2016/08/31 公開

秋採用は「砂金すくい」みたいなもの。秋採用で優秀な学生を確保するための最大の戦略は「三顧の礼」にあった

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筆者:かるび 1975年生まれ、東京都在住。前職は都内システム開発企業にて人事・採用を主に担当。 40歳を機に、17年間のサラリーマン生活を一旦休止し、期間限定の自主的なサバティカル生活へ突入。 現在は主宰ブログ「あいむあらいぶ」にて日々の雑記を更新中。
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人事タックル読者の皆様、こんにちは。

今日のテーマは、「夏以降の新卒採用のあり方」です。僕自身の経験を踏まえながら少し書いてみたいと思います。

7月28日にリリースされたあさがくナビの最新資料を見ると、’17新卒大学生の内定率は早くも85%を超えました。また、就活継続中の学生は、すでに全体の4割を切っているようです。

やはり、ここ数年続く売り手市場の傾向は今年も変わりませんね。昨年と変わったのは、内定出し解禁のタイミングが昨年度の8月1日から、6月1日へと2ヶ月前倒しになったため、夏休み前にすでに新卒採用スケジュールの全日程を終えた会社が増えたことです。

しかし、この圧倒的売り手市場でも、まだまだかなりの会社が新卒採用を夏以降も継続することになります。また、秋以降に帰国する海外留学生や秋季卒業の学生をターゲットにした秋採用をルーティーンとして実施する会社も多いと思います。

では、通常の採用と夏以降の採用(以下、『秋採用』)では、採用側のスタンスとして何が違ってくるのか、秋採用ではどのような心構えで臨むのがいいのでしょうか?

その前に、まずは、新卒採用における秋採用の特徴を考えてみましょう。

優秀な学生が少ない、「砂金すくい」のような秋採用の特徴。

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1:優秀な学生の割合は少なくなっている

どの企業から見ても優秀な学生は、やはり引っ張りだこになります。
通常の新卒採用スケジュールにしたがって就職活動を行った場合、優秀な学生はほぼ100%夏までに意中の会社に内定を持っているものです。極端なケースだと、3年次のインターンシップ終了時点で青田買い的なアプローチを受けている学生もいるでしょう。

この売手市場で内定を非常に獲得しやすい状況でまだ内定をもらえていない学生は、優秀かそうでないかと言うと、残念ながら優秀ではない層が圧倒的に多いのです。

だから、秋採用で出会える優秀な学生は、基本的には「何らかの事情で、春に就職活動ができなかった学生層」となります。例えば、留学からの帰国組や、資格試験、公務員試験、部活等で就職活動が秋以降となった学生ですね。この中には、優秀な学生が一定数存在します。

ただし、その絶対数としては非常に少ないのです。言い方は悪いかもしれませんが、僕は、現役の採用担当時代、『秋採用は「砂金すくい」みたいなものだよ』と後輩によく教えていました。

2:とにかく就活を終わらせたい……と考える学生の決断が速い

秋採用では、「とにかく内定を取ったら就活を終わりたい」と考える学生が増えてきます。
春季の就職活動では、「多くの企業を併願し、複数内定を獲得する中から一番良さそうなところを選ぶ」のが学生側の基本的なスタンスとなります。一度に大勢の学生・企業が集中的に動くのでこうなるのですね。

これが、秋採用になると、学生側も採用企業側もその絶対数が少なくなります。すると、中途採用のように「1社1社選考を受けて行き、内定した会社が気に入れば入社する」という学生が増えてきます。また、学生側も、春に比べると焦っています。春から就活を継続している学生は、精神的にも疲れているので、「まずはどこか内定が取れたら就活を終わりたい」と考えるようになるのです。

3:来年度の採用、インターンシップ、中途採用。企業にかかる負担は意外と大きい。

企業の新卒採用活動は、当該年度の採用だけを意識して進めるわけではありません。’17採用を進めるその裏で、来季’18採用の準備を進めなければなりません。加えて、ここ数年はインターンシップを取り入れている会社も多いと思います。さらに、中途採用も活発に行なっている企業の場合はさらに対応工数捻出が難しくなってきます。

こうした新卒関連の採用スケジュールが重なってくると、正直かなりしんどいもの。ダラダラとタイムリミットの2017年3月まで継続すればいい、というものでもなく、どこかのタイミングで最終的な採用活動終了のデッドラインを決める必要はあると思います。

秋採用で優秀な学生を確保するための最大の戦略は「三顧の礼」。誠意を持って学生を迎えられるよう、意識するべき。

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「三顧の礼」とは、本来立場が上の者が、礼を尽くして目下の者を迎え入れる時に使われる故事成語です。三国時代、蜀を建国した王である劉備玄徳が、当代一の軍師と名高かった在野にいた諸葛亮孔明をスカウトする際に、王であるにも関わらず、孔明の元に通いつめて口説き落とした、という有名な話です。

