2016/09/23 公開

社員の満足度を高めたいのなら、“バースデー休暇”なんて無意味。まずは有給休暇取得率の向上と法定の休暇・休業制度の整備を優先すべき。

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筆者:安部敏志
大学卒業後、13年間、国家公務員I種として厚生労働省、外交官として在シンガポール日本国大使館に勤務し、長野労働局監督課長を最後に退職、労働基準法・労働安全衛生法等の政策立案、企業を指導する立場にいた経験を武器に、現在は会社(事業)を守る立場として、地元の福岡で社労士事務所を経営。人事労務管理の秘訣を本音で紹介するサイト:Work Life Funを運営

こんにちは、社会保険労務士の安部敏志と申します。

職業柄、私の事務所には、「社員に気持ちよく働いてもらえる人事制度を構築したい!」、「法令に沿った人事制度になっているだろうか?」というまじめなご依頼が多く来ます。

しかし、そんな中、まれに「ちょっと待った!」と言いたくなる制度の導入を進めようとしているケースがあります。

バースデー休暇なんてたった1日休みを増やすだけなのに、有給休暇取得率はたったの47.6%!

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その制度とは、バースデー休暇です。一時期流行りましたね。事業が順調な会社の福利厚生を取り上げる特集などで注目されたりして。

でも、「弊社ではバースデー休暇を採用しており、社員の働きやすさを促進しています」って言っても、年1日の休暇がプラスされるだけですよね?

もちろん、私は法定外の休暇制度を導入することに反対はしません。ただ、まずは法定の制度をきちんと整備することが先決だと考えます。そもそも年次有給休暇であれば、用途が限定されないし、はるかに使い勝手がいいわけです。

それ以前に、あなたの会社の有給消化率は100%になっていますか?

最新の統計を確認してみると、平成26年の有給休暇取得率は47.6%となっています(参考:平成27年「就労条件総合調査」)。

つまり、せっかくある有給休暇なのに、半分も利用していないのです。

まずは有給休暇の100%取得を目指しましょう!話はそれからです。

法定の休暇・休業制度は、有給?それとも無給?

これまで有給休暇の話をしてきましたが、それ以外の法定の休暇・休業制度をご存知でしょうか?

産休、育休というのはすでに一般的になっていますが、そのほかにも法律によって義務づけられている休暇・休業制度は、こんなにあります。

・年次有給休暇
・産前産後休業
・生理休暇
・育児休業
・介護休業
・子の看護休暇
・介護休暇
・裁判員休暇

私の事務所では、就業規則の策定・見直しに関するご依頼を多く受けていますが、これらの休暇・休業制度について就業規則で完全に整備されていた会社は今のところ1つもありません。

もちろん、就業規則への規定義務があるわけではありません。ただ、規定されていないと忘れがちですし、規定していなくても社員から請求されたら会社側は拒否ができません。

また人事が留意すべき点は、これらの休暇・休業制度について、法律に書いていない部分は会社が独自に定めることができるのに、その権利を放棄してしまうことです。

例えば、年次有給休暇は、まさにその言葉どおり有給ですが、その他の休暇・休業はすべて会社が独自に有給・無給を定めることができます。

簡単にそれぞれの休暇・休業制度の概要をご紹介します。

1. 年次有給休暇

対象者:6か月以上継続して勤務しているすべての労働者

日数:原則として6か月継続勤務で10日、ただし短時間労働者の場合はそれより少ない場合あり

給料:有給

2. 産前産後休業(産休)

対象者:妊娠・出産するすべての女性労働者

日数:産前6週間(多胎妊娠の場合14週間)、産後8週間

給料:有給・無給どちらでもよい(健康保険からの支給あり)

3. 生理休暇

対象者:生理日の就労が困難な女性労働者

日数:希望の日数(上限なし)

給料:有給・無給どちらでもよい

4. 育児休業

対象者:原則として、1歳未満の子を育てる労働者

日数:産後休業終了後から子の1歳の誕生日まで(保育所に入所できない場合等は1歳6か月まで可能)

給料:有給・無給どちらでもよい(雇用保険からの支給あり)

5. 介護休業

対象者:原則として、要介護状態の親族を介護する労働者

日数:対象家族1人につき通算して93日まで

給料:有給・無給どちらでもよい(雇用保険からの支給あり)

6. 子の看護休暇

対象者:原則として、病気や看護が必要な小学校就学前の子を育てる労働者

日数:対象となる子が1人の場合は年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで

給料:有給・無給どちらでもよい

7. 介護休暇

対象者:原則として、要介護状態の親族を介護する労働者

日数:対象となる親族が1人の場合は年間5日まで、2人以上の場合は年間10日まで

給料:有給・無給どちらでもよい

8. 裁判員休暇

対象者:裁判員等に選ばれた労働者

日数:裁判員の仕事に必要な日数

給料:有給・無給どちらでもよい(本人には1日8000円以内の日当)

このように、制度によっては社会保険による手当もあるため、社員が完全に無給になるわけではありません。同時に法定の休暇・休業制度とはいえ、会社としては無給と定めてもまったく構わないのです。

社員の満足度を高めたいならまずは足下から。

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人手不足が叫ばれる今の時代、まだ見ぬ新しい人に淡い期待をするよりも、まずは今いる社員の満足度を高めるべきです。

そのため、人事部が行うべきことは法令遵守です。新しいこと・目立つことに手を出す前に、まずは足下を固めましょう

そして、本当に社員のことを考えたいのであれば、社員の要望を聞きながら、会社独自の上乗せを検討すればいいわけです。

例えば、ある女性社員が多い会社では、月1日分の生理休暇は有給、それ以降は無給としています。月1日ということは年間12日、年次有給休暇の原則的な最低日数は10日ですから、それよりも多い日数を有給にしている……この事例、すごいと思いませんか?ちなみに、その会社の有給取得率は90%を超えています。

では、有給休暇を取りづらい会社ってどうなんでしょう?最近のアンケート調査「有給休暇が残っているのに取りづらい理由、1位は?」は、「上司・同僚が有給休暇を取らない」からだそうです。おそらく、有給休暇を取得しようとする際の雰囲気が悪い会社なんでしょうね。

法律で認められている休暇を社員が遠慮なく利用し、お互い様だからと日程や有給・無給かを調整し合える会社を目指したいものです。

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安部敏志
大学卒業後、13年間、国家公務員I種として厚生労働省、外交官として在シンガポール日本国大使館に勤務し、長野労働局監督課長を最後に退職、労働基準法・労働安全衛生法等の政策立案、企業を指導する立場にいた経験を武器に、現在は会社(事業)を守る立場として、地元の福岡で社労士事務所を経営。人事労務管理の秘訣を本音で紹介するサイト: Work Life Funを運営
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