2017/06/21 公開

【前編】「クオリティと契約。両方の責任を取った結果が『今夜はブギー・バック』」・Bose(スチャダラパー)

失敗ヒーロー!

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名曲『今夜はブギー・バック』誕生秘話

――まさにとんとん拍子ですね。さらにメジャーデビューから3年後には、スチャダラパーを語るに欠かせない『今夜はブギー・バック』をリリースされています。

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Bose インディーズで1枚、メジャーで2枚とアルバムを出して、ちょうど“新人として一区切り”という時期だったんですね。メジャーとなると「3年3枚」とか、レコード会社と契約を結ばなきゃならない。その区切りの時期に来て、「もう少し作らないと契約に満たない。だけどアルバム1枚作るには、時間的にも厳しいよね」という状況から、「ほかのアーティストとコラボした、企画モノのアルバムを作ろうか」という話になって。

――それが小沢健二さんとコラボされた『今夜はブギー・バック』を始め、セッションナンバーが収録された『スチャダラ外伝』ですね。この名曲の裏側に、まさか会社的な事情が隠れていたとは。
 
Bose だってオリジナルアルバム1枚なんて、「ちょっと契約に足りないから作りましょうか」で作れるものじゃない。これはデビュー当時から言っていましたけど、主流になっている3年3枚の契約なんて、絶対に早い。ビースティ・ボーイズなんて、5年に1枚のペースですよ。自分らが憧れているアーティストがそのくらいのペースなのに「追い抜いてどうする!」って(笑)。

ああでもない、こうでもないって行ったり来たりして、完成した曲をひっくり返してという作業を散々するから、アルバム1枚作るには最低でも2年とか、2年半は必要。『4ch Funk』って曲の歌詞にも書いたけど「自称ハイペース、見た目マイペース」ってね、ゆっくりやっているように見えて、自分たちとしては本当に必死だから(笑)。

アーティストとして責任を取るためには「駆け引き」も必要

――それでもレコード会社は、せっついてくるわけですよね。
 
Bose CDがリリースできるのも発売時期とか製作費とか、そういう会社側のマネジメントがあってこそだから、ある程度は仕方ない。それでも僕らはCDっていう、一生、残るものに対して責任を負わなきゃいけないから。だから「3か月で作ってください」という会社に対して「絶対に無理だろ」と心の中では思いつつ、「そうっすね、できると思いたいです(苦笑)」なんて、打ち合わせの段階から誤魔化し、誤魔化し。

で、本格的にヤバい段階に突入すると「本当はどうなんですか?」って、偉い人が順番に出てくるの。そこから「本当にできません」「では、どうにか次の受注にはめましょうか……」って、お互いにぎりぎりのところで譲歩し合うというか。一種の駆け引きですよね。

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――そうした駆け引き、マネジメント側との攻防の上に、スチャダラパーの作品は成り立っているんですね。
 
Bose 『今夜はブギー・バック』にしても、“企画モノ”という形で折り合いを付けたイメージです。レコード会社が提示する期間では、納得のいく曲は作れない。だから仲のいい友人の力を借りることで、作品に対するクオリティという責任を取りながら、レコード会社に対する契約という責任も取ったというか。

「今夜がブギー・バック」はタイム・スリップする

――その結果が50万枚を超える大ヒット。スチャダラパーの名前を、全国に知らしめるナンバーとなりましたよね。
 
Bose あんなに売れるなんて、誰も思っていないですよ。この曲も小室サウンドを中心にCDがバカ売れする時代にあって、『ザ・ベストテン』にあった“スポットライト”的な立ち位置を目指そうと作りましたから。トップ10に入らないような、微妙なランキングの曲を紹介するコーナーがあってね、しばらくして振り返ってみても「なんか変な曲あったよね? 何だっけ? あの変な曲。曲名が思い出せない」みたいな(笑)。

