2016/03/25 公開

「その志望動機、ウチじゃなくても良くないですか?」と聞く採用担当は、学生に「そのとおりだよ」と笑われている。

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筆者:安達裕哉
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。
ブログ:http://blog.tinect.jp/

新卒採用選考の時期になり、会社説明会を経て、面接も始まっている時期です。
そして毎年この時期になると、学生から持ち込まれる相談の1つが、「志望動機」についてです。

志望動機は面接時に必ず聞かれることの1つであり、「なぜウチを志望したのか?」という答えにくい質問です。そしてこの質問が、採用側と学生の間に深い溝を作る一つの要因ともなっています。

なぜでしょうか。

それは、学生が志望動機を一生懸命考えて回答しても、採用側も「その志望動機、ウチじゃなくてもいいよね」
という切り返しをされることが非常に多いからです。

採用側が気付いていない”学生の本音”

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例を挙げましょう。

採用側:「志望動機を教えて下さい」

学生:「はい、御社が顧客を大切にしていると感じたからです。webページや店舗のポスターに「きめ細かい迅速な対応を約束します」と記載がありましたが、これを体現しているのが御社です」

採用側:「その志望動機、ウチじゃなくてもいいよね……。どこもお客さんを大事にしていると思うよ。」

学生:「……はい(お前のとこのページに書いてあるから言っただけじゃないか)」

上の会話を見て、どう思うでしょうか。

ここには2つの解釈があると思います。

1つ目の解釈は、学生が「企業ごとのちがい」をきちんと理解していない、情報収集不足であるという可能性です。
細かいところを見れば、他の企業との差を打ち出しているのかもしれませんし、担当者としては「細かいところも見て欲しい」という気持ちなのかもしれません。

そして2つ目の解釈は、学生が本当に「ウチじゃなくてもいい」と思っている可能性です。
むしろこちらのほうが学生の本音に近いのではないでしょうか。
要するに「どこも大して変わらないんだから「ウチじゃなくてもいい」のは当たり前。内定くれたところに入るよ。」ということです。

「ウチじゃなくてもいい志望動機」が聞かれる理由は”どこも大して変わらない”中小企業のせい

「内定くれたところに入るよ」という学生の本音は、
採用の担当者からすれば我慢がならない話かもしれません。

ですが実際のところ、中小企業の殆どの会社のサービスや商品に関する僅かな差を、学生たちは区別できません。

いや、学生たちだけではありません。むしろ顧客ですら、区別できていないのではないでしょうか。

中小企業が、中小企業にとどまっている大きな理由の1つは「どこも大して変わらない」です。
「本質的な差別化」や「大きな他社とのちがい」を作り出している会社は、大きく成長できる会社です。
そうでない会社は、顧客にも「ウチでなくてもいいけど、まあ、今までの付き合いもあるからね」と思われているのです。

したがって、学生から「ウチでなくてもいい志望動機」が多く聞かれるということは、学生たちの責任ではないと考えても良いでしょう。

本当に聞くべきなのは”会社への志望度合い”ではなく”職業への志望度”。

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どこにでもありそうな平凡な会社の採用担当者が「ウチでなくてもいいでしょう」と学生に切り返すのは、まさに「笑い話」に他なりません。
本当にそのとおりなのですから。

学生は「見えない他社との違い」を一生懸命さがして、無理やりちがいを言わされているのです。
これが、採用側と学生間の深い溝の原因となっています。

では、採用担当者はどう考えたほうが良いのでしょうか。
「熱意」や「志望度合い」をどのように判定すればいいのでしょうか。

そのために、採用担当者は一旦「うちの会社は特別」という考え方を捨て、「学生は、我々を数ある会社の一社としか見ていない」と、謙虚に考える必要があります。

したがって志望動機は「その会社に対する志望の度合い」ではなく「その職業に対する志望の度合い」を聞いたほうが 遥かに実りある面接ができます。

例えば
「なぜ他の職業ではなく、ITのエンジニアになりたいと思ったのですか?」
「介護に携わりたいなら、なぜ介護の現場ではなく、営業職を志望したのですか?」
と言った質問のほうが遥かに有効です。

こういった質問であれば、
「はい、私はプログラミングを中学生の時からやっていまして、これを一生の仕事にしたいと強く考えていました。実際に学生の時にはハッカソンにも出場し……」
や、
「はい、介護の現場で仕事をするよりも、自分の気質として営業に向いていると感じたからです。ただ、物を売ったりシステムを売ったりする営業ではなく、私の祖父の介護で大変家族が苦労しているのを見て、「介護」という業界には関わりたいと思いました」
といった回答が得られる可能性がある。

「ウチじゃなくても良くないですか?」は愚問。

学生たちの本音においては、「その会社になんとしても入りたい」はごく少数であり、
「この仕事ができて、ある程度しっかりしている会社なら、どこでも良い」のほうが遥かに多いでしょう。

したがって、採用担当者は自社の「他社とのちがい」を過信せず、
「この学生はどんなバックグラウンドがあって、この職業を選択するに至ったのか?」を聞くように努力しなければ良い学生にそっぽを向かれてしまうでしょう。

そう考えると「ウチじゃなくても良くないですか?」という切り返しは、愚かな行為といえます。

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安達 裕哉
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。 ブログ:BooksandApps