僕は、秋採用においてこの「三顧の礼」的なスタンスが非常に有効だと考えます。

「砂金すくい」のように、優秀な学生はいることはいるけれど、その絶対数は少ない。そういう状況で、私達採用側が取りうる戦略は、「優秀な学生を選抜する」というスタンスではありません。「採用してやっている」という意識を完全に捨て、「我が社に来ていただく」という気持ちで臨まなければなりません。

プロ野球の新入団選手の勧誘には、監督や球団幹部が礼を尽くして勧誘活動を行いますよね?入団してからは、普通の一選手として扱いますが、入団するまでは、ここまでやるか?というくらい、徹底して低姿勢で粘り強く交渉することが一般的です。

優秀な学生を確保する際も、同じロジックが当てはまると思います。貴方の会社が、業界で圧倒的な力を持つ優良・有名企業でない限り、貴方の会社を選んでもらうためには、今も昔も「誠意」が最大の武器になるのです。

それでは、実際にどうすれば、学生に気に入ってもらえて、誠意が伝わるのでしょうか?僕の経験を踏まえて、いくつか施策を紹介したいと思います。

「採用してやっている」のではなく「我が社に来ていただく」。そんな誠意を伝えるための施策。

1:徹底的に学生の話を聞く

秋採用では、春季と比較して、選考志望する学生の絶対数が減少することから、ひとりひとりの学生とじっくり向き合うことができます。説明会を思い切って個別面談説明会にするとか、選考プロセスに手を入れて、より学生の気持ちに寄り添えるような選考プロセスを設計することも可能だと思います。フレキシブルに企画してみてください。

その上で、学生の話を「とにかく丁寧に聞く」。これを徹底しましょう。

丁寧に話を聞くことにより、その学生のことがよくわかるだけでなく、学生側からの共感が高まります。貴方と共感を築くことにより、学生側は自分の話をしているだけなのに、会社に好意を抱いてくれるのです。

また、面接でも、丁寧に学生の「よいところを見つけ出す」気持ちで質問をしていくと、学生側の共感を得られることが多いです。趣味や特技へ深く質問したり、時には話を脱線しても場を盛り上げるようにするなど、「面接」ではなく、お客さんを目の前にした「商談」をやっているくらいの気持ちで臨むとうまくいきます。

僕の現役時代の最終年では、説明会後に個別相談を実施して悩みを聞いたり、面接ではタブーなく学生の趣味や特技について盛り上げるようにしました。印象的な時間を持てた場合、驚くほど高確率で即時の内定受諾を得ることができました。

後日、「なんでうちの会社にしたの?」と聞いたら、「あの時趣味の話を聞いてくれたのは、かるびさんだけでした」と。これを聞いて、「とにかく話を聞くこと」の重要性を痛感したのです。

2:焦る学生の気持ちに応えるため、企業はクイック・レスポンスを心がける

秋採用では、学生側も焦っています。一日でも早く会社を決めたい、という思いを強く持っている学生は非常に多いです。

そんな彼らが悩むのは、「選考を受けた会社からのレスポンスが悪い」。“サイレントお祈り”なんていう就職関連の単語も生まれるくらい、面接フローが進む中で、企業側からのレスポンスが遅いことが彼らの大きな悩みの種なのです。

そこで、秋採用では、これまで以上に、クイックレスポンスでどんどん選考フローをまわしていきましょう。対応の早さが、優秀な学生の確保に大きく寄与します。

3:来て欲しいという「誠意」を効果的に伝えるためにはオリジナルの工夫を。

ダメ押しには、貴方の誠意を伝えるためのオリジナルの工夫をしましょう。素早いレスポンスにプラスアルファを乗せることで、確実に貴方の「来て欲しい」という気持ちが伝わります。

例えば、僕の現役時代は、内定出しを終えた学生に、即日手書きで採用担当としての気持ちを伝える手紙やはがきを作り、ポストへ投函していました。他社が滅多にやらない施策だから響くし、親御さんの目に触れ、安心していただける可能性も高いわけです。

これをやっておくだけで、内定辞退率は半分以下になりますし、たとえ内定辞退や早期退職となってしまった場合も、トラブルへと発展することを未然に防ぐ効果があります。

ぜひ貴方の会社でも、こうした独自の「誠意」を見せる工夫をしてみてください。秋採用だからこそ、こうしたプラスアルファは確実に効果が上がる施策となります。

精神的にも体力的にも負担になる秋採用。そんな時にこそ、丁寧な対応が優秀な人材の獲得につながる。

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採用担当にとって、秋採用は意外に精神的にも体力的にも負担になるもの。中途や次年度新卒採用と並行して進めなければならないし、何より採用目標予定数に到達できるかどうか、毎日やきもきして消耗しがちです。

でも、それは学生側も同じこと。

そんな時こそ、基本的な姿勢を見直し、採用活動を通常期以上に丁寧にやることが大事です。春季と違い、少人数への個別対応が可能な時期ですので、お互い人間味のある、顔が見える採用活動を行うことが、シンプルに成功へのカギになります。覚えておいていただければと思います。

採用担当のみなさん、がんばってくださいね。

それではまた。

かるび

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