――先ほどお話しいただいた“主流からズレる”姿勢ですね。そんな立ち位置を目指したはずが、今や時代を超える名曲です。
 
Bose よく「タイムレスな曲」っていう表現のされ方をするけど、そこはちょっと狙ったというか、時代をスリップするような構造が隠れていて。分かりやすいところだと「心のベスト10 第一位はこんな曲だった」という歌詞ですよね。“今”の空気を歌っているのに「こんな曲だった」って、まさに振り返るようなイメージ。まずは僕らが全体のストーリーみたいなものを描いて、小沢くんに「『こんな曲だった』っていう、曲を書いてくれ!」ってお願いして。

そんな無茶なお願いだったから、小沢くんも本当に悩んで作ってくれて。結果、すごく変な曲ですよね。サウンド的にもバランス的にも変だし。歌詞も最初はもっと違う雰囲気だったのが、「ダンスフロアに華やかな光」ってフレーズが出てきた瞬間、「何じゃこりゃー!変なのー!」って大爆笑(笑)。小沢くんとも「変な曲できたねぇ」って。

共感を呼ぶ『サマージャム’95』は不思議?

――時代を超える名曲の裏には、時代を超える構造が隠されていたとは……。となると最新作『サマージャム2020』にも、何か驚くべき構造が隠されていそうな?『サマージャム’95』の続編でもありますよね。
 
Bose 狙ったといっても、そこは微妙な感じですから。そういう構造の曲が、結果的に「タイムレスな曲」と言われるようになっただけ。あくまでも結果論(笑)。ただ、『サマージャム’95』も『今夜はブギー・バック』と一緒で、ここまでみんなに愛される曲になるとは思っていなかった。

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Bose 「世間のヤツらは『夏だから』とか言って、バカみたいに盛り上がってるんでしょ?」ってボヤきながら、クーラーの中でテレビを見ているような世界観。僕らも夏を歌った曲に好きなものがいっぱいあるから、「そういうサウンドにひねくれた3人組の日常をのせたらおもろいよね」って、すごく一生懸命作って。でも、本当に徒歩圏内の日常。かなり狭い範囲のことを歌った曲なのに「分かる!」っていう声が全国から届くから、めちゃくちゃ不思議な感覚でしたよ。

――しかしなぜ今、続編となる『サマージャム2020』を?
 
Bose 僕らって意外に真面目だから、サマーソングって、これ一曲だけ。他のアーティストみたいに、夏の曲をいくつも作れない(笑)。ライブでやるにしても「サマーソングなのに冬にはやれないよね」って、6月から、せいぜい9月までの限定ソングみたいな感じで。

『サマージャム2020』でメモリアルに遊ぼう。

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最新曲『ミクロボーイとマクロガール』(スチャダラパーとEGO-WRAPPIN’)と『サマージャム2020』(スチャダラパー)

 
Bose でも、みんながあまりにも「好き」と言ってくれるから、続編もおもろいかもって。構造としては、例えば『スターウォーズ』の続編にしても、「ハリソン・フォード出た!」みたいな感じってあるじゃないですか。その感じを音楽で出せたらいいなと思って。『サマージャム’95』の歌詞をサンプリングしてのせたり、そこにサンプリングされた過去の曲も、あらためてサンプリングしてのせたり、世代がにじむような遊びは入れていますね。

――なるほど。歌詞も95年の当時を振り返るような内容ですが、サウンドにも、振り返りの構造が隠れていると。

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Bose ちょっとメモリアルな遊びをね。だから僕ら世代の人が聞いたら、楽しんでもらえると思います。「あれから20年も経ったんだなぁ」みたいな。だって僕も20年経って、ずいぶんと変わりましたから。当時は「海とか山とか絶対に無理。なんせ虫が!」とか言っていたのが、海どころか、家族と一緒にキャンプとか始めちゃってますからね(笑)。


後編では・・・

失敗ヒーロー!』第5弾後編は、Boseさんの「マネジメント」について伺います。同じスチャダラパーのクルーであるANIさんやSHINCOさんとの関わり方やコミュニケーションなど、「スチャダラパーのプロデューサー」としてのBoseさんの仕事観をヒモ解きます!

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