私が感じている人事が抱えている「問題」について、どのようなものがあるのか挙げたいと思います。

退職理由の多くが「人間関係」。その原因は“適当な人材配置”にある

オフィスイメージ

まず、日本の人事は「職人技」「感覚」、もっとストレートに言ってしまえば「適当にやっている」ということが多いということです。特に、配置(新人の配属や異動)などを見ているとそう思います。ある人をある部署に配属する時に、明確な理由がある会社はどれだけあるでしょうか。もちろん「空席があったから」では理由になりません。なぜ、その人でなければならないのか、その人が本当に最も適した人なのか、その配置が会社全体として最適化されているものなのか、ということに対してある程度答えることができてはじめて「きちんと考えてやっている」と言えると思います。

ところがたいていの場合、社員の「希望」とか「表面的なスペック」ぐらいには注意するものの、パフォーマンスに大きく影響するパーソナリティ(性格や能力)については、可視化もしていなければ、そのため検討もしていない場合がほとんどです。その結果、退職やメンタルヘルスの不調、低業績などにつながるわけです。

実際、退職する人の多くの理由が「人間関係」特に「上司との関係」であることはよく知られた事実です(「人は会社を辞めるのではない。嫌な上司の下を去るのである」などと言います)。そういう重要な要素を考慮しない配属は「適当な配属」と言っても過言ではないのではないでしょうか。それで、ある人の人生やキャリアが変わってしまうのですから、たまったものではありません。

日本の人事は真面目だけど不勉強?その理由は……

その「適当さ」がどこから来るかというと、それはずばり「不勉強」だからです。ただ、人事の方が不真面目であるとは思いません。むしろ他の職種と比較しても、一生懸命職務に取り組んでおられる方ばかりだと思っています。それなのになぜ「不勉強」なのかというと、「何を勉強すればよいのかがわかっていない」からだと思います。古い人事観からすると、人事は組織のルールの番人のようなもので、そのために学ぶべきものは「法律」や「ルール」であるとされます。

労働基準法や社会保険などから始まり、会社の中の規則、自社のみならず他社の人事制度の事例などがこれに当たります。また、古い人事観からすれば、人事は事業の後衛であり(「バック」オフィスと呼ばれますよね)、彼らが「本業」に専念できるように、様々な「雑務」をこなす役割とされたりしています。

そのため、給与「事務」や採用「事務」を代わりに代行する、もしくは、アウトソーシング会社などに委託してマネジメントをするわけです。だから一生懸命、給与事務や採用事務のオペレーションを学び、素早く丁寧に作業ができるよう努力します。また、人事ベンダー(人事に様々なサービスを提供するサポート会社。給与OSや採用媒体社、人材紹介会社等)についての知識も学びます。もちろん、これらは勉強すべきことです。

今後の採用は「攻め」の姿勢が求められる

しかし・・・正直言って、上記のことは「必須科目」「基礎」ではあるのですが、それによって人事の仕事の成果が上がったり下がったりするようなものではあまりありません。できていないとダメなことであっても「十分条件」ではないのです。私は、人事は単に「ルールの番人」や「後衛」を守ればよいというものではないと思います。これだけ変化の激しいマーケットでは組織変革がどれだけうまくできるかが勝ち負けを決めますが、これを主導するのは人事です。

また、これだけ少子化で構造的な採用難が続く時代では、タレントを採用できるかどうかが事業の浮沈を決めます。人事はもっと「攻める」職種になってきたと考えます。人事(という言葉が悪いのかもしれませんが)の仕事は、「人材開発」(人の能力開発や良いマインドの醸成、等)と「組織開発」(組織を活性化させてパフォーマンスを向上させること、等)なのです。

心理学、組織学、経営戦略……人事は学ぶべきことは多岐にわたる

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そう考えれば、人事が学ぶべきことは、さらに広がっていきます。人の能力開発をするためには、「心理学」(例えば、いかに人は熟達者になるのかという教育心理学)を学ばねばなりません。効果的な組織を作るためには、「組織論」(例えば、機能別組織がよいのか、事業部制か、クロスファンクションか、等)を学ばねばなりません。

加えて、それらをさらに精緻なものにするために、最近ではデータベースドHRなどとも言われていますが、できる限りの人事情報を「データ」(≒数字)にして可視化、把握し、それをもとに「多変量解析」などの統計的手段を用いるなどして、組織の問題点やその原因を分析していく必要があります。

事業をうまく行かせることが最終ゴールなのであれば、当然ながら「経営戦略」などについても学ばねばなりませんし(次に来る戦略に合う組織を作る準備をせねばなりません)、5年、10年後を期待して採るポテンシャル採用である新卒採用をするなら、日本や世界が今後どうなっていくのかという「未来学」を学ばねばなりません。

人事は大切な“人”を扱う仕事ということを自覚するべき

私は人事という仕事の重要性(人や組織に与える影響の大きさ)を考えれば、これぐらいのことは勉強して当然だと思います。世の中には誰かが研究してくれて真実が判明していることがたくさんあります。人や組織についてもそうです。まずはこれらの普遍的な「原理・原則」を知ることで、「免許」を得て(それがなければ無免許運転のようなものです)、大切な人を扱う、人事という仕事に邁進していただければと思います。

次回以降、細かいテーマでいろいろ一緒に検討できればと思いますので、何卒お付き合いください。

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曽和利光
京都大学教育学部教育心理学科卒業。リクルート人事部ゼネラルマネジャー、ライフネット生命総務部長、オープンハウス組織開発本部長と、人事・採用部門の責任者を務め、主に採用・教育・組織開発の分野で実務やコンサルティングを経験。人事歴約20年、これまでに面接した人数は2万人以上。2011年に株式会社人材研究所設立。
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