2016/06/27 公開

中小企業だからって油断していない?女性活躍推進法が「義務」になる前に強化するべき女性採用・定着の3つのポイント

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筆者:かるび 1975年生まれ、東京都在住。前職は都内システム開発企業にて人事・採用を主に担当。 40歳を機に、17年間のサラリーマン生活を一旦休止し、期間限定の自主的なサバティカル生活へ突入。 現在は主宰ブログ「あいむあらいぶ」にて日々の雑記を更新中。
ブログ:あいむあらいぶ
twitter:@karub_imalive

人事タックル読者の皆様、こんにちは。

政府の強い主導の下、今年の4月から、女性活躍推進法(女性の職業生活における活躍の推進に関する法律)が施行されていますね。これを受け、各企業の人事労務や採用担当は今後より一層女性社員の採用、キャリア推進に力を入れる必要が出てきました。今日は、特に「中小企業」での女性採用や、社員定着についての強化策について少し書いてみたいと思います。

女性活躍推進法ができた経緯って?

女性活躍推進法は、首相官邸主導で、政府により取りまとめられた『日本再興戦略』改定2014年版において盛り込まれた提言に基づいて2015年8月に制定されました。施行は2016年4月からです。

アベノミクス3本の矢のうち、金融政策、財政政策に続く最後の矢、つまり経済成長戦略の一環として、日本の少子高齢化の進行による労働力人口減少への対策が急務であり、より一層、各企業での登用の推進が必要とされました。具体的な数値目標として、2020 年に指導的地位に占める女性の割合 30%」を達成するために、各企業は、女性幹部比率の開示や、女性の登用方針についてのアクションプランを情報開示しなければならないこととされました。

これが、女性活躍推進法が作られた主な経緯・理由となります。

これを受けて、従業員が301人以上いる会社(つまり大企業)は、女性の活躍推進を図るための具体的な数値目標を含めた行動計画を労働基準監督署に提出し、その内容を周知しなくてはならなくなりました。(※従業員300人以下の企業は、当面努力目標とされる)

中小企業だからって安心してない?「努力義務」はいつかは「義務」になる

もちろん、女性活躍推進法が制定されるかなり以前から、各企業の人事・労務担当者は、中長期での女性登用・女性採用の重要性については重々理解していたとは思います。ただ、度重なる男女雇用機会均等法の改正強化、さらに今回の女性活躍推進法によって、「あー、そろそろちゃんとやらなきゃね~」と、単なる課題意識を持っているだけではダメで、各企業に具体的な実効性を持った対策の実施が必須な状況へとなってきているわけです。

え?これは適用が大企業に限定されるからウチはOKだな?ですって? だとすると、それは、少し甘いかもしれませんよ。確かに、中小企業では、2016年4月時点では、同法の適用は「努力義務」とされ、アクションプラン提出や情報開示義務は免除されています。

でも、これはあくまで中小企業への経営悪化に対する負担軽減や、激変緩和措置として一時的に「努力義務」とされているだけで、他の類似する法律の施行状況を見ていると、本法律もいずれ時期を見て「義務」へと格上げされるのは目に見えているからです。

つまり、事実上、全ての会社に対して、国や社会から具体的な実のある対策を期待されているのです。どうせ法律的にも将来必ずやらなきゃいけないのであれば、これを機に、貴方の会社でより一層女性が活躍できるように対策を考えてみませんか?

日本企業では圧倒的に女性管理職が足りていない

では、貴方の会社では、具体的に女性の管理職はどれくらいいるでしょうか?推進法が期待する女性管理職の目標比率は、「30%」です。でも、これ、中小企業・大企業を問わず、非常に厳しい数値なんですよね。

平成27年の男女共同参画白書によると、日本の管理的職業従事者における女性割合、つまり女性管理職の比率は、わずか11%となっています。西欧諸国と比べて、あまりにも寂しい数値となっていますね。

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(引用:http://www.gender.go.jp/about_danjo/whitepaper/h27/zentai/html/zuhyo/zuhyo01-02-11.html

職場での女性活躍で考えるべき3つのステップ

では、この絶望的な数値から、最終的に女性管理職比率を30%に引き上げるには、具体的にどうしたらいいのでしょうか?

