なぜ「おひるねアート」は急成長したのか? 仕掛け人・青木水理が語る「自分は何もできない!」を認めるマネジメント術

「働く女性」の未来像

2016/11/24
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「おひるねアート」は、主婦の心を救うチカラを持っていた

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青木水理(あおき・みのり)
一般社団法人・日本おひるねアート協会代表理事。元トリマー。2007年生まれの長女、2012年生まれの長男を持つ二児の母。長女の出産をきっかけに保育士&ベビーサイン講師の資格を取得。長男出産後、趣味で撮り始めたおひるねアートが各メディアに取り上げられ、テレビCMや広告などに起用。現在は同協会代表理事のほか、おひるねアートスタジオSTORYの総合プロデューサーとして多忙な日々を送る。

――協会をマネジメントするうえで、どんなことに気をつけていられますか?

青木 やはりニーズがどこにあるか、キャッシュポイントをどこにするか、しっかり見極めることではないでしょうか。講師を育てるとしても私自身が育てるのか、講師が講師を育てる形にするかでも形態は異なります。私たちの協会は、今こそおひるねアートの撮影会というスタイルが主ですが、最初は違ったアプローチを行っていました。

――といいますと?

青木 教育面からのアプローチですね。立ち上げ当初は、ママたちにおひるねアートを教えることにニーズがあるのではないかと思って、おひるねアートを教える認定講師を育成し、教室を始めたんです。ところが、これが全然人気が出なかったんです。ママの需要は、そこにはなかったんですね。

――手ぶらで、赤ちゃんだけ連れて訪れれば「おひるねアート」が撮影できる、というのがニーズだったと。

青木 ママは教育を受ける機会ではなく、娯楽を求めてるんだと気づきました。それに気づき、半年で教室をメインとするスタイルから撮影会をメインとするスタイルに切り替えました。当時すでに講師が20人ほどいたのですが、早い時期での方向転換には反発の声も当然あがりました。

経営者と講師の目線は違いますし、判断軸も異なります。私が「こうしたい」と思っても、講師に「それは出来ません」と言われることも……。最初のうちは、自分の力不足でうまくいかず、悔しくて涙することも多かったです(苦笑)。

――様々な声が耳に入ってくる環境だったんですね。

青木 それでも、1年半ぐらい運営していくうちに方針が見えてきました。その間、迷いながらも講師がついてきてくれたのは、お客さんからのニーズがずっと高かったというのがあると思います。10月の大井町での撮影会は通算3回目なのですが、過去にも参加したママさんたちからいろいろな言葉をもらいました。

「外に出るきっかけをもらいました」「産後うつですごく辛かったけど、おひるねアートがあるから乗り切れた」「おひるねアートが、希望の光でした」とか。提供する私たち自身が、「そこまで強く思ってくれるとは」と驚くほどの反響をもらえました。単に、ママたちが楽しくやってくれればいいと思っていた「おひるねアート」が、育児に悩むママを救うほどのパワーを持っていたのです。

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――ユーザーから、自分たちのサービスの真の価値を教わる……得難い経験ですね。

青木 私の中の軸は、その頃に固まりました。もちろん、理念ありきで協会を作っているので、立ち上げ当初から今も変わらず理念は「思い出写真作りのお手伝い」です。赤ちゃんの成長はとても早く、1年であっという間に大きくなってしまいます。それを限りなく鮮明に残すことができるのが「写真」だと思っています。私たちの理念は、大事な思い出を形として残すことです。

株式会社ではなく一般社団法人を選んだ理由

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――青木さんのお話を伺っていると、PDCAサイクルをきっちり回しながら運営されている様子が伺えます。特にCheckとActionまでの速度が早い印象です。こうした計画・実行・評価・改善のPDCAサイクルは、昔から回されていたのですか?

青木 そうですね。小さな頃から、分析しないと落ち着かない子でした。例えばすごく悲しいことがあったとして、「この感情はどこから来るんだろう?」って考えるほうで。基本、ネクラなんですけど(笑)。協会を立ち上げてから身についたわけではなく、生まれつきの性格なのかなと思います。

――マネジメントについては、この概念の生みの親であるP.F.ドラッカーを学ばれたりしたのでしょうか?

青木 協会立ち上げ当初はマーケティングもマネジメントもまったく知識の無い状態でしたから、1年くらいめちゃくちゃ勉強していました。コピーライティングやDRM(ダイレクトレスポンスマーケティング)を学んだり、異業種交流会に顔を出したり、ドラッカーの『マネジメント』、スティーブン・R・コヴィー『7つの習慣』などの古典を読んだり。

とにかく新しいことを覚えるのが楽しくて、かなりアクティブに動いていたと思います(笑)。あの時はだいぶ頭でっかちになっていたと思うし、知識だけはある状態でした。今は一切何もしていなくて、ただひたすら協会の動きとお客様、そして講師たちを見ています。会う人もすごく厳選していますし、一人の時間を意識的に作って、自分と向き合うことが多いですね。

――やはり、アウトプットにつながらない知識は定着しづらかったでしょうか。

青木 机上の空論ではないですが、協会を立ち上げてちょうど1年たった頃から、ニーズが爆発して講師がすごく増えたんです。勉強している暇も無いくらい一気に忙しくなってしまって。

仕事はひっきりなしに来るし、お客様や講師の悩みを解決したり、色々なトラブルもある。もうひたすら実践で、体で覚えるしか無かったです。それにこういう協会を立ち上げるのって、私利私欲では無理なんです。やっぱり、株式会社だと「商売の匂いがする」って言われるので。

――そういうフィードバックを受けての一般社団法人化なのですね。

青木 今もアドバイスは受けるんですよ、「株式会社にして人を雇えばいい」「講師育成もスタッフに任せれば」って。でも、それは先ほど述べさせていただいた理由からも、私の想いという部分からも違うなって。これも私の理念の一つなんですが、「子育てしながら働ける環境を作りたい」という気持ちがあります。
 
講師の皆さんは個人事業主であり、ママさんです。彼女たちをどうサポートするか、日々心を砕いています。でも「人を雇う」ということになってしまうと、この働き方を広げることに限界がある。もっと多くの人にこの働き方を提案して、全国に広げるためには一般社団法人という形のほうが都合よかったんです。

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