良い上司は「煮込み料理の料理人」に例えられる。上司は部下を褒めずに、気づいて認めるだけでいい

2016/02/22
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筆者:安達裕哉
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。
ブログ:http://blog.tinect.jp/

マネジメントに関する書籍を見たり、web上の記事を見ると「部下を褒めよ」と指導するものが非常に多い。
だが、現場の実感値を元に話すと、これはあまりお勧めできない

「部下を褒めよ」は劇薬、無考えなら言わない方がマシ。

部長 「昨日の報告書はよくかけていた。良かったよ。」

部下 「は、はい……(10分位で書いたものなんだけど…)」

部長 「今月の成績がかなりいいじゃないか。この調子で頼むよ!」

部下 「は、ありがとうございます!(……たまたま大口が取れただけなんだけどね……。ま、いいか。)」

今まで褒めることをしていなかった人が急に人をほめだすと、実は逆効果であることが多い。「部下をよく見ていない人がテキトーに褒めている、」という印象を持たれてしまうのだ。

「いきなりホメられたけど、なにか不気味でした」

「どこかの研修に行ったあと、部長が褒めだしたので、わざとらしさを感じました。」

「褒めてもらっていますけど、口先だけで本当はそう思っていないように見えます」

これが現場の実感値ではないだろうか。「褒めよ」は万能薬ではない。むしろ劇薬として取り扱うべきだ。わざとらしい褒めをするくらいなら、何も言わないほうがまだ良い。

褒められても嬉しくないのが”大人”の社会

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人を褒めるのは、非常に難しい。小さい子供であれば純粋に「褒められたら嬉しい」で終わってしまうだろうが、相手が大人であれば、そんな素直な人はいない。

あからさまなものは「お世辞」「ヨイショ」と言って、逆にバカにされたような気持ちになる人も多い上、謙遜の美徳を持ち合わせている人にとって「褒められる行為」は嬉しいよりも恥ずかしさが先に来てしまうこともある。

部長 「今月の敢闘賞は、Uさんです。皆も見習うように。では、成果の秘訣を発表して下さい。」

Uさん 「は、はい。(発表苦手なんだよな……)ゴニョゴニョ……ゴニョゴニョ……」

周りの人 「(Uさん、何言ってんだかわかんないよ。)」

また、褒める対象も難しい。技術者に向かって「元気が良くていいね」という褒めは、特に嬉しくもないだろう。場合によっては「技術がダメってことですか」といいたくなる人もいる。シチュエーションや、その人の個性を見極め、適切なタイミングで、適切に声をかける。褒めることは実際、かなりの高等技術だ。

上司は「褒め」でナメられ、「認める」で信頼される

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では「褒める」ではなくどうすればよいのか。褒めることなしに上司と部下が良い関係を築くことはできるのか。

もちろんできる。

実際、上司と部下が良い関係を築くことができるのは「褒め」ではなく「認めること」によってである。それは「親しさ」ではなく「信頼」を生む。

あなたも覚えがあるだろう、無愛想で人付き合いが悪く、口下手の上司が、実は誰よりも尊敬を集めていたことを。

部下は、話しかけやすい上司や、自分のことをホメてくれる上司を信頼するのではないのだ。「自分のことを見て、自分のために気を遣ってくれている人」を信頼するのだ。お世辞をつかい、へりくだる上司を、部下は上司とは認めない

「ナメられたらおしまい」なのが、上司と部下の関係だ。

「認める」とは部下の行動に気づいてあげること。

それでは「認める」とは何か。具体的にはどのように上司は行動すべきか。

簡単である。部下の細かい行動を見るだけでいい。そして、評価すべきものがあれば、それに気づいて、伝えるだけでも良い。

「昨日の提案書の提出は早かった」

「お客さんから『提案が良かった』と言われていた。」

「部署のキャビネットを整理してくれたのか。」

「率先して幹事を引き受けてくれたらしいな。」

それだけで、部下は上司が見てくれていることを知る。そして、良い上司であればあるほど、細かいところをよく見ている。

「え、そんなところまで見ていたんですか」

「あの人、すごい皆をよく見てるよね」

というセリフは、部下からの賛辞である。とにかく、細かいところに気づくことが重要なのだ。細かいところに気づいて、それを口にするだけでよい。それが「認める」という行為だ。

良い上司は「煮込み料理の料理人」に例えられる。部下の安心感を損なう「マイクロマネジメント」になってはいけない

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だが、上司の側としては「細かいところまで全部見ていると、部下から「監視されている」と思われるのでは?」という心配を持つ方もいるだろう。

もちろん、いくら「見るのが重要」と言っても、注意点もある。部下の仕事を監視したり干渉したりする、マイクロマネジメントになっては上司としての信頼を損なう。

「監視されている」と「よく見ていてくれている」を分かつのは、ただひとつ。

「部下が、自分のやり方でやっているか」だ。

上司が仕事のやり方を指示してしまうと、部下は「見張られている」と感じる。
しかし、仕事のやり方は指示せず

「ま、とりあえずやって見給え。わからないことがあったらどんなくだらないことでも相談しなさい。」

といえば、部下は安心して取り組める。

おそらく、上司は部下の細かいところを見るといろいろと不満を感じるところもあるだろう。そこで矢も盾もたまらず口出しを始めると、部下は「信用されていない」と感じてしまう

「見ていて、なおかつ口を出さない」から、部下は上に対して感謝するのだ。「監視」「認めている」ことの本質的なちがいは、そこにある。

良い上司は「煮込み料理の料理人」に例えられることがある。

「材料を鍋に放り込んで、後は時間をかけて煮るだけだ。余計にかき回したり、煮えているかどうかを気にして、蓋を何度も開けたりしてはいけない。材料が煮崩れてしまう。ただし、鍋から目を話してはいけない。火加減を見、音を聞き、焦げつかないように見守るのだ。」



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安達 裕哉

1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。
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