2016/02/03 公開

人事評価に”公平さ”を求めるな。優れた人事制度とは、評価の低い人を奮起させる仕組みである。

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筆者:安達裕哉
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。
ブログ:http://blog.tinect.jp/

人事評価制度のコンサルティングを行っていると、様々な要望をいただく。

「社員のヤル気を上げたい」「働いた人に報いたい」という前向きなものから、「人件費を削減したい」「低評価をつけて、特定の社員に辞めてもらいたい」というむき出しのものまで様々である。

ただ、かなり長いこと人事評価に関わっているが、経営者が「公平な評価をしたい」という会社には、ほとんど巡りあったことがない。

現場では人事評価に「公平さ」はあまり求められていないのだ。

人事評価は”会社のパフォーマンスを高める”ためにある

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なぜそのようなことが言えるのか。それは、人事評価の目的は「会社のパフォーマンスを高めること」にあるのであって、「公平な評価を実現すること」ではないからだ。題目としては、公平であることは重要なのだが、現実は違う。ここを勘違いしていると、人事評価の本質を見誤ることになる。

「その意見はおかしい」という方も居るだろう。 実際、このような説明をすると、「公平な評価が、会社のパフォーマンスを高めるのだから、公平な評価が必要だ」と主張する方も数多くいる。なるほど、それはそうかもしれない。ただし、それは皆あなたと同じように考えているわけではない。

例えば、そのような方にはこう質問する。

「公平である、とはどのような状態を指すのか?」

それに対して、「数字をあげた人が報われることが、公平だ」 という人もいれば「経営者が高く評価している人が報われることが、公平だ」 という人もいれば、「会社の雰囲気を良くする人が報われることが、公平だ」 という人もいる。

おそらく、様々な公平があるのだ。だがそこで、一度考えて欲しい。例えば 「数字はあげているけど、経営者からはあまり好かれておらず、職場の雰囲気を悪くする人は 報われるべきか?」

という問いにどう答えればよいだろうか?

人事評価に”公平さ”を求めるな

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「数字が優先だ」という人もいれば、「職場の雰囲気優先だ」という人もいるだろう。 経営者の中には「気の合う人とやりたい」という人もいる。職場の雰囲気を優先する会社では、上に挙げた人は評価が低くなるだろう。

それは経営者からすれば「公平」だが、評価をされる人にとっては「数字はあげているじゃないか。不公平だ」と言うだろう。

お気づきのことだと思うが、「公平さ」は人によって大きく異なる。だから、公平さは人事評価制度の主軸には成り得ない。 正確に言えば、公平さとは何かについて合意を取ることができないので、ちょうど「正義」が法治国家の裁判の主軸にならないように、公平さを主軸にすると、評価は制度として機能しない。

人事評価制度を考えるときには「公平さ」は一旦脇に置くべきだ。むしろ置かなくては先に進めない。

評価が低い人に奮起してもらうために人事評価がある

では、何を軸に据えるべきか。
本質的には多くの経営者と管理職は、会社のパフォーマンスを向上させるためには評価において

1.経営者、管理職が高く評価したい人が、きちんと高く評価される
2.評価の低い人であっても、それに納得して奮起してくれる
の2点が重要であると考えている。

つまり、上の人が「この人は頑張って成果を出した」と思っている人にきちんと高い評価がつき、上の人が「この人の働きは微妙」と思っている人には低い評価がつくが、評価された人はそれに負けず発奮してくれる、そんな人事評価制度が理想なのだ。

だから、極端にいえば、評価制度は字面と異なり「評価をするための制度」ではなく、「評価の低い人にうまく評価を伝えるための制度」にすぎない。

人事評価に必要なのは「低い評価を伝えるしくみ」

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だから人事評価制度には、以下の3つのことが制度に含まれていることが 重要である。これらはいずれも「低い評価を伝えるしくみ」でもある。

1.評価の根拠・証拠が提出されている
どのような基準と、実績で評価されたのかが、評価を受ける側に示されている。

2.上司が評価者として受け入れられている
上司が失礼な態度を取ったり、上司が部下に無関心であったりしない。

3.評価が低かった場合、今後どうすれば評価が高くなるのか、教えてもらえる
評価を高くするには具体的に、行動としてどうすればよいか、の具体的施策が評価者から授けられている

これらの条件をみたすことができれば低い評価の人も概ね納得感を得て、発奮してくれる可能性が高い。

人事評価制度は「公平さ」という曖昧なものを目指すのではなく、「評価の低い人に、きちんと評価を受け入れてもらう」という 現実的な問題に対する解を与えるものでなくてはならないのだ。

安達 裕哉
1975年、東京都生まれ。Deloitteにて12年間コンサルティングに従事。マネジメント、IT、人事コンサルタント。現在はコンサルティング行う傍ら、学習塾の経営を行い、人材育成に注力している。 ブログ:BooksandApps
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