まず、指標とされる数値は、女性管理職の比率なのですから、はっきりいって、一朝一夕には達成できる数値ではありません。管理職に昇進昇格させるためには、採用してから短くても4~5年、普通なら10年程度の社内就業実績が必要なのではないでしょうか? つまり、女性管理職を増やすためには、「採用した女性労働者に長く働いてもらうこと」が絶対条件となります。

では、次に女性に長く働いてもらうにはどうしたらいいのか考えてみましょう。シンプルに考えて、女性のキャリアにおける一番のポイントは、「労働と生活の両立」です。女性でも管理職であれば、概ね年齢的には30代後半くらいからとなるかと思います。すると、例えば新卒や中途で20代で入社するとして、管理職に昇格するまでの10年ちょっとの間に、女性には「出産」「育児」という男性にはないライフイベントが入ってくることになります。また、両親や親族が老齢になるに従い、しばしば「介護」もプライベートでは重いタスクになることもあります。

つまり、女性に長く働いてもらうには、仕事を続けながらこういった出産、育児、介護にも配慮した、「両立支援」が不可欠になるわけです。

さらに、これらを制度としてしっかり組み込んだ上で、採用における女性比率も向上させる必要があります。特に製造業やIT、建設業あたりでは、そもそも採用における女性比率が最初から低く、管理職どころか、採用時点からすでに女性比率が「30%」を切ってしまっているわけですから。

これを時系列でまとめると、女性活躍推進の鍵となるポイントは、以下の3点になると思います。

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では、どこから手を付けたらいいのだろうか?

僕は、この3ステップのうち、特に「1.女性採用比率の向上」、と「2.生活環境変化による離職防止策」、この2つについてまず重点的に実施すべきだと思います。なぜなら、いきなり女性管理職登用数を増やせ!と言っても、そもそも今すぐの時点だと、管理職を担える絶対的な女性数が社内に不足している企業が大半だと思われるからです。

だから、まずはとにかく「長く勤続したい」優秀な女性を多数採用する。そして、彼らに長く続けてもらうための施策として、すぐに手をつけられるところから取り組んでいくのが現実的だと思います。

では、実際に今日からすぐに取り組めて、コストが比較的かからず、かつ効果が上げやすい採用・定着のための具体的施策とは、どのようなものがあるのでしょうか?具体的に、3点ほど効果が高いものを紹介したいと思います。

すぐにできる施策1:福利厚生の内容を法定の「最低限」を少しでも上回ろう!

さて、女性が就職先を選ぶ際に、男性と比較して、特に重視するポイントはどのあたりにあるのでしょうか?それは、「就業場所」と「福利厚生」なのです。

「就業場所」とは、具体的には「転勤がない」ことだと言い換えてもいいかもしれません。「福利厚生」では、「産休・育休」「介護休暇」「フレックス」「労働日数」等、主に労働時間の長さやフレキシビリティを見ています。

具体的なデータとして、ハッキリ出ているものがありますので、紹介しておきます。

就活前の大学生を対象とした2017年度マイナビ大学生意識調査によると、企業選択のポイントとして挙げられた項目のうち、「就業場所」「福利厚生」についてそれぞれ「重視する」と回答した女性が、文系・理系を問わず、男性の1.5倍以上になっています。

明らかに差が見て取れますね。

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では、具体的にどうすればいいのか?というと、おすすめは、労働基準法を始めとした、各種労働法規に基づいて、就業規則で定められた休日・休暇系の出来る範囲での見直しを行うことです

例えば、有給休暇。中小企業・大企業とも、大抵の会社は法律通り、つまり言い換えると法律で定められた最低限分しか付与していない会社が大半かと思われます。だって、みんな大量に余らせているくらいですからね。

