2017/05/19 公開

「日本には『助けて』と言えない環境があると思うんです」秋本可愛(Join for Kaigo代表)

「働く女性」の未来像

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「私は全然成長していないんじゃないか」

――起業をしてからも、さまざまな困難があったと思います。
 
秋本 たくさんありました(笑)。起業してお仕事をいただきながら、『HEISEI KAIGO LEADERS』という若手コミュニティの運営も始め、並行してがんばりました。『HEISEI KAIGO LEADERS』は100人以上集まるコミュニティになったものの、1年経ったときに「やりたいことができている」という感覚はありませんでした。介護の現場で見た問題や、要介護の家族を持つ方の課題を解決する部分に、全くフォーカスできていなかったんです。

そして1年経つと、Facebookなどで就職した周囲の子たちが「新人賞をとった!」といった姿が流れてきたりして。やっぱり焦りましたね、「私は全然成長していないんじゃないか」って。今のままではダメだと思って、2014年10月から半年間だけ、声をかけてくれた介護コンサル会社さんに就職しました。

――起業してから、いったん就職を選んだんですね。
 
秋本 はい。その時期はもう、泥のように働きました(笑)。一方で、その最中に『KAIGO MY PROJECT』を並行して始めました。これは、介護現場で働く個人に向けたプログラムで、それぞれの立場から感じる視点を言葉にし、気づきを共有していく場です。これを会社で働きながら並行して動かしてみると、参加者の変化がすごく興味深かったんです。例えば、もともと自信がなくて自己否定が強い方が、プログラムを通して自分の思いに向き合う中で徐々に自信を取り戻して、イキイキと働けるようになったり。そういう姿を見て「このプログラムにチカラを注ぎたい」と思ったんです。

――このプロジェクトでは、介護の現場で働く人を直接サポートしていらっしゃるんですね。
 
秋本 そうです。例えば介護の現場で利用者の思いに向き合わないといけない介護職が、実は自分のお父さんがガンを患っていて、そのことを周囲に隠して仕事をしている状態があったりします。しかし、そういう状況でケアに向き合うのは難しいと思います。働く人がどうあるかはすごく大事だと思っているので、まずは働く人の思いに、働く人同士が向き合える環境をつくっています。

最初に想いを確認することが何より重要です

―現在、社員は何人いるのですか?
 
秋本 社員は私だけで、あとはアルバイトとインターンが1人ずつ、外部にパートナー企業がいる状況です。『HEISEI KAIGO LEADERS』は30人運営メンバーがいるという状況ですが、それはボランティアでやってもらっています。

コミュニティ運営に関しては、私のサポートとしてではなく、メンバーそれぞれが「まず自分たちがどうしたいか」を大事にするスタンスです。『2025年問題』がよく言われますが、それまでに自分たちがそれぞれ置かれた環境下で活躍をして迎えなければいけないという前提で、今どうするか。そういうことを話し合いながら、一緒に作っています。

メンバーを募る際は2パターンあって、1つはHEISEI KAIGO LEADERSの参加者が想いに共感して運営側に入るパターン。もう一つは、プロボノに近いと思いますが、ビジネスの専門知識やスキルを持った人たちが「社会的な支援をしたい」と思ってきてくれるパターンです。特に、想いに共感していただけるかは大事ですね。ありがたいことに最近は私たちの活動も知られるようになってきて、「何か楽しそうだからやってみたい」という形でジョインを希望してくれる方もいるんです。

それはとてもありがたい一方、必ず本人の意志がそこにあるかを確認しています。その人にとってジョインするベストのタイミングは必ずしも今ではないケースもありますし、その人が本当にやりたいことでもなかったりします。なので、しっかり話を訊いたうえで、別の選択肢が本人のために良いと判断すればそちらを勧めることもありますね。

イベント一つとっても、華やかに見えてとても泥臭いプロセスを踏んでいますよね。企画をし、調べ物をたくさんし、スタッフの手配をし、集客の施策を練ったり……。そうした泥臭いことを一緒にやるにあたっては、想いがしっかり共有されていることが何より重要です。そうしないと、お互い余計な気を遣うことになります。最初の時点で、お互い本当は何をやりたいのかしっかり話し合うことはとても大事だと思います。

――過去、続けられないでドロップアウトした人もいるのですか?
 
秋本 たくさんいますよ! 実際、『HEISEI KAIGO LEADERS』の立ち上げメンバーは現在1人も残っていません。ただそれは、私のマネジメントの失敗の歴史でもあります。最初の1年は想いだけで一緒にやってくれたメンバーも、2年目の節目を迎えるにあたって私が悩んでいて方向性を示せないことで、離れてしまったり。私自身はすごく体育会系で、想いで突っ走るスタンスでやってきたんですが、それだけではうまくいかないときも多々あって。

想いだけではうまくいかないなと感じて、途中からメンバーの気持ちをしっかり聞く、どうやっていくか一緒に考えるというスタンスを意識的に取るようになってうまく回り始めました。もちろん常に課題はありますが、細かくコミュニケーションを取ることは、チームを作っていく上で非常に重要だと思っています。

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仕事と日常生活の境界線を無くしていきたい

――起業する上で女性ならではの難しさはありましたか?
 
秋本 実は、あまり感じたことはないです。「女性の起業は難しい」といった記事は読みますけど、私個人は「女性だから大変」とはあまり思ったことがないです。逆に、本当にたくさんの人に可愛がってもらえました。そういうところは、むしろ女性の起業家がまだ少ないからかも……と思ったことはあります。

――これからは女性が活躍する社会を作っていくことが重要になると思いますが、現状を見てどういう部分に課題を感じいらっしゃいますか?
 
秋本 まだまだ「これは女性の仕事でしょ」と決めつけてしまうような価値観は多いですよね。例えば結婚した後の子育てとか。ただ、女性自身が働きながら専業主婦と同じように子育てや家事、介護を行なうことは現実的ではありません。子育てをベビーシッターに任せたり、介護は介護職に頼ったり、うまく専門職を使うことが必要になってくると思います。

また、ライフイベントによって仕事に影響が及んでしまうことをできるだけ減らしていきたいですね。子育てや介護によってワークスタイルを変える必要があっても、企業によってはそこまで柔軟にできなかったりする現状があります。子育てにしても、母親1人ではなくみんなで協力して育てていこうとか、みんなで介護をしようとか、そうしたスタンスをとれる社会になってくればいいと思っています。

――最後に、今後のビジョンを教えて下さい。
 
秋本 東京以外でも、もっと多くの場所に広げていきたいですね。1人でできることも限界があります。例えば『HEISEI KAIGO LEADERS』は4年間やってきましたが、参加者は延べ1,000人程度です。2025年に介護職が253万人必要で、約38万人足りないという現状を考えるとこの数字にはインパクトがありません。私でなくともこのプログラムを担当できる人を育成しながら、大阪や名古屋などの場所でも同じ想いを持つ仲間を集めていきたいですね。

<了>

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