2015/11/26 公開

法律で給料を下げてはいけない?!フィリピンでの現地採用の実状と優秀人材を確保する秘訣

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「グローバル化の時代である」と言われて久しい今日この頃。世界をフィールドに事業を展開するという戦略はもはや企業が生き残る上での重要なライフラインとなりつつあります。とすれば、自然に浮上してくるのは、海外拠点における人材の問題でしょう。

現地のスタンダードは、渡航したからといって一朝一夕で身に付く訳ではありません。とりわけ、人材を採用するという局面で問題にぶつかる組織は多いと思われます。

そこで今回は、実際に海外で人事業務の経験のあるAさんに、どのようにして企業の必要とする人材を獲得するのかお話を伺いました。手さぐりで培った、採用にまつわるノウハウを余すところなく語って頂きます。

1000人の応募のうち、来るのは半分!?まずは全員と会う機会を作る

-Aさんはゲーム開発会社のフィリピン支店で海外人事をされた経験があると伺っています。どのような経緯だったのですか。

A:私は以前、オフショア開発を行う企業で役員として働いており、フィリピンの拠点を拡大しようという話が持ち上がり、現地の人事担当として働くことになったという訳です。当時は採用にも力を入れていて、30人にも満たなかったメンバーを2年後には170人にまで増やしました。

今では本社からインドネシア人や韓国人、インド人や中国人など様々な国籍のメンバーが出向していますが、初期はほとんどのメンバーがフィリピン国籍でした。日本での一般的なスタンダードも通じないので採用活動も大変でしたよ。

-日本でのスタンダードが通じないとはどういうことですか。

A:日本と違って、応募してきた人が面接に来ないんですよ。月に1000通くらいの応募があったとしても、実際に会って面談できるのは半分くらい。酷い時には、4人の面接予定者が一人も来ないということもありました。後から調べて分かったことですが、フィリピンでは応募する企業をろくに調べずにネットカフェなどで不特定多数の企業にアプライするようなことが普通に行われているのだそうです。応募者は一つの企業にたいして思い入れが少ないから、面接をふけることもめずらしく無いんですね。

オープンハウス

-それは効率が悪いですね。応募者が面接に来る精度を上げるために、何か打開策を打ちましたか。

A:まずは応募者全員に対してスクリーニングを行わずに、「会社説明会に来い」という連絡をするようにしました。また、週に2回、「オープンハウス」という企業セミナーを開いて、やって来た人に簡単なテストをし、合格点を取った人を面接に呼ぶというフローを作りましたね。これだけでも、面接に人が来る確率が一気に9割くらいに上がりました。雨が降ったら、もう少し確率は下がりますけどね。

フィリピンでは学部・学科指定があるから、受けたい企業が受けられない

-セミナーの時点で、応募者とのすり合わせをするということですよね。では、面接の時点では何か指標のようなものはあるのですか。例えば、日本の一般的な選考のように学歴は重視するのでしょう。

A:そもそもフィリピンは、応募の時点で学校を指定しています。あるいは、少なくとも応募者の条件として、学部や選考、学科を特定しているんですよ。だから、どんなに学歴が高くても「興味があるから応募する」というのは無理です。

そういった意味で、アカデミックな教育を施す日本の大学に対して、フィリピンの大学はより職業訓練の性格を帯びているのかなと。

-指向的には、即戦力を求めるアメリカと似ていますよね。

A:ただ、同時に大学にはIT系分野においては経験豊富な講師がいないという課題も恒常的に存在しています。だから、インターンシップで入社した企業にそのまま採用されるというパターンが多いですね。

優秀な社員がいない!なぜなら優秀な社員は海外に流出するから

社員無能

-優秀な経験者を採用するという手段は取らないのですか。例えば、大手企業にヘッドハンティングを仕掛けるという方法もあると思うのですが。

A:フィリピンでは、大手企業に勤める人が使えないというケースが多々あります。日本から現地の大手企業に出向している日本人駐在員の話では「仕事をしない人しか会社にいない」とこぼしていました。

要因としては、フィリピンの「出稼ぎの文化」が影響しているのではないかと思います。優秀な社員、とりわけ3、4年の実務経験を積んだ人材は海外に働きに出てしまう。そのため経験のある20代中盤から30代前半の元気で伸び盛りの人材が現地に不足するという状況になっています。

フィリピンでは、原則として転職をすると給料が上がっていくのが普通なのですが、ある程度の給料で採用した中途採用者が内部の社員よりも実力が無いという失敗もありました。

-能力に見合わずに、給料だけ上がらなければならないとなると、正社員を雇用するハードルも上がりますよね。

A:はい。例えば、法律で給料を下げてはいけないと決まっているので、給料設定が高すぎた社員に対しては給料を下げて雇用を続けるという選択肢がありません。解雇という形を取らざるを得ない。だから正社員の採用に踏み込みにくいんですよ。労働者を守るための法律が、逆に足かせとなっているというのが現状です。

フィリピンでは有望な若手を自前で育成するしかない

採用まとめ

-フィリピンでは概して優秀な経験者を採用しにくいということですね。

A:はい。経験者を採用することが難しいと分かったところで、会社としては方向転換をして、頭の良い新卒者を採用しようという指針を打ち立てました。まずは、新卒の応募者を大量に募り、そこから自前で育成するという行程を作りましたね。

-大量の未経験者をどのように育成するのですか。

A:具体的には、入社してから3か月ほど教育・研修を行い、テストを課して人材をふるいにかけました。コンピューターサイエンス基礎、各言語を徹底的に叩き込んで、各項目に試験を設け、一定水準に達した人を雇用にする。このフローを作ったところ、年間で100名以上採用することに成功しましたよ。

現地でデキる人材を確保するために、ポテンシャルの高い人間を採用し、自前で教育するという方法を取ったAさん。次回は、こうして集まった人材をどのようにマネジメントするのか、お話を伺います。

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マネたま編集部
「現場視点から考えると、マネジメントがもっとオモシロクなる」をコンセプトに、マネジメントに関する情報を発信していきます。