現状の労働基準法を見てみると、例えば、「初年度は、入社半年後に最低10日分の有給休暇を付与する」ことが最低限各企業には義務付けられていますが、大半の会社はこの労基法の記述通りにしか、有給休暇を支給していないはずです。例えば、これを「入社後即日5日分は前倒しで付与する」とか、「入社半年後に12日支給する」など、少しだけでも法律を上回るようにするのです。

また、有給休暇以外でも、産前産後休暇を法定より長くする(法定では産前は6週間、産後は8週間)、子供の育児のための所定労働時間短縮措置(法定では子供が3歳になるまで)を、子供が小学校を卒業する12歳まで認める、とか、看護休暇/介護休暇(法定では5日間、通常無給で付与)を無給ではなく、有給で5日間与えるなど。いろいろとアイデアは出てくると思います。

よくよく点検してみると、有休や産休、育休等についての休暇規定は、検討するのが面倒だからという理由もあり、ほとんど「最低限の労働法通り」となっていることが多いものです。こういった出現頻度が低い休暇については、少し条件を緩和しても、実質的には一部の社員が一部の機会にしか使わないので、追加での労働コストはほとんど発生しません。にも関わらず、ほとんどの会社が実行していないため、「法定を超えた福利厚生制度」ということで、求職者に対するアピール効果は非常に大きくて、お得なのです。

すぐにできる施策2:”暗黙のルール”を就業規則へ明文化しよう!

中小企業では良くあることですが、就業規則等で明文化はされていないけれど、なんとなく「フレックス的な出社を認めている」とか、「小さい子供がいる家庭は、残業なしで帰宅OK」とか、暗黙のルールで運用されている「良い」雇用慣行があるかと思います。

これを、積極的に各労働法規とどう対応するのか調べて、就業規則へ明文化しておくことでも、社員に対する安心感が広がります。公的に社外にも「我が社の福利厚生」として明確にアピールすることが可能となります。また、今までにもうなんとなく取り組んでいる雇用上の習慣なので、追加労働コストがかかることもほとんどありません。

すぐにできる施策3:社内外へのPRを強化しよう!

上記対策1、2で、福利厚生を充実させ、その内容を就業規則や社内ルールに明記したら、その情報を整理し、わかりやすくしてから、積極的に社内外へのPRも行ないましょう。

社内でのアピールは、社内のイントラネットやグループウェア、社内報などで必ず掲載・周知するようにしましょう。また、社外的には、採用広告媒体やハローワークなどの求人票、それから会社説明会資料などにも、どんどん記載して、求職者の反応を見ていくと良いと思います。

また、余裕があれば、各自治体が実施している、「女性採用推進」系の公募表彰制度などにも応募してみると良いと思います。例えば、東京都の例だと、「東京都いきいき職場推進事業」として、毎年、「東京ワークライフバランス認定企業」というアワードを設定しています。こういった表彰制度に積極的に公募してみて、もし認定されたら、それは非常に女性に易しいホワイト企業である何よりの証拠として、社内外へのアピールの強力な材料になりますね。

女性活躍推進の鍵は「採用」と「定着」にあり

職場における女性活躍推進は、今日、明日で一気に達成できるものではありません。長い年月をかけて、少しずつPDCAサイクルを回しながら達成に向けて取り組んでいくものです。では、何から手を付けなければいけないのか?というと、まずは基礎固め・土台固めになると思うんです。中途/新卒を問わず女性の採用数を増やし、職場における女性の定着率を高めていくことで。

今回は、その第一歩として、「採用」と「定着」に目をつけ、そのために、今日から低コストで実行できる、効果的な対策を幾つか紹介してみました。少しでもみなさまのお役に立てたなら、光栄です。

それではまた。

かるび

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かるび
1975年生まれ、東京都在住。前職は都内システム開発企業にて人事・採用を主に担当。 40歳を機に、17年間のサラリーマン生活を一旦休止し、期間限定の自主的なサバティカル生活へ突入。 現在は主宰ブログ「あいむあらいぶ」にて日々の雑記を更新中。 ブログ:あいむあらいぶ twitter:@karub_imalive